【市況】【植木靖男の相場展望】 ─ 円高より大切なことは
株式評論家 植木靖男
「円高より大切なことは」
●円高襲来で適温相場に綻び
東京株式市場は、2万4000円大台乗せが精一杯といったところだ。
突如、遠雷が響き、黒雲が湧き起こってきた。円高の襲来だ。
もちろん、円高はマイナス材料であるが、一方で米国株は依然、史上最高値を更新している。これはプラス材料だ。
こうなると、株価との向き合い方は難しくなってきたようだ。
円高については、いろいろな理由が市場で言われているが、しょせん、後講釈であり、要は事実を直視すれば、1ドル=109円台と輸出企業の想定レートを下回ったということだ。米トランプ大統領が“強いドルを望む”と言っても、米国の財政事情を考えれば、そう言わざるを得ないであろう。いずれにしても、この円高は、ドル安である。
ICEドルインデックスをみる限り、当分、ドルは安値圏でのもみ合いが予想される。
それよりもっと警戒すべきは、これまで低金利のもと景気が回復するという、市場にとって最も都合のよい、いわゆる適温相場と言われてきたそのシナリオに“崩れる”兆しがうかがえることだ。
いいとこ取り相場は長くは続かないのが世の常。
米国金利の上昇は本物であり、ようやく米国ではインフレ期待が高まってきたようだ。すなわち適温相場は通じなくなってきたとみてとれる。
これには反論もある。景気拡大のもと金利が上昇し、株価が高くなる。これすなわち業績相場がこれから始まるという見立てだ。
●個別材料株物色が支えとなるか?
とはいえ、これまで金融、業績混在相場が業績相場にシフトするには、それなりのけじめが必要であろう。
なぜなら、金融相場の色彩が強い相場であったればこそ、アマゾンのPER235倍が許されたのである。
やはりけじめが必要だ。では、どういう展開になるのであろうか。
次の事実を考えてみたい。東京証券取引所が発表する主体別売買動向をみると、1月第2、3週と、個人信用は2週連続で買い越しとなったが、一方で、海外投資家は逆に2週連続で売り越しである。
いまにして思えば、海外勢にうまく乗せられた格好だ。いうまでもないが、海外勢が買わない限り株価が騰がらないのはこれまで通りだ。
とはいえ、今後、好決算発表が続くことや、景気回復が本格化することを前提にすれば、今後、調整があるとしても、当面は一気に下げることなく、ジグザグ的展開が予想されよう。
したがって、この間は個別物色、すなわち材料株物色が案外、市場を支えることになりそうだ。なぜ、安川電機 <6506> が大きな期待をかけられながら好決算発表を機に株価が失速したのか、改めて考えてみたい。
今回は、千代田化工建設 <6366> 、ネクステージ <3186> 、ウィルグループ <6089> などに注目したい。
2018年1月26日 記
株探ニュース