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【特集】ダイナムジャパンHD Research Memo(4):投資基準に適う案件については今後も積極的にM&Aを拡大


■2015年の主要なディベロップメントと今後の課題

(1)夢コーポレーションのグループ化

ダイナムジャパンホールディングス<06889/HK>は2015年11月1日付で、愛知県豊橋市に本社を置く夢コーポレーションの全株式を株式交換により取得した。夢コーポレーションは、北海道から九州まで全国に「夢屋」ブランドのパチンコ店38店と「SLOT PARK GOD」ブランドの女子プロデュースのスロット専門店1店の計39店舗を有していた。夢コーポレーションもチェーンストア理論に基づいたパチンコホール経営を行ってきており、一般社団法人パチンコ・チェーンストア協会(PCSA)のメンバー企業であった。これが同社による買収の1つのきっかけとなった。

夢コーポレーションの収支状況は公表されていないが安定的な黒字が定着しているもようだ。ダイナムジャパンホールディングスは株式交換に際して新株を約38.8百万株発行した。2015年10月30日時点での株価と為替レートを用いると、新株の時価相当額は5,775百万円となる。獲得した店舗数で割ると、同社は1店舗当たり148百万円で獲得したことになる。同社の新規出店費用が標準モデルにおいても約500百万円であることを考えると、店舗投資としては非常に高効率であったと評価できるだろう。

期間収益への貢献具合も明らかになりつつある。同社の2016年3月期決算において、夢コーポレーションは5ヶ月間の収益が連結決算に反映された。その内容は、貸玉収入で29,297百万円、営業収入で5,703百万円だった。これを年率換算すると貸玉収入70,313百万円、営業収入13,687百万円ということになる。利益面への貢献度は公表されていないが、仮に営業利益率(営業収入に対する営業利益の割合)を10%とすれば、年間営業利益は1,369百万円ということになる。また、同社は夢コーポレーションについて、ダイナムグループの440店を超える店舗数のスケールメリットで年間約7億円のコスト削減効果を実現できるとしている。

夢コーポレーションの店舗は高貸玉店が10店舗、低貸玉店が29店舗という構成だ。これら39店舗は、2016年4月末に宮城県の角田店を閉鎖した以外は、従来のブランドを維持したまま運営が続けられている。高収益店舗と低収益店舗が混在しているが、全体としては同社の平均的な収益性に近づくポテンシャルを秘めているものとみられる。

弊社では、今回の買収について理想的な案件であったと評価している。理由は、1)チェーンストア経営の理念が共有できていること、2)夢コーポレーションの収益性も高いとみられること、3) 39店舗とまとまった数で、かつ、地域的に偏りのない店舗ネットワークであること、4)全額を株式交換で賄い上場企業としてのメリットを最大限に生かすことができたこと、などがその理由だ。上記の1)から3)の条件をすべて満たす案件は決して多くないと思われるが、事業環境が厳しさを増すなかで今後も出現する可能性は高いと思われる。同社は4)の資金調達力を活かして、同社内の投資基準に適う案件については、今後もM&Aによる拡大を積極的に検討していくものとみられる。

(2)大規模リニューアルの実施

前述のように、パチンコホール業界は2014年4月の消費税率引き上げをきっかけに負の連鎖に陥り客足が落ち込んだ。その負の連鎖からの脱却を狙い、同社は大規模な店舗のリニューアルに踏み切った。2015年3月期第4四半期に40店、2016年3月期第1・第2四半期全体で70店の計110店だ。

店舗の属性は、最初の40店舗すべてと後半70店舗のうちの63店舗が高貸玉店舗で、後半のうちの7店舗が低貸玉店舗という構成だ。背景には、ここしばらくの間、低貸玉店舗主体で新規出店をすると同時に、高貸玉店舗から低貸玉店舗への業態転換を推進した結果、現在残る高貸玉店舗の店舗年齢が高くなってしまったことがある。高貸玉店舗は客数さえ入れば収益額は低貸玉店舗より圧倒的に多くなるため、その効果も期待された。

リニューアル項目は、床、壁クロス、トイレ、外壁、外周、広告塔、駐車場(舗装・線引き)、椅子等、内外装の主要部分すべてが対象とされた。半数以上ではトイレを一新し、一部の店舗では床の張り換えまで行った。また、ほぼ全店で外壁・外周・広告塔をリニューアルしたほか、大多数の店舗で、椅子、幕板、妻板を更新した。このような大規模リニューアルによって、店舗のイメージを新築に近いところまで仕上げることに成功した。リニューアル費用は店舗によっても異なるが30百万円~50百万円程度と推定され、110店舗分の総額では、5,000百万円前後に達したものと弊社では推測している。

重要なことはリニューアルの効果だ。リニューアル直後は客数が明確に増加し、一定の効果を確認することができた。しかしながら、その効果の持続力は弊社が想定していたものより短期間であったもようだ。2016年3月期決算において、高貸玉店舗では貸玉収入、営業収入ともに減収となったことがそれを物語っている。

しかしながら、同社が強いバランスシートと企業体力を生かして大規模リニューアルを行ったことは、決してマイナスではないと、弊社では考えている。高貸玉店舗の集客力がリニューアル後も上がらないという背景には、単なる客離れ以外にも後述する射幸性規制問題などが、複雑に絡み合っているものと弊社ではみている。今後、そうした点が解消されてくれば改めて店舗リニューアルが近隣店に対する差別化要因として機能してくる可能性があると弊社では考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《YF》

 提供:フィスコ

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