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【特集】イグニス Research Memo(3):大幅な増収増益となり過去最高の四半期業績を更新


■決算動向

(1) 2016年9月期第1四半期の業績

イグニス<3689>の2016年9月期第1四半期の業績は、売上高が前年同期比443.8%増の1321百万円、営業利益が409百万円(前年同期は101百万円の損失)、経常利益が405百万円(前年同期は117百万円の損失)、四半期純利益が230百万円(前年同期は89百万円の損失)と大幅な増収増益(黒字転換)となり、過去最高の四半期業績を更新した。

売上高は、「無料ネイティブアプリ」が広告収入の減少や注力する更新型アプリ(中・大規模アプリ)の本格的な収益貢献が開始していないことから減収となったものの、前年同期ではほぼ売上計上がなかった「ネイティブソーシャルゲーム」が好調な「ぼくとドラゴン」により大きく伸長したことで大幅な増収となった。

損益面では、「ぼくとドラゴン」にかかる広告宣伝費及びプラットフォーム手数料の増加により販管費が大きく拡大したが、増収により吸収したことで大幅な増益となり、売上高の落ち込みや先行費用により営業損失に陥った前年同期から黒字転換となった。営業利益率も31.0%の高い水準となっている。

財務面では、総資産がU-NOTEの買収に伴うのれん代の計上(約63百万円)やネイティブソーシャルゲームの追加開発に伴うソフトウェアの増加により2,204百万円(前期末比12.1%増)となったが、利益剰余金の積み増しにより自己資本が1,466百万円(前期末比18.7%増)に増加したことから、自己資本比率は66.5%(前期末は62.8%)に上昇した。

ジャンル別の業績及び活動実績は以下のとおりである。

「無料ネイティブアプリ」の売上高は前年同期比40.7%減の142百万円となった。前期から取り組んでいる収益構造改革を進めるなかで、これまでの収益源であった小規模アプリの収益化の難易度が上昇していることで広告収入が減少したことや、注力する中・大規模アプリの本格的な収益貢献が開始されていないことから減収となった。なお、2015年12月末のMAU(海外を含む)も更新型アプリ(中・大規模アプリ)への開発リソースのシフトなどにより528万(2015年9月末は566万)に低下した。

中・大規模アプリについては、カジュアルゲーム「breaker」(中規模アプリ)が、アップデートや海外展開、姉妹作のリリースなどによりグローバル累計100万DLを達成するなど、アプリの収益貢献期間の長期化に成功している。また、匿名SNS「ひまチャット」は、2015年12月に累計10億メッセージを突破するとともに100万アカウントを達成した。更なるユーザー数の拡大とコミュニケーションの活性化を目指しており、2015年12月14日には様々な機能改善に利用できる「ひまポイント」の導入をリリースした。「ひまポイント」は、他のユーザーから「ども」を受け取ったり、動画広告を視聴したりすることによっても獲得できるほか、アプリ内課金でも入手することができる。ポイントを貯めていくことで、送信できる写真の枚数や利用できる顔文字スタンプのジャンルが増えるほか、チャット履歴を無制限に表示することも可能となっており、ユーザー数の拡大による広告収入に加えて課金収入の強化としての狙いもある。また、人気メンタリストDaigo氏監修の下、心理学・統計学の手法を応用した出会い・婚活マッチングサービス「with」については、既にWeb版を通じてユーザビリティの改善に注力しているが、近日中にアプリ版をリリース予定となっている。

一方、今期から「無料ネイティブアプリ」に含めることとなった「全巻無料型ハイブリッドアプリ」については、2015年12月21日付で大ヒットマンガ「ヒカルの碁」が全巻無料で読めるアプリをリリースした(業績貢献は第2四半期以降)。全23巻を1日1巻ずつ、全巻無料で読むことができるが、1日1巻以上読みたい場合にはアプリ内課金をすることで翌日まで待たずに続きを読むことができる仕組みとなっている。同社は、無料コミックアプリの一般化に伴う利用者の嗜好変化及び競争激化により、マンガ事業を縮小傾向としており、今後は年間数タイトル程度のリリースを行っていく方針である。

「ネイティブソーシャルゲーム」の売上高は1,179百万円(前年同期は2百万円)と大きく伸びた。前期に順調に立ち上がった「ぼくとドラゴン」が、ゲーム売上ランキング50位以内(Android版)を継続するなど引き続き好調に推移している。特に2015年12月には、スクウェア・エニックスの「三国志乱舞」とのコラボイベントやキャンペーンを実施したことで新規ユーザーの獲得に成功したようだ。

(2)四半期業績推移

2014年9月期第1四半期からの四半期業績推移を見ると、売上高は更新型アプリへの移行期となった2015年9月期第1四半期から第2四半期に大きく落ち込んだが、第3四半期に順調に立ち上がった「ぼくとドラゴン」(ネイティブソーシャルゲーム)が同社の業績の伸びをけん引する形で、再び成長軌道に乗り始めた。なお、「ぼくとドラゴン」は2015年9月期第4四半期に大きく伸びたが、2016年9月期第1四半期も緩やかながら伸びが続いている。

費用面については、2015年9月期第3四半期以降、「ぼくとドラゴン」にかかる広告宣伝費及びプラットフォーム手数料が大きく増加している。ただ、これらは売上拡大に連動した費用として捉えるのが妥当である。一方、開発スタッフを中心とした人件費は2014年9月期第4四半期に先行投資的に大きく拡大したものの、その後は落ち着いた動きをしており、コストコントロールはうまく機能しているものと評価できる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

《HN》

 提供:フィスコ

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