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【特集】エスプール Research Memo(6):単価の高い商材へのシフトで物流センターの坪当たり売上高を拡大していく


■今後の見通し

(2)事業セグメント別の見通し

○ビジネスソリューション事業
エスプール<2471>のビジネスソリューション事業の今期売上高は前期比20.0%増の3,599百万円、営業利益は同168.3%増の439百万円となる見通し。

サービス別で見ると、ロジスティクスアウトソーシングサービスは、売上高が前期比42%減の1,000百万円と大幅減収を見込んでいる。このうち、センター運営代行サービスは前期の917百万円から今期は307百万円を3分の1の水準まで縮小する。大規模物流センターの新設が相次ぎ、運営代行サービスのニーズも強いものの、スタッフ採用難のなか運営コストが増加傾向にあり、採算重視の観点からセンター運営代行サービスの案件の絞り込みを進めていることが要因となっている。また、商品発送代行サービスについても前期の795百万円から今期は693百万円と4期ぶりの減収に転じるとみている。ネット通販市場は年率2ケタ成長が続いており需要も旺盛だが、同社の物流拠点の稼働率は平和島で90~100%、つくばでも80%とフルに近い状況になってきており、今期は収益の一段の拡大を図るために、取扱商材の入れ替えを進める1年と位置付けているためだ。具体的には、容積当たり単価の高い化粧品や健康食品に切り替えていくことで、物流センターの坪当たり売上高を拡大していく戦略で、入れ替えが順調に進めば2017年11月期以降は再び増収に転じる見通しだ。なお、利益面では前期比で78百万円の減益となるものの、売上総利益率は改善する見通しとなっている。

障がい者雇用支援サービスの売上高は前期比53%増の872百万円と高成長が続く見通し。このうち、農園販売については前期比60区画増の300区画の販売を計画している。240区画は既設の市原、茂原、千葉わかばの各農園の空きスペースにビニルハウスを新設する計画で、残り60区画については千葉県北東部エリアで候補地を探していく予定となっている。顧客ニーズは依然旺盛なことから、予定どおり農園用地を確保できれば計画を上回る可能性が高い。また、農園の拡大に伴い、障がい者の就労移行支援サービスも増収が続く見通し。一方、利益に関しては農園の拡大に伴う減価償却費の増加や将来の成長に向けた組織体制の強化などの費用増により、前期比で35百万円の増益となり、増益率で見ると12%増とやや鈍化する。設備投資額は前期並みの3億円程度となる見込みだ。

なお、同社では短期的には農園の開設を千葉県内に集中していく予定だが、大手企業や行政からの引き合いもあり、中期的には千葉県以外への展開も進めていく方針となっている。このため、事業部体制を今期より営業、学校、農園の3事業部体制から、新たに人材紹介、土地開発の2事業部を加え5事業部体制とした。

フィールドマーケティングサービスの売上高は、前期比229%増の1,021百万円となる見通し。今期はスマートメーター設置業務の売上げだけを計画に織り込んでいる。また、利益は32百万円の黒字を見込んでおり、同業務だけで3億円超の増益要因となる。半期ベースで見ると上期は売上高が470百万円に対して利益が2百万円の赤字、下期が売上高551百万円に対して利益が33百万円で計画している。前述したように、自社作業員比率の引き上げにより業務効率が向上しつつあり、下期からは収益化できる見通しだ。受注分の残り約3億円については2017年11月期以降の計上予定となる。なお、次回の東京電力によるスマートメーター設置業務の入札時期は2016年秋頃となりそうで、同社では収益化の見通しが立てば入札に参加する意向だ。

東京電力は管内の2,700万世帯のメーターを2020年までに毎年、使用期限が切れる世帯を対象に500万台ペースで交換していく予定としているが、2016年4月からの電力小売り自由化でスマートメーターの交換時期が早まる可能性が出ている。東京電力以外から電力サービスを契約する際には、スマートメーターを設置する必要が出てくるためだ。こうした動きが同社にとってプラスとなるかどうかは、まだ流動的となっている。

その他業務のうち、セールスサポート業務は短期派遣の原則禁止以降、大規模案件を運営できる人材サービス会社が減少するなかで、フルキャストとの協業による効果もあって大型受注を獲得しており、今期も前期比19%増の424百万円と好調を持続する。プロフェッショナル人材バンクサービス(旧顧問派遣サービス)も、有資格者等の人材不足が続く市場環境下において今期は2ケタ増収が見込まれる。また、今期は新サービスとして開始したアルバイト応募受付代行サービスが注目される。小売・飲食・サービス業などアルバイトを多く採用する企業向けのサービスで、求人広告を見た面接希望者からの応募受付から面接設定までを同社が代行する。既に大手外食チェーン企業を中心に10社から受注しており、今期の売上高としては140百万円が見込まれる。

同サービスの特徴は、業界初の面接設定課金による成果報酬型サービスとしたことにある。一般的なコールセンターでは、面接応募の受電件数に応じて課金するサービスが主流だったが、同社は面接設定まで終えた段階で課金するサービスとした。利用企業にとっては、求人の広告出稿から応募受付、面接、採用までの一連のプロセスを数値化し、可視化できるほか、採用コストを従来の半分程度に抑えることが可能となる。また、実際の面接担当者の業務負担も大幅に軽減されるといったメリットがある。

同社は自社の派遣スタッフの採用に関して北見募集受付センター(北海道)で行っており、そこで蓄積したノウハウとリソースを同サービスで活用していくことになる。このため総利益率も40~50%と高い水準が見込め、今後売上規模が拡大していけば新たな収益柱に育つ事業として注目される。同社では今期中に30社の受注獲得を目指していく方針だ。

○人材ソリューション事業
人材ソリューション事業の売上高は前期比10.2%増の4,740百万円、営業利益は同2.8%増の370百万円を見込んでいる。コールセンター業務についてはニーズの高い北海道に第2支店を出店したほか、取引継続率の高いグループ型派遣に注力していくこと売上拡大を図っていく。また、今期は携帯販売支援業務の経験を活かして、家電販売などの店頭販売支援業務に注力していく方針だ。既に大手クライアント数社からの請負型での受注も獲得しており、今後の収益貢献が見込まれる。その他、利益率の高い人材紹介サービスも引き続き強化していく。営業利益の増益率が鈍化するが、これは派遣スタッフの社会保険料で約80百万円の費用増を見込んでいることが要因となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《HN》

 提供:フィスコ

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