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【特集】中電工 Research Memo(4):採算性のよい太陽光発電設備工事とリニューアル工事に重点を置く


■会社概要

○業績推移
2008年9月の世界金融危機が引き起こした急激な景気の後退に短期的に対応できた企業は少なく、中電工<1941>も減収に経費削減が追い付かず、2010年3月期に個別ベースで214百万円の営業損失に陥った。経営環境の悪化に対応するため、組織改正、作業者の子会社への転籍、間接部門から生産部門への要員シフトなどを進めた。2012年3月期もわずかながら営業損失を計上したものの、その後、受注高と売上高が増加に転じ、これら一連の業務改革も相まって、一変して営業利益が増加に転じた。2014年3月期からの経常利益の急激な増加は、同社が保有する外国債券の早期償還に伴う償還益を営業外収益に計上したことによる。これは世界金融危機に伴い信用力が低下した債券を減損処理し、それがデフォルトせずに戻ってきたもので、同社の特徴といえる。

業績の先行指標である受注高は2010年3月期に95,710百万円で底打ちし、2015年3月期には139,727百万円に盛り返した。売上高のボトムは、2012年3月期になり、その金額100,232百万円は2008年3月期比17.2%減であった。2015年3月期の水準は、ボトムの2012年3月期比で売上高が33.6%増となった。次期繰越高は2011年3月期に37,625百万まで下がり、2008年3月期比では33.1%減であった。2015年3月期は59,198百万円に積み上がった。

工事別売上高構成が大きいのは屋内電気工事、空調・管工事と配電線工事になるが、配電線工事は受注高と売上高がほぼ同額のため次期繰越高はほとんどない。期首に前期より繰り越された工事高の売上高に対する比率は、2015年3月期の場合、屋内電気工事が50.8%、空調・管工事が54.0%、情報通信工事が44.4%、配電線工事が1.3%、発送変電工事が36.5%であった。次期繰越高の構成比で見ると、屋内電気工事と空調・管工事がそれぞれ72.1%、21.4%を占めた。

期首の手持工事高が低水準の場合、安値受注に走りがちだが、同社は原価低減を一層徹底させたことにより売上総利益率の低下を防いだ。また、後述する、採算性のよい太陽光発電設備工事とリニューアル工事に重点を置き、受注に成功している。現在、建設業は人手不足が課題になっており、ゼネコンも低採算の案件は受注しないようにしている。同社も繰越高が積み上がっており、選別受注を行っている。

工事別利益率の順位は、大きな差はないものの、安定的な需要と工事内容がほぼ決まっており体制も出来上がっている配電線工事が1番目に高く、次いで作業効率のよい太陽光発電設備工事や提案営業を活発化させているリニューアル工事を含む屋内電気工事、3番目に空調・管工事が続く。情報通信工事と発送変電工事は、案件によって収益性のばらつきがある。

○従業員
同社の従業員数は、2008年3月末において個別が4,006人、連結で4,426人であった。2015年3月期末には、個別が3,447人、連結が4,063人となり、7年間でそれぞれ14.0%、8.2%減少したことになる。個別の減少幅が大きいのは、一部子会社への転籍などがあったためである。

従業員1人当たりの売上高の推移は、2008年3月期の2,987万円から2012年3月期には2,654万円に落ち込み、2015年3月期に3,868万円へと増加した。著しい生産性の向上は、太陽光発電設備工事の増加などに負うところがある。

従業員は、2015年4月1日現在で3,663人(個別)いるが、年齢別構成は、19~29歳が29%、30~39歳が17%、40~49歳が26%、50~59歳が13%、60歳以上が15%になる。2015年4月の新入社員は150人おり、2016年4月も147人を予定している。かつて1年間で300人を超える採用があった団塊の世代が退職時期を迎えており、技術の伝承が喫緊の課題になる。

総合設備エンジニアリング会社が従事する工事は、現場に資格者を必要とする。2015年4月現在の同社の電気主任技術者(第1種、第2種、第3種)は271人、電気工事施工管理技士(1級、2級)が917人、電気工事士(第一種、第二種)が2,509人いる。それ以外にも、通信、計装、消防、空調管、環境衛生、土木・鋼構築物、建築、その他を含めると、有資格者数は延べ6,660人に上る。現場を管理するには、国家資格である各種施工管理技士の資格を必要とする。同社は、資格取得の奨励制度をとっており、1次試験ではあるものの、今年の電気工事及び管工事関係の合格者数は前年比倍増した。3年後には、相当な戦力アップになると期待している。

また、技術水準の向上を目的に、国家資格最高レベルの技術士の取得を奨励しており、資格取得者も年々増加している。

○太陽光発電設備工事
日本では、2012年7月に再生可能エネルギーの固定価格買取制度が導入された。国の定めた固定価格で電気事業者が一定期間調達を義務付けられたため、再生可能エネルギーによる発電事業者は投資に対するリターンの確定がしやすくなった。特に、非住宅の太陽光発電は、買取期間が20年、買取価格が1キロワット時当たり40円と他の再生可能エネルギーよりも有利であったことから、メガソーラーの市場が立ち上がった。10kW以上の太陽光発電の買取価格は、2013年度に36円、2014年度に32円、2015年度はさらに27円に低下したことから、今後、太陽光発電設備工事の需要が減少することが予想される。

同社は、メガソーラーの新市場における太陽光発電設備工事の受注獲得に積極的に取り組んだため、受注高は2013年3月期に92億円、2014年3月期に183億円、2015年3月期に215億円と順調に拡大した。同3期間の売上高も、42億円、145億円、219億円と急増した。2015年3月期の太陽光発電設備工事の規模は、屋内電気工事の29.2%、総売上高の16.4%に相当した。メガソーラーのパネル設置・接続工事は、ビル・工場などの屋内電気工事に比べると約3~4倍の作業効率を実現できる。固定買取価格の下落により、今後は同工事の需要減少が見込まれており、2016年3月期の売上高は前期比100億円減の119億円が予想され、全体の減収の要因となる。また、2018年3月期を最終年度とする中期経営計画の営業利益目標値を抑える一因となっている。

○リニューアル工事
少子高齢化が進む日本では、新規投資の需要が少ないため、同社は中国5県に専任担当者をおいてリニューアル工事の獲得に注力している。LED照明への交換など、主に省エネ及び環境関連の積極的な提案営業を展開している。自社主導による案件獲得のため、同社が元請となる場合もあり、採算面でも良い。2016年3月期の受注高と売上高は、いずれも280億円の予想であり、予想総受注高・売上高の約2割を占めると想定している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

《HN》

 提供:フィスコ

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