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2016年01月13日16時18分

【特集】ダイナムジャパンHD Research Memo(3):低貸玉営業はローコストオペレーションのノウハウを活かせる得意分野


■ダイナムグループの施策

(1)総論

上述のように、パチンコホール業界は、長期右肩下がりトレンドと、消費増税などに端を発した短期的な一段の落ち込みという2つの悩みに直面している。これに対してダイナムジャパンホールディングス<06889/HK>は、チェーンストア理論に基づくローコストオペレーション、業界トップクラスの企業規模、強いバランスシート、上場企業であること、などの同社の強みを総動員し、業界の競合他社に対して先手を打つ様々な施策を実行している。業界が縮小トレンドにあってもそのなかで店舗網を拡大し、成長を追求し続けるというのが、同社の一貫した経営姿勢だ。

長期市場縮小トレンドに対する同社の中心施策は“低貸玉戦略”である。低貸玉機は高貸玉機に比べてホール側の利益は一般的に劣後する。しかし、顧客への還元を高めて顧客との共存を図ることが中長期的には同社の繁栄につながるという思想のもと、今後も注力していく方針だ。

一方、2014年からここまで続く一段の客足の落ち込みに対して、同社は大規模なリニューアルで対応した。2015年3月期第4四半期において40店舗のリニューアルを行い、2016年3月期第1四半期及び第2四半期にはさらに70店舗のリニューアルを行った。リニューアルの効果は来店客数の増加や売上高の増加という形で明確に出ている。一方でリニューアル効果の持続期間には注意が必要だ。かつてと比較してリニューアルで増えた客数がリニューアル前の水準にまで戻ってしまう期間が短期化している。

以上のような同社の動きから見えてくることは、同社は現在のパチンコホール市場の厳しさに悲観をしているだけではないということだ。むしろ事業拡大のチャンスと捉えている。前述のような施策は、短期的には自社の業績にマイナス影響をもたらすことになるがそのリスクを取ってでも、中長期的に同社の相対的な競争力を高め、成長軌道への回帰の可能性をより高めてくれる施策には積極的に投資を行うということだ。今第3四半期に同社はパチンコチェーンを傘下に収めたが、それは今後の同社が進む方向性を示唆しているように弊社では感じている。

現在のパチンコホール業界は、“成長”よりもむしろ“生き残り”を強く意識せざるを得ない状況にあると弊社では考えている。しかし、パチンコホール市場はピークから縮んだとはいえ、未だに20兆円を大きく超える巨大市場だ。市場の縮小トレンドが今後も続くとしても、同社が成長軌道を歩むのに十分な大きさのパイと言える。前期から今期にかけて同社が行っている各種施策は、成長軌道への回帰のための重要なステップであるというのが弊社の理解だ。

(2)低貸玉戦略

同社の成長戦略上重要なポイントは、パチンコ離れが進むなかでいかに集客するかということだ。その観点で同社が力を入れているのが低貸玉機/低貸玉店舗の積極拡大だ。

パチンコは玉を借りて遊ぶという形態となっており、その際の玉を借りる(店側からは玉を貸す)料金が貸玉料で、従来は1玉4円だった。すなわち、客は1,000円で250玉を借りることができる。同社が進める低貸玉営業戦略というのは、この玉貸料を1円あるいは2円に引き下げるというものだ。1円の場合、客は1,000円で1,000玉を借りることができ、それだけ長時間遊ぶことができるため、これが集客につながるという構図だ。これパチンコを時間消費型レジャーへと位置付けを変えようという同社の長期戦略ともマッチするものと言える。

低貸玉店舗が高貸玉店舗に比較して集客力が高いことは、数字にも明確に表れている。2016年3月期第2四半期累計期間においては、低貸玉店舗の貸玉収入、営業収入ともに、前年同期の実績を上回った。

ダイナムグループは2015年9月末現在400店舗を展開しているが、主力機種のタイプで高貸玉店舗と低貸玉店舗に分けると、高貸玉店舗が174店(構成比43.5%)、低貸玉店舗226店(同56.5%)という構成だ。詳細は後述するが、11月1日付で子会社化した夢コーポレーション(株)の店舗も低貸玉店舗が中心となっているため、11月27日現在では、高貸玉店舗の割合が41.9%、低貸玉店舗が58.1%と、一段と低貸玉店舗の割合が高まった。なお、低貸玉機は高貸玉店舗も含むすべての店舗に設置されている。

低貸玉機導入は同社だけではなく業界全体に広がっているが、同社は低貸玉機の導入比率が高い。1台でも低貸玉機が入っている店舗の割合は後述のように100.0%に達している。同社の全設置機械台数に占める低貸玉機の比率は2015年6月末で68.6%に達しているのに対し、業界全体では43.9%にとどまっている。パチスロ機でも同様の傾向だ。

同社が積極的に進める低貸玉機戦略が、業界全体では遅れているのには理由がある。パチンコホール側の店舗当たり収入が確実に減少するためだ。1円貸玉と4円貸玉では同じ球数を貸し出しても収入(貸玉収入)が単純に4分の1になる。すなわち低貸玉戦略というのはスーパーで言えば値下げ競争そのものだ。店舗運営のコスト構造が生き残りを左右する。チェーンストア理論に基づくローコストオペレーションのノウハウを積み上げた同社の最も得意な領域であり、低貸玉営業の普及は、競争相手を同社の土俵に引っ張り上げることであり、同社の競争優位性が発揮される状況だと弊社では考えている。

(3)大規模リニューアルの実施

2014年の消費増税を1つのきっかけに、パチンコ業界が負の連鎖に陥り客足が一段と低下した状況に対して、同社は店舗の大規模リニューアルで立ち向かった。2015年3月期第4四半期は、高貸玉店舗40店について短期集中的にリニューアルを行った。この動きは2016年3月期入っても続き、今第2四半期累計期間においてはさらに70店舗(高貸玉店舗63店舗、低貸玉店舗7店舗)のリニューアルを断行した。

ニューアル項目は、床、壁クロス、トイレ、外壁、外周、広告塔、駐車場(舗装・線引き)、椅子等、内外装の主要部分すべてが対象とされた。店舗の直近のメンテ状況に応じてリニューアルの内容は差があるが、全店がクロスを貼り換えたほか、半数以上ではトイレを一新し、一部の店舗では床の張り換えまで行った。また、ほぼ全店で外壁・外周・広告塔をリニューアルしたほか、大多数の店舗で、椅子、幕板、妻板を更新した。このような大規模リニューアルによって、店舗のイメージを新築に近いところまで仕上げることに成功した。リニューアル費用は店舗によっても異なるが30百万円~50百万円程度と推定される。しかしこれが合計110店舗となると総額では5,000百万円前後に達することになり、どの企業にもできるというわけではない。

リニューアルの効果は特に当初の40店舗においては明確に現れた。パチンコ稼働数(機械1台の1日当たり打出し玉数)は、2015年第3四半期は21,000個前後に低迷していたが、第4四半期には23,000個を超えて期中の最高水準にまで回復した。2016年3月期第2四半期累計期間に行ったリニューアルは、直後に一定の効果が見られたものの、効果が長続きしないケースも多々見受けられたようだ。

弊社では今回の大規模リニューアルは、今後の回復局面で生きてくるとみている。理由は110店のうちの実に103店が高貸玉店舗であるという点にある。同社は高貸玉店舗に店舗年齢が高いものが多かったためとしているが、弊社ではそれに加えて、高貸玉店舗へのテコ入れに踏み切ったことの1つの象徴であるとみている。高貸玉店舗は客数が戻れば利益は大きい。同社が低貸玉機で成長を図るという戦略は変えないとしても、現有の高貸玉店舗というアセットにおいて最大限の収益化を図ることは、投資の在り方としては正当化されるべきものと言えよう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《HN》

 提供:フィスコ

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