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2015年12月15日16時45分

【特集】サン電子 Research Memo(9):M&Aを含めて先進的な技術への積極投資を行う方針


■成長戦略とその進捗

サン電子<6736>の中期的な成長戦略は、情報通信分野のグローバル展開によって、成長を加速することである。特にモバイルデータソリューション事業のリーディングカンパニーとして世界市場の開拓を進めるとともに、新たな成長分野であるM2M市場、AR市場、クラウドビジネス市場の強化を図るため、M&Aを含めて先進的な技術への積極投資を行っていく方針としている。

注力分野に対する成長への取り組みは以下のとおりである。

(1)モバイルデータソリューション事業

世界的な需要拡大への対応を図るため、海外拠点の拡充等による販売力の強化に取り組んでいる。現在MLCでは200キャリア以上、フォレンジックでは100ヶ国以上において採用されているが、更なる販路拡大により市場を開拓する方針である。

また、MLC向けでは、新たなサービス展開として、2015年1月にCellomat社との資本提携を行った。Cellomat社は、携帯電話の販売及び一連の修理手続きを「24時間365日」全自動でサポートするPOSシステムを展開しており、同社が注力している故障診断機能との親和性が高く、携帯機器販売店向け支援サービスの拡充を図るところに狙いがある。銀行のATMのイメージに近いセルフサービスの携帯電話自動取扱機(自動店舗)の実現に向けて開発を進めている。

フォレンジック向けについても、一般警察官でも簡単で迅速な捜査を可能とした製品を開発したほか、ソーシャルネットワークのクラウドデータ抽出にも対応するソフトウェアの開発など、アナライズ機能強化や製品ラインアップの拡充を図っている。今後、インターポール(国際刑事警察機構・シンガポール総局)とのパートナー契約を予定しており、世界各国の捜査関係者に対するトレーニングプログラムにおいて、携帯端末が使用されるサイバー犯罪捜査に協力することになっているようだ。フォレンジック市場におけるプレゼンスや優位性の向上に大きく寄与するものと期待できる。

ただ、今期に入ってからは、新製品及び新サービスの市場投入や新拠点の開設などで成長を目指したものの、それらの進捗の遅れ等から上期実績が計画を下回ったことに加えて、通期予想を減額修正するなど、一旦後退する格好となっている。MLCについては、主要市場である米国では計画どおりに推移しているものの、新製品であるDiagnosticsの売上プロセス(効果の検証などを含めた導入決定までのリードタイム)が従来よりも長くなったことに加え、中国での現地法人設立の遅れによる大型取引の期ずれやアフリカ市場が予測よりも未成熟な市場であったこと、欧州での営業体制の整備遅延による需要の取りこぼしなどが想定外であった。また、フォレンジックについても、現場における捜査手続きの確立を進める必要性などから、新製品(パトカー向けUFED Rapid等)の販売が遅れたことや、前期のEOL戦略による反動減(需要の先食い)の影響などが成長にブレーキをかけたようだ。ただ、それらの要因のほとんどが短期的なものであり、中長期成長への影響は限定的とみられる。

(2)その他事業(M2M事業、新規事業)

IoTへの関心が高まるなかで、M2M事業も軌道に乗り始めてきた。インフラ施設管理やセキュリティ向け等の導入実績が増えてきたことで着実な伸びを実現している。2015年1月には、Bacsoft社との連携によりクラウド型M2Mプラットフォームのサービスも開始した。PCやタブレット、スマートフォンなど様々な端末により監視が可能であることに加えて、各種端末から制御する機能があるところが他社にはない強みとなっており、展示会などで引き合いが増加しているようだ。電力、産業用装置・設備、農業などの分野でグローバルに展開する方針である。

なお、前述のとおり、2015年9月にはBacsoft社を連結子会社(議決権比率85.0%)としたが、M2Mプラットフォームに対する需要を丸ごと同社成長に取り込むところに狙いがあるとみられる。追加分は議決権比率65.1%。全体の取得原価は約14億円であり、のれんは約11億円(5年償却を予定)が計上される予定である。

また、新規事業として、O2Oアプリ・ソリューションの提供開始や、Infinity AR社への投資、φcube(ファイキューブ)の開発にも取り組んでいる。特に、AR市場は、急速な用途拡大により今後の成長が期待されている分野である。2015年4月に資本提携したInfinity AR社のAR技術は、優れた空間認識や電力消費を極力抑えるところに優位性がある。同社の有するコンテンツ開発のノウハウや長年培ったハードウェア技術、各事業におけるB2B営業網との融合を図るとともに、Infinity AR社のAR開発プラットフォームを活用した斬新なARコンテンツやARソリューションの実現を目指す。具体的な応用分野として、製造ラインの製造工程教育や機械のメンテナンスARガイドブック、AR医療支援、新たなエンターテインメント分野などを視野に入れているようだ。また、2015年10月には、メガネ型デバイス向けのディスプレイに優れた技術を持つLumus Ltd.(以下、Lumus社)との業務提携を行った。AR事業において、ハードウェアからアプリケーションまでをそろえたトータルソリューションの実現に向けて着々と体制構築を進めている。

弊社では、一旦後退する格好となったモバイルデータソリューション事業の回復、さらには成長加速に向けた道筋のほか、新たな成長分野における収益源の育成や収益モデルの転換(ストックビジネスへのシフト)にも注目している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

《HN》

 提供:フィスコ

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