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【経済】石油輸出国機構(OPEC)の減産見送りは自爆テロ


先週末、石油輸出国機構(OPEC)は減産について決定できず、目標を上回る現状の原油生産の継続を容認した。原油は下落傾向が続いており減産を求める声も多かったが、財政難で減産により収入が減る懸念がある国の合意が得られない等、各国の主張が対立した。
 しかし、現時点では日量3000万バレルという目標を上回る原油が生産されおり、減産しなければ供給過剰状態が続きさらに原油価格が下がるという悪循環を断ち切ることはできない。
 サウジアラビアは低価格戦略を維持して、コストの高い米国のシェールオイル生産に打撃を与える目論見があるとみられている。
 しかし、米国は米国でエネルギーを外国に依存しない大方針のもと戦略的にシェールの開発を進めている。テクノロジーでコスト削減も進んでいる他、政府の補助などもあり、そうそうシェール開発が終わるとは思えない。そもそも、シェール革命や採掘技術の進歩によって、原油は世界中でほぼ無尽蔵に採掘されうるという事実は重い。
 サウジアラビアは「肉を切らせて骨を切る」と言わんばかりに、自国の収入が減少し財政が大きく悪化してまで低価格戦略を続けているが、これは「自分を痛めつけて局所を攻撃しても全体の大きな流れを変えることはできない」という意味において自爆テロと同じだ。
 ともあれ、OPECが結束力を失って原油価格への影響力がなくなりつつあるが、仮に結束しても原油安をとどめるのは難しい状況にあることがはっきりしてきた。
 要するに、今後も世界では需要を上回る原油が供給され続けるということだ。
 これは今後の世界経済が、従来のオイルピーク説を前提にした「原油枯渇シナリオ」とは全く違った展開になることを意味している。
《YU》

 提供:フィスコ

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