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【特集】テックファーム Research Memo(5):不採算案件の発生比率低下が今期の最重要課題


■今後の見通し

(1) 2016年6月期業績見通し

テックファームホールディングス<3625>の2016年6月期の業績は、売上高が5,000百万円、営業利益が150百万円、経常利益が140百万円、当期純利益が3百万円となる見通し。前期(11ヶ月決算)との比較では売上高で26.3%増、営業利益で253.0%増と増収増益を見込んでいる。経常利益と当期純利益の差が大きいが、これは米子会社で電子決済サービスのフィールドテストを2016年前半に行うことを目指しており、投資費用が拡大することに加えて、EBEの収益拡大に伴う少数株主利益の増加が要因となっている。事業セグメント別の動向は以下のとおり。

○ソフトウェア受託開発事業
ソフトウェア受託開発事業の売上高は3,800百万円(前期3,624百万円)、営業利益は150百万円(同24百万円)と増収増益を見込む。売上高に関しては前期が11ヶ月決算であったことを考えると伸びを見込んでいないことになるが、これは開発管理体制の強化による不採算案件の発生比率低下を今期の最重要課題として位置付けているためだ。売上高が伸びなくても、不採算案件の縮小により増益を達成していく方針となる。

不採算案件が発生する原因としては、大きく3つに分けることができる。第1に、当初の受注見積もり額そのものが低すぎること、第2に開発の進捗が遅れること、第3に進捗が遅れている案件をカバーするために人的リソースを追加で投入し、費用が想定以上に膨らむこと、などである。

これらの問題点を解消し、不採算案件の発生や損失の拡大を防ぐために、同社は2015年7月に全社横断的なPMチームを組織化した。同チームにおいては、すべての案件の受注見積もり額を精査し、採算が厳しいと判断した時は、見積額を修正させることで、受注段階からの不採算案件の発生リスクを抑制していく。また、進捗遅れに関しては、個人レベルでの管理からチーム管理に移行し、今まで以上に精緻に管理することで、進捗遅れの発生リスクを軽減する。

進捗遅れが生じた場合の追加の人的リソース投入に関しても、従来は必要人員をどの程度補充するのか、社内リソースから補充するのか外注に回すのかも含めて個々の開発チームごとで判断を委ねていたが、これでは社内リソースに余裕があっても、外注するケースが出てしまい、社内リソースの最適化が図れる状況にはなかった。この状況に対して、今期からは社内全体の人的リソースを管理する専門チームをつくり、同チームで一括して社内リソースの最適化が図れるよう運用していく体制を整えている。

こうした組織体制の見直しにより、不採算案件の発生や損失の拡大といった状況は大幅に改善されるものと期待される。また、協力会社に対する管理能力に関しても課題があったが、2015年2月にインドのIT企業でCEO経験を持つ人材を招聘し、責任者に据えたことで今後は改善していくものと予想される。

○自動車アフターマーケット事業
自動車アフターマーケット事業の売上高は1,200百万円、営業利益は84百万円を見込む。持株会社体制となったため、親会社の経営指導料や業務委託費が発生するため、利益水準は低くなっているが、控除前の営業利益では200百万円程度となる見通しだ。2014年11月期の業績が売上高977百万円、営業利益130百万円だったことから、今期は一段の収益拡大を見込んでいることになる。

新規顧客の開拓と既存顧客に対する新サービス(タブレット対応等)へのリプレース需要により、売上高を伸ばしていく方針で、顧客数は前期末の1,300社から1,500社を目指していく。株式上場会社の傘下入りしたことで信用力が向上し、従来よりも大口の顧客からの受注も取れ始めているようだ。

また、今期はガソリンスタンド向けを新たな顧客先として開拓していく予定となっている。「車検ハンター」と呼ぶサービスをフック役として、その他の既存サービスの売り込みも進めていく。「車検ハンター」はガソリンスタンドに給油に来た自動車の車両ナンバーを給与所に設置されているネットワークカメラで自動認識し、車検時期や車両情報などデータベース化して、顧客管理や営業活動に活用していくサービスとなる。既に50店舗で導入を始めており、今後の導入店舗の広がりと他の既存サービスの契約増が期待される。

さらに、テックファームが持つモバイル関連のシステム開発力を活かしたサービスの展開も進めている。具体的には、音声自動入力システムとタブレット端末を使った業務支援システムで、作業をしながらでも音声入力で様々な情報を入力することが可能となり、業務効率の一段の向上につながるものとして期待される。現在は大手ガソリンスタンド3店舗で試験導入を行っている段階で、結果が良ければ導入が進む可能性がある。

自動車アフターマーケット向け業務支援ソフトの市場規模は(中古車販売システム除く)、年間で約1,200 億円程度、事業者の導入率は30% 程度とまだまだ低い。また、同市場では過去30 年分の全車種の部品データベースが必要なため参入障壁が高く、一旦納入すると新車に関するデータの更新が随時必要となるため、解約率も低く収益の安定性が高いという特徴がある。今後は整備事業者や鈑金業者だけでなく、ガソリンスタンドにおいても同社サービスの導入が進んでいくものとみられ、成長余地は大きいと言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《HN》

 提供:フィスコ

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