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【市況】矢口 新のマーケット羅針盤


「ビッドコインが米先物市場に上場」

●世界で浸透が進むビットコイン

 2015年8月1日、警視庁は私電磁的記録不正作出・同供用容疑で、ビットコイン取引所を運営していたマウント社の最高経営責任者、マルク・カルプレス容疑者(30)=仏国籍=を逮捕した。かつて世界最大のビットコイン取引所といわれたマウントゴックス取引所からは、約65万BTC(7月31日現在で231億円相当)が流出しているので、顧客資金の不正流用の疑いもある。

 カルプレス容疑者に限らず、いくつかの取引所で、詐欺容疑などで数多くの逮捕者を出しているビットコインだが、消え去るどころか、世界で着実に浸透してきているように思える。

 ビットコインは、米国税庁によれば資産に当たり、課税の対象だ。米国連邦裁判所は通貨と定義した。ニューヨーク州も通貨だとしている。そして、先週、米商品先物取引委員会は、ビッドコインの先物市場、オプション市場上場にあたって、原油や小麦などと同様、「商品(モノ)」として公式に位置付け、規制の対象とした。

 日本政府は、2014年3月7日の閣議で、ビットコインを「通貨には該当しない」と認定し、貴金属などと同じ「商品(モノ)」として扱う方向性を示した。銀行や証券会社が売買の仲介など本業で取り扱うことを禁止し、取引に伴う売買益は課税対象になるとの見解も明確にした。

 一方、英国はビットコインを通貨と認定し、先日にはバークレイズ銀行が取り扱いを始めると報道された。

 私は、2014年2月17日付のメールマガジンで、「米ビジネス2013年の10大ニュースに選ばれたり、フィディリティがオープンエンドのビットコイン投信を年金運用商品の選択肢に追加したりと、キプロス問題以降のビットコインは、バブルだったのではないか? 流動性の欠如は通貨にとっては致命的な欠陥だ。致命的とは長く存在できないということだ。私も何度かビットコインを話題にしたが、今回限りとする。」とし、以降はコメントをしていない。

 その時のコメントでは、
・ビットコインの誕生と発展
・ビットコイン人気の拡大
・各国政府の対応
・ハッカー攻撃と闇サイト
・規制、脆弱性、不安定、不平等
と、それなりに情報を整理して提供しているので、ビットコインの背景に興味のある方々は、ご参照頂きたい。
参照:The Rise and Fall of the Bitcoin

●課税対象としてのビットコイン

 そのコメントから1年7カ月余りが経ち、私自身の興味も薄れていたところに、ビットコインは商品先物やオプションとして、商品先物取引所で売買できるモノとして再登場した。

 原油や小麦、貴金属などの商品先物には、実体のモノが背景にあるとはいえ、先物価格はしばしば、モノの需要や供給とはかけ離れて動く。上げ下げの方向が逆に行くことは稀でも、誇張して行き過ぎることは日常茶飯事だ。特に、現状のようなカネ余りで、借金、レバレッジが容易な時にはそうだ。それでも、実体のモノは厳然として存在しているので、先物価格が実体から完全に遊離してしまうことはない。

 通貨先物も同じで、国家が発行し、保証する実体のある通貨が背景にあるために、先物価格だけがどこかに行ってしまうことはない。金利や債券、株式の先物も同様だ。

 ビットコインは、そういった意味では「商品(モノ)」でも、通貨でもない。背景になるものがいわば「作り話」なので、むしろ、仮想無形資産と捉える方が理解しやすいかと思う。仮想の無形資産を売買したり、通貨と交換したり、モノと交換したりしているのだ。

 そう考えると、将来、ポケットモンスターやバーチャルゲームの必勝アイテムのようなものも、先物市場に上場したり、資産として課税されたりすることがあるかも知れない。

 私はビットコインが公に認知されたというよりも、政府や取引所が、新たな課税対象や収入源として取り込んだと見る方が実態に近いと見ている。

 いずれにせよ、通貨として扱う金融機関や、商品として扱う取引所が出てきたので、私も、折に触れての情報提供を再開する。


矢口 新(やぐち あらた)
アストリー&ピアス、野村證券、グリニッジ・キャピタル・マーケッツ、ソロモン・ブラザーズ、スイス・ユニオン銀行などで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤める。2002年5月株式会社ディーラーズ・ウェブ創業。2013年4月まで同社代表取締役社長。JTI(Japan Trading Intelligence)初代(2003-7年)代表。

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