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【経済】一尾仁司の「虎視眈々」:利上げ見送り想定内も、不透明感を嫌気


○「12月利上げ」メインも不透明感続く

世界の耳目を集めた米FOMC結果は、「利上げ見送り」だった。NYダウを見ると、発表直後に一瞬売られ、その後上昇、イエレン議長の記者会見で反落に転じる目まぐるしい動きとなり、終値は65ドル安。見送り理由とされたのは、低インフレ状況の長期化(ドル高、原油安の影響が大きく、需要もそれほど強くない)、世界経済成長の不透明な見通し(中国減速の影響大、中南米など新興国不安)、最近の金融市場混乱(中国の通貨安懸念、株価暴落不安、利上げシナリオ自体の後退によるポジション調整)の3点が挙げられた。

FRBがあまり言及してこなかった世界経済に軸足を移したこと、米企業収益圧迫要因として挙げられた、「ドル高」、「原油安」、「中国懸念」を織り込んだ決定であること、から妥当な選択と考えられる。ただ、“経済統計次第”としてきた従来のスタンスから踏み込んだ格好で、世界経済に当面、安心感が戻り難いと見られるため、不透明感を強める結果となった。

米短期金融市場で計算される利上げ確率は、10月21%、12月51%。投票権持つFRB理事17人中13人が年内に1度以上の利上げを見込み、年内見送りは4人(前者が2人減、後者が2人増)。記者会見予定の無い10月より、説明機会のある12月が有力視される。そうなると、来年のポートフォリオ構築のシナリオは遅れることになり、もう2ヵ月半ほど、先行き不透明感の強い短期ラリー市場が続く公算が大きくなろう。

最近の米経済統計はマチマチの動き。17日は8月住宅着工件数が前月比3.0%減ながら年率換算113万戸、5ヵ月連続100万戸の大台をキープし、建設許可件数が同3.5%増となったことで底堅さを示した。一方、9月フィラデルフィア地区連銀製造業業況指数は予想外の?6.0(市場予想+6.0)。マイナスは14年2月以来、水準は13年2月以来。製造業に陰りが広がるリスクがある。

FOMC声明では、「雇用状況の改善は続く」としているので、毎月の雇用統計が最大の焦点になることは変わりないが、擦り寄って来る中国との関係をどうするか、来週の米中首脳会談に軸足が移る。

中国共産党と国務院は17日深夜、異例の政策スタンスを総括する文書を共同発表した(習体制は様々な小組を作り、国務院の権限を剥奪しているとの批判的な見方があり、それに配慮した可能性がある)。市場開放姿勢を強調する内容で、別の場で習主席は「これまでと異なる発展モードへの移行、経済構造の調整、過去の景気刺激措置が浸透中であること」を要因に挙げ、景気減速を認めた。「中国経済は大きな可能性を持っている」とも強調した。国営メディアは、米中高速鉄道建設での合弁会社設立(ラスベガス~ロサンゼルス間370km)、アフリカでの米中共同環境対策、(主に中国内で対策を行う)省エネ基金の共同設立などを、早くも「訪米成果」と宣伝している。

中国に対し、民主化、透明化、市場開放などを求める圧力を先行させるのか、協調姿勢を前面に押し出しての対応となるのか、オバマ政権だけでなく、次期大統領候補の論戦でも焦点となろう。

利上げ見送りで、日本市場にも安堵感が出ると思われるが、先行き不透明感の強まりは頭を抑える要因。安保通過(見込み)で、経済重視路線の強まりを注視することになろう。

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」

《FA》

 提供:フィスコ

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