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【市況】舞妓さんの日本株リポート「MY小話」


「外国人の日本株ETF買いがもたらしたもの」

 スパークスのボトムアップ・リサーチを通じて、「MY小話」として舞妓さんが日本株の情報をお伝えします。

●大型株優位の影に……

 市場が上昇すると「外国人投資家が日本株を買っている」といわれる場合がしばしばあります。確かに外国人投資家が買い越しになると市場は上昇する傾向にありますが、ひとくちに外国人投資家といってもさまざまな投資家がいます。そして、投資家によって日本株の買い方もさまざまです。今年に入ってから特に注目されているのがETFによる日本株の買いです。特に海外の個人投資家などが日本株を買うときに日本株を組み入れたETFを買うことが多いと言われています。

 ETFはTOPIX(東証株価指数)などの指数に連動するように、指数とまったく同じ銘柄を同じ組入比率でもっている場合がほとんどです。そのため、ETFによる日本株買いの場合、その指数の組入銘柄が上昇しやすく、組み入れられていない銘柄は上昇しづらくなります。

 外国人投資家がよく買う日本株のETFは、TOPIXや日経平均株価など、日本人になじみが深いものよりも、「MSCI Japan Index」など世界各国共通のルールで作成された指数に連動するものが多いようです。TOPIXは東証1部上場の普通銘柄1,854銘柄(6月末現在)がすべて組み入れられていますが、「MSCI Japan Index」は314銘柄(6月末現在)にすぎません。そのため、このようなETFの買いによって日本株市場が上昇するときは、これらの指数に大きく組み入れられている銘柄が特に上昇する傾向があります。

 「MSCI Japan Index」はTOPIXに比べ、特に大型株を多く組み入れ、中小型株の組み入れが少ないという特徴があります。つまり、外国人投資家によるETFを通じた日本株の買いが多いときは、中小型株はあまり上昇しないのに対し、大型株は大きく上昇しやすくなります。今年に入って、大型株の方が上昇しやすいことが多かったのはこれも原因だと考えられています。

 一方で、中小型株は割安なまま放置されているとも考えることができるので、今後上昇しやすいのは中小型株であるという見方もあります。

●魅力的な銘柄の安値買いチャンスは続く

 さて、最近特に注目されているETFとして、指数の変動をなるべく小さくする低リスク型があります。なるべく株価変動が小さい銘柄や、お互いに株価変動が逆になるような組み合わせの銘柄を組み入れることによって、指数の変動を小さく抑えようとするものです。

 代表的なものとして、「MSCI Minimum Volatility Index」というものがあります。「iShare MSCI EAFE Minimum Volatility ETF」は、「MSCI EAFE Minimum Volatility Index」に連動します。この指数は米国とカナダを除く先進国の株式を組み入れた低リスク型の指数です。このETFは残高を伸ばしており、特に今年に入ってから急激に伸びています。このような低リスク型ETFの組み入れ銘柄は非常に偏っているため、ごく一部の銘柄が突出して上昇するという現象が見られました。

 日本株のみを対象とした低リスク型指数「MSCI Japan Minimum Volatility Index」の組み入れ銘柄は155銘柄(6月末現在)しかありません。上位50から250位くらいまでのやや中型寄りの大型株の組み入れが非常に大きいです。一方で、それ以下の中小型株の組み入れはとても少なく、また、上位10位くらいまでの超大型株も組み入れが少なくなっています。

 この指数は「MSCI Japan Index」の314銘柄からリスクが低い155銘柄を選んでいますが、重要なのは、選ばれた銘柄が時価総額に応じた比率ではなく、ほとんど同じ比率で組み入れられることです。「MSCI Japan Index」は314銘柄しか組み入れていませんから、中小型株はもともと組み入れがないわけです。中小型株がない中から選んだ半分くらいの銘柄が、同じ比率で組み入れられるので、超大型株の組入比率はTOPIXでの比率より低くなり、中型寄りの大型株の比率は高くなります。そのため、超大型でない中型寄りの大型株の組入比率だけが高くなるのです。

 「MSCI Japan Minimum Volatility Index」のような低リスク型指数に連動するETFが買われると、中型寄りの大型株のみが上昇しやすいという、とても特殊なことが起きます。実際、今年に入ってから特殊なことが何度か起き、たまたま中型寄りの大型株の銘柄を持っていなかったアクティブファンドが苦戦するということが何度か見られました。

 しかし、この現象は個別企業の業績などのファンダメンタルとは全く関係ないものです。魅力的な個別銘柄を選んで買う投資家にとって、この現象は企業のファンダメンタルと関係ない要因での株価変動を起こすため、保有銘柄の株価は振るわないこともあり、苦しいものとなることもあります。しかし、市場の上昇とは関係なく割安な銘柄が放置されたままになっていることも考えられます。魅力的な銘柄を安く買うチャンスが、まだ続いているとも見ることができるわけです。


●舞妓さん/スパークス・アセット・マネジメント株式会社
 スパークスは、1989年、阿部修平により設立された独立系資産運用会社です。日本株運用の専門家として、海外投資家の資金運用からスタートしました。現在では、投資領域をアジアにまで拡大しております。

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