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【特集】エイアンドティー Research Memo(5):通期予想を上方修正、売上高・利益とも過去最高更新見通し


■2015年12月期の業績予想

(1)概要

エイアンドティー<6722>は7月30日に第2四半期の業績と通期の業績予想を上方修正した。通期は、売上高が前期比4.5%増の10,000百万円、営業利益が同30.8%増の1,120百万円、経常利益が同32.2%増の1,100百万円、当期純利益が同53.7%増の700百万円に変更。売上高は期初予想比2.0%の微増だが、営業利益は同24.4%増、経常利益は同25.0%増、当期純利益は同20.7%増の大幅な上方修正となった。期初予想と同様、売上・利益とも過去最高を更新する見通しとなるだけでなく、市場でよく話題になる「売上高100億円、経常利益率10%」の目標も達成されることになる。

(2)製品系列別の売上予想

製品系列別の売上高の修正幅に関しては、臨床検査機器システムは修正後の予想では期初予想(売上構成比変更後)比3.2%増の5,540百万円とした。臨床検査機器システムのうち、検体検査装置は修正後の予想が同3.6%増の720百万円と予想されている。OEMが下半期も上半期並みに堅調に推移すると予想できるためとしている。臨床検査情報システムは修正後の予想が同4.0%減の3,120百万円と、下方修正となった。上半期の伸びを考慮すると意外な印象を受けるが、同社によれば、下半期は上半期の急拡大の反動が予想されるためとしている。検体検査自動化システムは修正後の予想が同19.3%増の1,700百万円となった。修正幅が大きいのは、海外売上の増加が見込めるためである。特にアボット向け分析前工程の「P540」が下半期から本格的に出荷される予定となっている。中国、韓国での案件も期待できるという。

臨床検査試薬は、2,350百万円と修正はない。消耗品は、修正後の予想が1,710百万円と期初予想に比べて35百万円の上方修正となった。いずれにせよ、両製品ともに検体検査装置のOEMの堅調な拡大に引っ張られる形で推移すると予想されている。なお、その他は、修正後の予想が400百万円と期初予想に比べ、80百万円の下方修正とされている。上半期のトレンドが下半期も続くと見ているためである。

(3)利益予想

利益に関しては、売上高経常利益率が修正後の予想では期初予想に比べて1.3ポイント増の11.0%を見込む。第2四半期の15.6%と比べれば、減速感があるように見受けられるが、臨床検査情報システムの売上高が上半期に比べると減速し、エンジニアの稼働率が落ちることが主な要因と推察される。しかし、修正後の予想も2007年12月期の10.1%以来の2ケタ載せであり、現在の同社の利益に関する目標が売上高経常利益率10%の定着としている点から見ても、かなりの高い水準と考えられる。

(4)実現可能性の検証

修正予想に関しては、実現できる可能性が極めて高いと考えてよかろう。同社のビジネスは一般的に受注から納入完了までに半年程度かかるケースが多く、下半期の売上は、上半期中の受注でおおよそ予測できるためである。しかし、これは下振れの懸念が低いという意味であって、上振れの可能性を否定するものではない。例えば、アボット向けを始めとした海外向けの売上高はかなり固く見積もっており、上振れる可能性はゼロではない。

(5)研究開発投資

業績予想の修正では、研究開発費が期初予想に比べて70百万円減の1,030百万円となった。これは、戦略製品の開発及び発売が第2四半期までに完了した反動であり、研究開発費を抑制するという考えではない。年間10億円を越える資金投入は続ける意向を表明しており、下半期においても必要ならば、200百万円程度の増額を許容する考えも示している。

同社はベンチャー企業がトクヤマに買収される形で1994年4月に現在の形になった。ベンチャー精神は今も息付いており、研究開発投資に十分な予算を組むことはこの精神を反映していると言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柄澤 邦光)

《HN》

 提供:フィスコ

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