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【市況】【杉村富生の短期相場観測】

「2015年相場は大荒れのスタート!」

●逆オイル・ショックの可能性が濃厚!

 年明け、2015年の新春相場は大荒れのスタートである。WTI(原油先物)が1バレル=47~48ドルまで下落、逆オイル・ショックの危機がささやかれている。

 この水準ではサウジアラビアを含め、すべての産油国が財政均衡ラインを割り込んでいる。当然、財政危機に陥るだろう。

 特に、財政均衡ラインが162ドルといわれるベネズエラはもはや、どうにもならない。イラン、ロシアも厳しい。このため、追いつめられたベネズエラはバイデン副大統領と接触、アメリカとの関係正常化を図りつつある。

 シェールガス・オイルの開発プロジェクトは中止を余儀なくされる案件が出ている。

 原油価格を急落させ、核開発を進めているイランの資金源を絶ち、シリアを支援しているロシアを牽制し、併せてシェールガス・オイルの台頭を抑制する――このサウジアラビアの戦略はほぼ達成された(詰めの段階)のではないか。

●原油価格の急落はバブルを生む?

 今後は先進国がロシア制裁をどうするか、ロシアがウクライナ問題の着地をいかに図るか、これが焦点になろう。

 このままでは最強と言われた「プーチン帝国」が崩壊する可能性を否定できない。すなわち、1991年のソビエト連邦解体、1998年のルーブル危機の再来である。

 もっとも、原油価格の急落→ソビエト連邦、ロシア危機のあとには1986年の平成バブル、1998年のITバブルが発生している。株式市場にとっては悪い話ではない。今回は筆者が唱えるアベクロバブル相場だろう。

 それに、原油価格の急落は少資源国家の日本に多大のメリットを与える。実際、2015年度の日本企業の増益率は20~25%と、アメリカ企業の3%、欧州企業の9%、アジア企業の11%を大幅に上回る。

 もちろん、円安効果もある。ちなみに輸出企業の2014年度の想定為替レートは1ドル=100~105円に設定されている。

●ギリシャは総選挙の結果次第?

 一方、ギリシャについては事態は深刻である。1月25日の総選挙ではユーロ離脱を主張、財政再建に反対の急進左派連合(SYRIZA)が躍進、政権奪取の可能性が濃厚となっている。なにしろ、国民は痛みを嫌う。

 SYRIZAはトロイカ(EU、ECB、IMF)が課している政府資産の売却、最低賃金・年金・税制改革などの緊縮財政、各種改革を元に戻すように主張、公的債務の大半を免除(放棄)せよ、と求めている。

 ギリシャの債務残高は3170億ユーロ(このうち、公的債務は1950億ユーロ)に達している。これを免除するなどというのは絶対にないだろう。

 新政権発足(再選挙の公算もある)後、トロイカとの交渉になるが、これは難航が予想される。

 仮に、ギリシャの主張を認めた場合、他の南欧諸国の左派勢力が伸長、ソブリン・リスクのドミノ倒しにつながる恐れがある。

●強い銘柄にマトを絞るのが基本!

 ただ、最近の株式市場は「最悪シナリオ」をベースに株価が形成されるケースが多い。もちろん、マーケットはまだギリシャのユーロ離脱を織り込んでいない。しかし、ギリシャ国民の多くは「残留」を希望している。

 万一、離脱→旧通貨ドラクマに戻った場合、通貨は暴落し、ハイパー・インフレになる。

 与党の新民主主義党(ND)の取るべき戦術は、総選挙の争点を「ユーロ離脱か残留か」にするべきだろう。

 現状の「財政再建か否か」では勝てるはずがない。まあ、NDにだって知恵者はいる。いずれ、そうなるのではないか。

 さて、ここでの投資作戦だが、セオリー通り強い銘柄を個別に攻める作戦が有効と判断する。具体的には池上通 <6771> 、UBIC <2158> [東証M]、アイサンテク <4667> [JQ]、高度紙 <3891> [JQ]、ネクス <6634> [JQ]などが狙い目だろう。

2015年1月7日 記

(「チャートブック日足集」No.1541より転載)
(「株探」編集部)

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