【市況】【植木靖男の相場展望】
「見えてきたか年内高値」
●8月相場は一段高の公算大
株式市場は待望の1万5500円のフシを突破、新たな上昇波動入りを確認することとなった。
これまで8月相場は、高校野球や旧盆入りで値幅、出来高とも低調に推移することが多い、と指摘されている。実際、2000年以降の14回に及ぶ8月相場は、6勝8敗と振るわない。
しかも、わが国株価と連動性の高い米国株をみても、7勝7敗と必ずしもよいわけではない。
はたして、この8月はどうか。材料面からは、まず国内景気は多くのエコノミストの疑念とは裏腹に政府、日銀が描くシナリオに沿っているようだ。
企業収益も企業は先行き慎重さを保っているが、15年3月期はいまの慎重さ故に上振れる可能性が大きい。
一方、海外、特にわが国経済に影響力の大きい米国経済は、来年に向けて成長率が高まる、との予想が強まっている。長期金利が一向に上昇しないことからデフレ懸念もあるが、FRBの金融政策からみれば、いずれ金利は上昇に転じよう。
だとすると、為替も円安方向は必至であろう。
こうしてみると、8月相場は1万5500円を突破した余勢を駆って一段高となる公算が大きい。
とはいえ、5月21日からスタートしてすでに2ヵ月が経過、日柄関係でいえば8月は調整があってもおかしくない。その場合、13年12月高値1万6291円を突破してから調整に入るのか、はたまたその前に調整に入るのかは定かでない。もっとも、その調整はあったとしても200~300円程度か。
なお、今後の目標値としては、第1目標は1万6400円処となる。
ちなみに、年内高値は1万7700円、市場人気次第では1万9000円処もあるかもしれない。また、その時期は10月中旬-下旬を大きく超えることはないだろう。
●水素、インフラ関連などに注目
では、こうしたシナリオを妨げるものがあるとすればなんであろうか。
やはり気になるのは米国株価だ。すでに09年3月から上昇に転じて6年目に入っている。株式バリューからすれば決して割安とはいえない。
しかも、「中間選挙の年は安値をつけやすい」とか「10月に安値をつけやすい」といったアノマリーが知られている。
これに噂では、「某国会議員が10月には株式には気をつけた方がよい」と言ったとか。
とにかく相場の世界は魑魅魍魎が徘徊するところ。油断もスキもない。だが、10~11月に大天井をつける予想からすれば、あながち笑って済ませられないところが憎い。
ところで、今後の物色の対象はどうか。市場関係者の中には1万5500円のフシ突破が念願と言っていた向きが渋い顔だ。
それはなぜか。例えば売買高10傑、要は主力株だ。だが、1万5500円を超えてからはこうした主力株が、日経平均が上昇しても半分ほどは下落するという現実がある。つまり、225の中の周辺が底上げしつつあるのだ。結果的にはむしろ1万5500円に届かず、物色対象が材料株に集中していた方が稼げたと嘆いている。
こうした現象は、株価が成熟段階に入るようになると、よく見かける。
かつてバブル華やかなりし頃、経験のない新規投資家が「ダウ平均を買いたい」といった笑えぬ話がある。
これは、こうした現象を端的に表しているのだ。いまは指数のETFがある。成熟段階でもっとも資金効率のよいのはこのETFだ。
ともあれ、テーマからは水素、ロボットであろうし、インフラ関係であることは間違いないであろう。
IHI <7013> 、三菱重 <7011> 、日立 <6501> 、水素では岩谷産 <8088> 、大陽日酸を傘下に入れた三菱ケミHD <4188> に注目したい。
2014年7月30日 記
「チャートブック月足集」No.370より転載
(「株探」編集部)