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【市況】【植木靖男の相場展望】


「試練を迎えるか、5~6月相場」

●四面楚歌のマーケット

 株式市場には、なにかと弱気の声が溢れている。なぜか。

 材料面からみると、一つは世界経済の先行き不安だ。今年のテーマは先進国主導の世界経済とされていながら、先進国の核である米国経済の先行きに確信が持てないのだ。大寒波の影響は徐々に払拭されていくとみられるが、なんといっても住宅市場の回復鈍化が消費を抑えているようにみえる。

 ついで気になるのがウクライナ情勢に再び不穏な空気が醸成されつつあること。国際的な紛争は、投資の世界ではリスクオフになりやすい。

 折角、欧州ではドイツ、フランスなどの株式市場が立ち直りつつあり、新興国でもオーストラリア、インドなどの株価は予想外の堅調をみせているだけに、ここで腰折れでもすれば、回復は容易ではない。

 こうした材料は、いずれもわが国市場に大きな懸念をもたらす。

 その象徴が日本株への海外勢のスタンスだ。いうまでもなく、わが国株価を押し上げるのは海外勢の買いでしかなく、国内投資家は所詮、提灯買いにとどまることが多い。

 3月第2週以降、ともすれば海外勢は売り越し基調にある。前場高、後場安の商状が増えているのは、その提灯買いも途切れつつあるようだ。売買代金は日2兆円を下回ることが多いのはそのためであろうか。

 もっとも、その背景には、世界的なリスクオフの潮流もあるが、国内事情もありそうだ。

 市場にはオバマ米大統領来日を奇貨としてTPP交渉が一気に解決するとの期待があった。だが、結果的には先走りとなったことで市場に失望感が広がった。ここでTPP交渉が合意すれば、芋づる式に構造改革が進むとの期待があっただけに残念というのが市場心理であろう。

 もうひとつの期待、つまり日銀の追加的金融緩和も、本稿執筆時の4月第4週には次第に薄らいできている。

 かくして、市場は四面楚歌の状況に追い込まれつつあるようにみえる。

 ところで、株価のこれまでの大きな流れとして忘れてならないのは昨年のアベノミクス第一幕だ。日銀の異次元の金融政策発表後の急騰で5月に1万5627円の高値をつけたあと6月には1万2445円まで急落した。その後、今日にいたるまで高値、安値の間の中段の保ち合いに入っている。

 以前にも触れたように、中段の保ち合いは、短いもので2~3週間、長いものになると1~2年というものもある。かつて03~05年時には1年半にも及んだことが想起されよう。

 だとすれば、当面はまだまだこの保ち合いが続くとみてよさそうだ。

●分岐点を迎えた5月相場

 5月相場はどうみればよいだろうか。いうまでもなく、戦後の5月相場の傾向は、3、4月相場が高く、そのせいで安くなることが多い。

 月別でみると、戦後、5月相場の勝率は9月に次いで47.7%とワースト2位である。米国でも“Sell in May and go away ”との有名な相場格言がある。

 もっとも、今年は4月相場が格別高かったわけでなく、“浮けば沈む、沈めば浮く”という相場の本質論からすれば、今年を5月安と断じるにはやや違和感があろう。

 とはいえ、今後上向けば上限の1万6000円処、下向けば下限の1万2400円処もとされる大きな分岐点にあることは間違いない。

 そして、日経平均が上昇に転じるには、やはり海外勢がデリバティブ取引で指数を押し上げるパターンが再燃するしかないのだ。彼らが日本株を買うには米国経済の回復がより明確になり、米国株が上昇することだ。そうなれば、株高の要因である円安も進展するので好都合だ。

 その意味で5月2日の米雇用統計発表は一つのきっかけとなろう。日本株が上昇に転じる唯一の予想される好材料といえよう。

 さて、当面の有望銘柄はなにか。材料面では、一つは米国の半導体株価指数がジリ高をみせていることから、円安が進展すればエレクトロニクス関連株が人気づく可能性があろう。すでにクラリオン、日本航空電子などが高値を更新しているが、押しの浅いホトニクス <6965> 、ファナック <6954> 、カシオ <6952> 、村田製 <6981> 、日電産 <6594> などが有望だ。

 また、ここWTIの原油市況が1バレル100円処を固めている。JX <5020> 、それに伊藤忠 <8001> 、丸紅 <8002> など商社株も買い転換しそうだ。注目したい。

 このほか目立つのは建設株の堅調ぶりだ。人手不足によるコストアップが指摘されているが、建設需要は復興需要で高水準が続く見込みだ。若築建 <1888> 、安藤ハザマ <1719> など仕手妙味もある。固いところでは酒井重 <6358> も業績好調だ。

 このほか、いまもみ合いに入っている国際石開帝石 <1605> 、花王 <4452> など好業績銘柄にも注目したい。

 5月連休でタイミングがよいJR東海 <9022> も技術輸出というテーマもあり要注目だ。リニアへの夢も折に触れ浮上しよう。

2014年4月28日 記

「チャートブック月足集」No.367より転載
(「株探」編集部)

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