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【市況】【植木靖男の相場展望】


「市場環境が味方する」

●第一関門を突破し、戻り歩調

 株価は首都圏で桜花が満開になるにつれ、ようやく上昇気流に乗ってきた。きっかけは3月27日の3月決算配当落ちだ。当時の株価水準は低く、配当落ち分100円余をそっくり落とすと、安値もみ合いから下放れとなって崩落してしまうところだった。

 幸い、そうならず配当落ち分100円余を埋めて、なお145円高と急伸した。まさに際どいところであった。第一関門突破である。その後、買い転換し、4月3日現在6勝1敗と順調に戻り歩調を辿っている。

 市場環境も味方する。ウクライナ情勢はロシア、欧州ともお互い傷つくことを恐れ、なにやらウヤムヤになりそうな状況だ。

 一方で、新興国の通貨安懸念も一服した。新興国の株価は反転上昇に転じ、欧州の株価も戻り気味である。

 そして、なによりも米国株が下値を固めて出直ってきたことが、投資家心理に安心感を与えている。米セントルイス大学のラパッチ教授が指摘するように、確かに米国株が堅調なら他の国の株価もそれに呼応することが多い。すでに、NYダウ平均はもちろんS&P500種も一足早く3月7日の戻り高値を上抜いてきた。

 加えて、為替面でも変化があった。上値抵抗ラインとみなされていた3月7日の1ドル=103.76円をも突破。いよいよ本年1月2日の105.44円が視野に入る。米国長期金利も下値を切り上げ、2.8%台に乗せてきた。昨年12月31日の3.034%が見えてくる。ドル円相場が急上昇相場に入る下準備は着々と整ってきたかにみえる。

●配当落ち日の動きに注目

 かくして、株価を巡る環境は好転してきた。では、株価は今後、どう展開するのであろうか。「月足集」では3つのコースを指摘した。

 最良のコースは、このまま押し目らしい押し目をみせず上昇。一気に3月7日高値1万5274円を突破、さらに昨年末の1万6000円台を目指すというもの。だが、そのためには次の条件が必要。つまり、米国株が上昇を続け、かつ海外投資家がこれまで2週連続大幅売り越しをみせたが、再び買いに転じることだ。

 ふたつめのコースは、1万5000円処でもみ合い、その後、再び3月7日高値に挑むというコース。通常、株価は上昇時において、5~6日上昇するともみ合い、その後再び5~6日上昇してもみ合う、という習性がしばしばみられる。今回もそうした習性が展開される可能性もあろう。

 最後に、1万5000円処でもみ合ったあと、下放れるコース。おそらく、このコースでは海外勢の買い越しはあっても少なく、ときに大きく売ってくるというシナリオである。

 どのコースを辿るかは、いま判断するのは難しい。日々、読者諸氏の各自の手法に則って見極めることをお薦めする。

 ところで、当面の物色対象をどうみればよいのであろうか。全般市況が買い転換したのは3月27日の配当落ち日だ。当日、前場全般が安い中で、早くも上昇に転じた銘柄は、それなりの評価があってしかるべきと思われる。

 具体的には、自社株買いを発表したトヨタ <7203> 。三井物が自社株買いで急伸しただけに注目したい。

 業績絶好調の信越化 <4063> も面白い。米国の塩ビ子会社が米住宅市場回復で業績好調という。

 今回の景気回復は個人消費からとよく言われる。セブン&アイ <3382> が牽引役であり、新鮮味がありそうだ。これまでユーロ安で出遅れていたキヤノン <7751> も久々に表舞台に立った感がする。

 そして、政府が期待するほど円安になっても輸出は伸びないと言われるが、そうした中でも円安効果を満喫している企業もある。マツダ <7261> の値動きは抜群である。

 このほか、中国経済に指標改善が一部見られるが、ファナック <6954> が中国関連、輸出関連として2万円大台を目指すような気がする。

 また、出遅れて買い転換したのは、個人消費関連のサンリオ <8136> 、工作機械のオークマ <6103> 、それに大幅増益・増配含みのSMK <6798> などだ。予想外に早く円安ペースになってきたことで銘柄に物色の変化がみてとれそうだ。

2014年4月3日 記

「チャートブック週足集」No.1968より転載
(「株探」編集部)

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