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【市況】S&P500は再び上昇相場4年で終了なのか?~地政学リスクとインフレ耐性【フィリップ証券】

 米国株はピークアウトしたのだろうか? 表的株価指数であるS&P500指数の年初来高値は3月28日の高値5264ポイント。コロナ禍のパンデミックで大幅下落した2020年3月に安値2191ポイントを付けたのが23日だった。その日から今年3月28日までの約4年間の取引営業日数を数えると1012日に上る。

 新型コロナ禍前の過去最高値だった3393ポイントを付けた日が2020年2月19日だった。その日は、2015年夏以降のチャイナショックで株式市場が大きく動揺した後の2016年の安値1810ポイントを付けた2月11日から数えて1012日を数える。連続する上昇相場の時間関係の類似性は経験的に当てはまる場合が多い「アノマリー」の範囲を超えるものではないとしても気になるところだ。

 イランが13日夜から14日未明にかけてイスラエルに向けて無人機やミサイルによる大規模攻撃を行った。その前の12日に取引が行われていたWTI原油先物価格は1バレル87.67ドルまで上昇も、終値は85.45ドル。地政学リスク時に買われやすい金先物価格もCMXで1オンス2436ドルまで買われたものの、終値は2348ドルまで戻り売りにあった。

 更に、日本時間19日の午前10時頃から、イスラエルがイランに対して報復攻撃に踏み切ったとの報道を受けて、原油や金(ゴールド)の先物相場が高騰。日経平均株価も下げ足を強めて午前中の取引終了前に3万6749円(前日終値比1330円安)まで下落した。ただ、懸念されていた核施設への攻撃は避けられたようだとの見方から、WTI原油先物価格は1バレル86ドル台まで上昇後、午後は84ドル台で落ち着きを示し始めた。CMX金先物価格も一時1オンス2418ドルまで買われたものの、その後は戻り売りから2383ドルまで下落した。

 なお、金価格については、アフリカ南部ジンバブエが4月初旬、崩壊寸前の自国通貨と財政赤字に直面して中央銀行が実物資産の金を裏付けとした新たな法定通貨(ジンバブエゴールド)を発行。米FRB(連邦準備制度理事会)の利下げが遠のけばドル高が新興国の通貨危機リスクを加速させる懸念も出て来よう。それは金価格の更なる高騰を予感させる面があることには注意が必要だろう。



関連銘柄(インフレ時に耐性のありそうな生活必需品・ディフェンシブ銘柄)


チャーチ&ドワイト<CHD> 市場:NYSE・・・2024/5/2に2024/12期1Q(1-3月)の決算発表を予定

・1846年設立。消費者向け家庭用品・パーソナルケア製品の製造・販売。ベーキングソーダ(重曹)「ARM&HAMMER」、漂白剤「OXICLEAN」のほか電池式歯ブラシ「SPINBRUSH」等14ブランドに注力。

・2/2発表の2023/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比6.4%増(会社予想5.0%増)の15.28億USD、非GAAPの調整後EPSが同4.8%増の0.65USD。既存事業増収率は2四半期連続販売量増および売価上昇(4.0%)を受けて同5.3%増。海外部門が同9.0%増収、粗利益率が同2.6ポイント上昇。

・2024/12通期会社計画は、売上高が前期比4-5%増、粗利益率が同0.50-0.75ポイント上昇、事業売却予定の動物飼料「メガラック」の影響を除く調整後EPSが同8-10%増(中心値3.45USD)。2023年度通期実績は、販売量増加、販売価格引き上げ、運転資本効率改善などの好条件が揃って営業キャッシュフローが同16.3%増の10.3億USDと堅調。好業績のディフェンシブ銘柄として注目されよう。


クロロックス<CLX> 市場:NYSE・・・2024/5/1に2024/6期3Q(1-3月)の決算発表を予定

・1913年設立の大手日用品メーカー。漂白剤ブランド「Clorox」ほか家庭用品・業務用製品で有力製品を擁する。ヘルス&ウェルス、家庭用品、ライフスタイルの3部門および海外事業から構成される。

・2/1発表の2024/6期2Q(10-12月)は、売上高が前年同期比16.0%増の19.90億USD、非GAAPの調整後EPSが同2.2倍の2.16USD。サイバー攻撃後の在庫再構築に伴い販売量増加。販売価格引上げとコスト削減に加えて出荷数量の伸びによる原価吸収効果もあり、粗利益率が同7.3ポイント上昇。

・通期会社計画を上方修正。売上高減少率を前期比1桁台前半(従来計画:1桁台半ば~後半)、調整後EPSを同4-8%増の5.30-5.50USD(同:4.30-4.80USD)とした。昨年8月発生のサイバー攻撃による悪影響からの回復順調で失われた在庫および流通の大部分を取り戻すことができた模様。ゴミ袋「Glad」ブランド事業、およびペットブームを受けた猫砂事業の生産能力拡充が成長の鍵を握ろう。


コストコ・ホールセール<COST> 市場:NASDAQ・・・2024/5/31に2024/8期3Q(3-5月)の決算発表を予定

・1976年創業。ウェアハウス・クラブ(会員制倉庫型店舗)を運営しており、生鮮・加工食品、家電や自動車関連などを卸売価格で販売する。世界の店舗数は3/3現在で828店舗。Eコマースも展開。

・3/7発表の2024/8期2Q(12-2月)は、総収益が前年同期比5.7%増の584.22億USD、純利益が同18.9%増の17.43億USD。総収益の内、会費収入は同8.2%増の11.11億USD。ガソリンや為替変動を除いた既存店売上高は同5.6%増。その内、Eコマースは同18.4%増収と堅調に推移した。

・同社は顧客への利益還元優先で会費収入のみを粗利益の源泉とする方針のため、高インフレで消費者の財布の紐が固くなる局面の価格設定で競合他社より優位性あり。会費収入は2024/8期1H(9-2月)が前年同期比8.2%増。4/10発表の3月のガソリン・為替変動除く既存店売上高は前年同月比7.5%増。その内、米国7.4%増、カナダ7.3%増、その他海外8.4%増。Eコマースは同28.0%増。



フィリップ証券
フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
(公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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