市場ニュース

戻る
 

【市況】カナダドルに先高感【フィスコ・コラム】


原油相場に上昇圧力が強まり、資源国通貨のカナダドルに底堅さが目立ちます。国内経済も回復軌道に乗り、インフレ再加速の見方も押し上げ要因に。支持率低迷のトルドー首相の任期は残り1年あまりとなり、政権交代への期待感もカナダドルを支援しそうです。


ドル・カナダドルは昨年末までの2カ月弱の間に5.5%下落(カナダドルは上昇)後、年明け以降は反発(同反落)し、1月半ば以降は1.36カナダドル付近を上値に横ばいで推移。カナダの輸出の8割はアメリカが占め、この通貨ペアはレンジ相場になりやすい特徴を持ちます。そのため米連邦準備制度理事会(FRB)の引き締め的な政策の継続が見込まれるものの、カナダドルの下げは限定的と予想されます。


その要因として、カナダ経済の回復が背景にあります。国内総生産(GDP)は昨年の7-9月期と10-12月期の2期連続のマイナス成長から持ち直し、今年1-3月期は年率換算で+1.0%と予想外に堅調でした。カナダ銀行(中銀)はインフレ沈静化を受け1月に利上げ打ち止めを宣言したものの、隣国アメリカのインフレは再加速。カナダにも波及する可能性があり、FRB同様、利下げ時期は後ずれしそうです。


原油相場もカナダドルを支えています。指標となるNY原油先物(WTI)は1バレル=「80ドルの壁」をついに上抜け、目下85ドルを目指す展開。ハマス・イスラエル紛争の勃発後は影響が限定的との見方からWTIは一時60ドル台に軟化しますが、中東情勢は不透明化しています。中国経済はなおまだら模様ながら、経済指標は徐々に持ち直してきており、今後本格的に回復すればさらに相場を押し上げそうです。


主要産油国の動向として注目されるのは、石油輸出国機構(OPEC)の加盟・非加盟国で構成するOPECプラスの結束力です。昨年はアンゴラの脱退で盟主のサウジアラビアのリーダーシップに疑念が強まり、原油価格の下押し圧力になりました。ただ、プーチン・ロシア大統領の再選でロシアの発言力が高まり、減産の方針を強める見通しです。足元の原油高はそうした要因も重なっているとみられます。


一方、トルドー政権の支持率30%付近での低位安定もカナダドルを支えているもようです。2021年の前回総選挙ではコロナ禍での強硬姿勢が嫌気され、与党・自由党は議席を大幅に減らしました。25年までに行われる次期総選挙に向け、最大野党の保守党は支持を拡大し、政権交代の可能性が濃厚です。政権のスムーズな移行が期待されているため、政治情勢はカナダドル売り要因にはなりづらいでしょう。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《TY》

 提供:フィスコ

株探からのお知らせ

    日経平均