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【特集】OPECプラスは減産規模を維持の公算、ガソリン高回避へ米大統領は動くか? <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司

●石油需要が最も高まる季節が到来

 6月1日に石油輸出国機構(OPEC)プラスが閣僚会合を開催する。OPECプラスは日量220万バレル規模の自主減産を6月末まで継続するが7月以降の対応は今のところ不明である。

 OPECが月報で示しているように、今年の需要が前年比で日量225万バレルも拡大するなら減産を緩和して増産するという選択肢もありうる。ただ、国際エネルギー機関(IEA)は今年の需要見通しを引き下げ、前年比で日量110万バレル増としている。石油の需要見通しにおいて世界的に最も注目されているOPECとIEAの需要見通しの隔たりは甚だしく、閣僚会合を控えて増産ありきの雰囲気ではない。少なくとも7-9月期は現行の減産規模を維持するとの見方が多い。昨年から原油相場の国際的な指標であるブレント原油ウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物はレンジ相場を続けており、値動きが安定しているとはいえ、最近の水準から原油価格が下振れすることを主要産油国は望まないだろう。

 ただ、7-9月期は世界の石油需要が1年間で最も高まる時期である。世界最大の石油消費国である米国でガソリン需要が拡大するのはこの時期で、主要産油国が減産を継続すると一時的に供給が不足する可能性がある。夏場の米国のガソリン需要は日量1000万バレル近くまで拡大し、世界全体の石油消費の1割程度に達するほど大規模である。米国でクレジットカードの延滞率が上昇していることから物価高や金利負担に苦しんでいる家計は多いようだが、例年のように需要が盛り上がると原油相場を押し上げる要因となる。

●再選を目指すバイデン氏がSPRの再放出に動くか

 一方、11月の米大統領選を控えて、ガソリン価格の高騰は再選を目指すバイデン米大統領にとって逆風である。危惧されているようにガソリン小売価格が上昇に向かうならば、サウジアラビアに対する働きかけなど何かしらの対応がありそうだ。米大統領選の世論調査によると、トランプ前大統領に対してバイデン米大統領は劣勢である。

 米国にとって手っ取り早いのが戦略石油備蓄(SPR)の再放出である。バイデン政権は過去最大のSPR放出を実行し、原油高を抑制した経緯があり、これを繰り返す可能性は十分にある。米大統領選に向けてバイデン米大統領は苦戦しており、いざとなればSPRの大量放出をためらうとは思えない。SPRが低水準で推移しているとしても、あとは野となれ山となれである。先月、ジョン・ポデスタ米国大統領上級補佐官はSPR再放出の可能性について言及している。

 OPECプラスの閣僚会合で、自主減産の規模が維持されることを前提とすると、注目すべきは米国の対抗策である。バイデン米大統領が再選を目指すならば、何もしないというのはありえない。米国のガソリン小売価格は年初から上昇傾向にあり、さらなる上昇を回避するためには先手を打つ必要があるのではないか。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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