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【特集】米経済への懐疑、ガソリン需要はドライブシーズンに向け下振れ続く <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司

●堅調な景気指標とは裏腹に下振れる石油需要

 米国の石油製品需要が弱含んでいる。米エネルギー情報局(EIA)によると、ガソリン需要の4週間移動平均は日量857万9000バレルと前年割れを続けており、3月末以降のトレンドは下向きである。例年であればドライブシーズンの本格化に向けてガソリン消費は上向いていくが、足元の傾向は明らかに弱い。

 留出油の需要の4週間移動平均は日量347万バレルで推移しており、ガソリンと同様に3月末以降のトレンドは下向きである。家計はガソリン消費を、企業はディーゼル燃料消費をともに抑制している。EIA週報で示される需要は統計的な推計値であり、実態を正確に表していないとはいえ、この石油需要の下振れに目を向けないわけにはいかない。

 米製油所への原油投入量は4週間移動平均で日量1580万2000バレルと、ほぼ前年並みである。今年春先にかけて、米国のガソリン需要の高まりはやや前倒し気味で、 原油消費量が上向く時期が早かったが、前年を上回っていた原油需要は落ち着いた。ただ、原油在庫が4億6089万バレルまで増加し、今年の最高水準を更新したことからすると、需要期が本格化しつつあるにも関わらず、需給がだぶついている印象だ。

 米国の足元の石油需要下振れについて、2月や3月に需要が早々と増加した反動が現れたと認識することは可能かもしれない。消費者が需要を先取りすることは考えられる。ただ、今年のガソリン需要の出足が早かった可能性がある一方、主に企業が消費する留出油の需要下振れが説明できない。

 全米のガソリン小売価格は1ガロン(約3.8リットル)あたり3.653ドルで推移している。年初からのガソリン高がやや落ち着き、水準的には昨年とほぼ同水準である。価格的にはガソリン高に消費者が悲鳴をあげているとは言いづらい。留出油に含まれるディーゼル燃料の価格は安定しており、企業の場合も燃料高が消費を圧迫しているわけではなさそうだ。では、何が企業や家計にエネルギー消費を切り詰めさせているのだろうか。

●高水準の金利負担が石油消費を圧迫している可能性

 おそらくは高水準の金利負担が長期化していることが石油消費を圧迫している。米連邦準備制度理事会(FRB)は昨年7月の利上げを最後に政策金利の据え置きを続けている。昨年末、パウエルFRB議長が利下げを示唆したことで企業や消費者は一時的に安堵したものの、いくら待っても利下げが始まる兆候は乏しく、むしろ最近の米経済指標からすると年内の金融緩和開始は見通しにくくなったかもしれない。

 金利負担に耐えきれず、生活必需品である石油の消費を家計や企業が節約しているならば、米経済が圧迫されていることは明らかである。高水準の政策金利を維持できるほど米経済は本当に堅調なのだろうか。一方で、米経済指標からすると米景気悪化リスクは限定的であり、石油需要の下振れが映し出す世界とはかなり食い違う。米経済指標を信頼するなら、石油需要はいずれ上向いていくだろうが、需要下振れを毎週のように確認しつつ、強気に構えるのは精神的につらい。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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