【市況】来週の相場で注目すべき3つのポイント:黒田総裁講演、米利上げ時期の思惑、米アップルイベント
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
■株式相場見通し
予想レンジ:上限17500-下限16800円
来週は、米雇用統計の結果を受けた利上げ観測の思惑が、相場の変動要因になるだろう。8月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は15.1万人増。コンセンサスは18万人増だった。前月は27.5万人増に上方修正(速報値25.5万人増)された。8月の失業率は4.9%で前月と変わらず。平均時給は前月比0.1%増の25.73ドル。伸び率は前月(0.3%増)を下回った。この結果に市場の反応は割れており、発表直後には為替市場では一時102円台後半、大阪225先物は16900円を割り込む局面もみられた。しかし、その後は米国市場の強い反応を受けて、為替は一時104円台に乗せ、225先物は17170円までの上昇をみせている。週明けの反応としては、ギャップアップで5月末の戻り高値(17251.36円)を窺う展開になりそうだ。
ただ、利上げ時期については9月、12月といった見方が分かれているようであり、判断に迷いがある。雇用統計の結果からは9月利上げが後退した感はあるが、FRBの利上げに向けた積極姿勢を踏まえ、9月利上げの可能性を意識しつつも、結果的には9月20日・21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)までは強弱感が対立しやすい局面がありそうだ。とはいえ、足元のドル高・円安基調や原油相場の調整基調を見る限り、利上げを織り込んだ流れに向かっているとみられる。年内利上げ観測を背景としたドル高・円安基調が景気敏感セクターを見直す流れを継続させることになりそうだ。
先週、日経平均は価格帯別出来高で商いが膨れていた16600-16800円のレンジをクリアした。週末のシカゴ先物は17100円を超えてきたが、これにさや寄せする格好から、明確にレンジを上放れる形状となる。週足ベースの一目均衡表では、雲下限が16945円辺りに位置しているが、これを突破してくる。雲の中での推移となり、強弱感が対立しやすいだろうが、今後は17000円処を支持線としたリバウンド基調が意識されよう。5日のレーバーデー明け後は海外勢が夏休み明けとなるため、実需の資金流入も期待されるところである。
その他、経済イベントでは、5日に日銀の黒田総裁が講演するほか、中国・杭州で開催のG20首脳会議が閉幕。6日から8日までASEAN関連首脳会議がラオスで開かれる。7日に米地区連銀経済報告(ベージュブック)が公表されるほか、8日に4-6月期の国内総生産(GDP)改定値、7月の国際収支、8日に8月の中国貿易収支、9日に8月の中国物価統計が発表される。その他、7日に米アップルがイベント開催し、新型iPhoneなどを発表する可能性がある。
■為替市場見通し
来週のドル・円は、ドル買いがやや後退する可能性。イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長やフィッシャー副議長は早期利上げの可能性を示唆しているが、市場関係者の間からは「9月利上げはあまり現実的ではない」との声が多く聞かれている。8月米雇用統計は9月利上げを決定する材料ではないとみられていることから、利上げは12月になるとの見方が依然として多い。このため、早期利上げを想定したリスク選好的なドル買いはやや後退する可能性がある。
一方、日本銀行の金融政策に対する市場の関心は高まっている。総括的な検証を踏まえ9月の追加緩和策としてマイナス金利の深掘りを模索しているとの見方が広がっているが、5日に予定されている日本銀行黒田総裁による講演(共同通信主催)での発言が材料視される可能性がある。マイナス金利拡大の方向性が示された場合、金融機関の業績悪化の思惑が浮上するが、株式市場が動揺しなかった場合、リスク回避的な円買いは抑制される見込み。
ただ、量的緩和策強化への思惑は後退するとみられることから、投機的なドル買い・円売りが大きく広がることは期待できない。米早期利上げ観測が再度後退した場合、ドルの上値は重くなり、103円を下回った場合はストップロスのドル売りによってドルの下げ幅は拡大する可能性がある。
■来週の注目スケジュール
9月 5日(月):日銀総裁講演、中財新総合PMI、ユーロ圏総合PMI、G20首脳会議など
9月 6日(火):車名別新車販売、独製造業受注、米・ISM非製造業景況指数など
9月 7日(水):景気動向指数、独鉱工業生産指数、米ベージュブックなど
9月 8日(木):4-6月GDP改定値、オフィス空室状況、ECB政策金利など
9月 9日(金):中消費者物価指数、独貿易収支、米卸売売上高など
9月10日(日):中マネーサプライ、中元建て新規貸出額など
《TM》
提供:フィスコ