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【市況】【植木靖男の相場展望】 ─ 膠着状態を脱する条件

株式評論家 植木靖男

「膠着状態を脱する条件」

●円高が重しの株屋いじめ相場

 昔からの相場格言に“株屋殺すにゃ刃物はいらぬ。寄り引け同値でザラバなし”というのがある。

 どうやら昨今の相場は、これに該当するようだ。売っても駄目、買っても駄目なのである。そういえば、2003年から2005年にかけて2年もの長い間、膠着状態が続いたことを想起する。

 しかも、膠着状態に加え、ここのところの値動きは寄りから大きく放れて、肝心の中のあんこが薄いのが特徴。これでは稼ぐことは極めて困難である。

 いうまでもなく、膠着の中で上値を重く覆っていた蓋は円高トレンドである。エネルギー安、ドル高で米国景気は沈滞気味、結果として金利が上昇しないため日米金利差が拡がらず円安になり難かった。加えて、米国ではドル高への不満が募り、徐々に円高圧力が強まったのだ。

 それだけに4月の米消費者物価指数(CPI)の市場予想を上回る上昇はサプライズであった。久し振りに米金利が大きく上昇したのだ。

 これに対して米国株価は複雑な反応を見せた。デフレを恐れていた米国景気だけに素直に好感しても、との想いがある。しかし、株価はむしろ下落したのだ。利上げが遠のくといって、これまで株価は騰がっていたのだから。

 いまさら利上げをするほど景気が回復しているから株価が高くなる、とはいえないであろう。

●高すぎるから上がらぬ?

 では、市場はどういう状況になれば好感するのであろうか。景気先行きに不安はあっても金融緩和状態の方を優先するのか。はたまた金利が上昇するような景気の堅調を喜ぶべきなのか、どちらであろうか。

 わが国でも同じようなことが起きた。1-3月期のGDPの速報値が発表された。年率換算プラス1.7%であった。これもサプライズだ。予想では-1%~+1%と言われていた。株価はどう反応したのか。騰げ下げを繰り返し、結局小幅安で引けた。

 これまで市場では、景気が弱く、それ故にこそ追加金融緩和、財政出動、消費増税先送りの3点セットを期待していた。市場も政府も戸惑うことしきりである。

 かくして、株価は膠着状態に陥り、株屋いじめとなっている。

 筆者はかつて先輩に教えられたことを思い出した。それは株価が騰がらないのは、その時点での株価水準が高過ぎるからだ、と。

 この説が正しいとすると、今年後半にも株価が高くなることを期待するのであれば、まずは株価は下がることが条件ということになる。今のままでは騰がってもたかが知れているとすれば尚更である。富士通 <6702> に注目したい。

2016年5月20日 記


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