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【市況】明日の株式相場に向けて=森を見ず「個別勝負」に頭を切り替える

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
 3連休明けとなった6日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比758円高の3万2708円と今年最大の上げ幅で4日続伸となった。10月後半はかなりドラスチックな下げに遭遇したが、日米の中銀による金融政策決定会合が行われる前週が大きなヤマ場だった。ここで日経平均が踏みとどまることができなければ、今度こそ本当に「オオカミが来てしまった」となるところだったが、実際は急速な戻り相場に転じ危機を脱した形である。今回も売り方は全面撤退、踏み上げ相場の典型となって日経平均は一気に水準を切り上げた。きょうは一時800円を超える上昇を示す場面もあった。

 今回の買い戻しの凄まじさを示す話として、市場関係者から聞かれたのはヘッジファンドの変わり身の早さだ。「ゴールドマン・グローバルインベストメントリサーチによると前週後半(11月2日と3日)にショートポジションを組んでいたヘッジファンドの爆発的な買い戻しが作動した。このわずか2日間(厳密には1日の午後の取引を含めた2日間と半日)で10月に積み上げていたショートをほぼすべて解消した」(ネット証券マーケットアナリスト)という。背景にあるのは米長期金利の急低下であり、10年債利回りは5%近辺から一気に0.5%も水準を切り下げ4.5%台まで下落した。これが株式市場において強烈なアンワインドを生む導火線となった。

 空売りの買い戻しといってもAIアルゴリズムが司令塔となっていて人間のような痛みを感じないのかもしれないが、これに巻き込まれたら生身の売り方は大変である。結果的に前週1日発表の米ISM製造業景況感指数とFOMC、パウエルFRB議長の記者会見がターニングポイントとなったが、東京市場は前週末が「文化の日」で休場だったことから、週明け6日に週末分の買い戻しが乗って、日経平均の800円高につながった。

 「三空踏み上げに売り無し」とも「三空踏み上げには売り向かえ」ともいわれるが、果たして今回の三空はどちらか。ここから買い参戦にすることに躊躇するのが普通の投資家心理だが、かといって新規に空売りするのも相当な恐怖感が伴う。75日移動平均線を一気に上回り、10月13日ザラ場の戻り高値3万2533円も楽々クリアしたことで、常識的に相場は強いと判断されるからだ。ただ、ついこの間までは「三尊天井形成」で買いに勝機なしとする声がかまびすしかった。アナログ時代にチャートは神器だが、AIアルゴリズムが絡むようになって大分そのセオリーに対する信憑性は揺らいでいる。

 一つ注目されるのは騰落レシオ(25日移動平均)で、前週の取引終了時点で日経225ベースでは82%、東証グロースは79%と80%を下回っていた。それを参考にすれば投資マインドはむしろ陰の極に近かった。ここで弱気になる必要はないということになる。一方、個別株を見るときょうのプライム市場の値上がり銘柄数は1260で全体の76%と8割にも届かず、総花的な上昇ではない。半導体関連が買われたとはいってもレーザーテック<6920>は軟調だった。「足もとではショートの溜まり具合など個別の需給関係が明暗を分けている」(ネット証券アナリスト)とする。森全体に目を向けることは確かに必要なことだが、全体指数に惑わされるということも往々にしてある。投資するのはあくまで個別株であり、素直に内容の良い銘柄に照準を合わせていくのが、ハイボラティリティ相場における王道といえるかもしれない。

 狙い目としては生産台数回復が顕著な自動車周辺の銘柄が分かりやすい。前週の当欄で取り上げたトヨタ系列の自動車部品株のほか、防振ゴム大手の住友理工<5191>や全固体電池関連として今後に注目が集まるフロイント産業<6312>、自動車向け試作・金型を手掛ける菊池製作所<3444>などをマークしておきたい。

 あすのスケジュールでは、9月の家計調査、9月の毎月勤労統計がいずれも朝方取引開始前に開示されるほか、午前中に10年物・物価連動国債の入札が行われる。また、10月の車名別新車販売、10月の軽自動車販売が発表される。海外では豪中銀の政策金利発表、10月の中国貿易統計、9月の米貿易収支、9月の米消費者信用残高など。なお、米国ではウィリアムズNY連銀総裁が米経済団体のディスカッションに参加する。国内主要企業の決算発表ではエーザイ<4523>、LINEヤフー<4689>、ダイキン工業<6367>、任天堂<7974>、NTT<9432>などが予定される。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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