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【特集】社会基盤の一大変革担う「デジタル・ガバメント」関連株に春風吹く <株探トップ特集>

行政手続きを電子申請に統一することを目指したデジタルファースト法案。同法案は今通常国会での提出が予定されている。同法案の成立・施行となれば、デジタル・ガバメント関連株が活躍の時を迎える。

―“デジタルファースト法案”への関心高まるなか、活躍の季節を待つ銘柄群―

 今年に入り、「デジタルファースト法案」への関心が急速に高まっている。デジタルファースト法案とは、行政手続きを原則として電子申請に統一することを目指した法案で、政府・与党は今通常国会での提出を予定している。

 現在、国会では2019年度予算案の衆議院での審議が大詰めを迎えているが、予算案が通過すれば、同法案への関心が更に高まることが予想される。法案成立・施行となれば社会基盤の一大変革につながるだけに、関連銘柄には注目が必要だろう。

●ビジネス環境整備にはデジタル化が不可欠

 安倍晋三政権は13年の「日本再興戦略」で、世界銀行による「ビジネス環境ランキング」(190の国・地域を対象に、企業活動に影響を及ぼす規則や制度を比較評価し順位付けした年次報告書)で、日本を先進国(OECD加盟35ヵ国)で13年の15位から20年までに3位以内を目指す目標を掲げた。

 しかし、最新の発表(18年10月)によると、日本は24位に順位を落とすことになった。内訳をみると、分野別では電力事情と破綻処理を除いて総じて低い評価となっており、なかでも法人設立や建設許可、不動産登記、契約執行などの行政手続きや法律の項目は低いランクにとどまっている。評価の改善に向けて、運用の見直しや制度改正が必要とされている。

 これを推進するために求められているのが、行政手続きのオンライン化などだ。17年5月に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(IT宣言・官民データ計画)では、重点分野の一つである電子行政分野における取り組みとして、「デジタル・ガバメント推進方針」が策定された。同方針では、国民や事業者の利便性向上のために、行政のあり方そのものをデジタル前提で見直すデジタル・ガバメントの実現を目指すとしており、その実現に欠かせないのが、「デジタルファースト法案」とされている。

●添付書類の撤廃求めるデジタルファースト法案

 デジタルファースト法案とは、行政手続き申請における紙書類を取り除きインターネットで申請できるようにする法案で、対面原則・書面交付原則・押印原則・印紙原則の4原則の完全撤廃を図ることを目指している。そのために、行政機関同士の情報連携などによる添付書類を省略する「添付書類の撤廃」や、本人確認手法のデジタル化などを含めた「行政手続きのオンライン化の徹底」、デジタル化を実現するためのシステム整備などが盛り込まれている。

 今年6月に大阪で開催される「G20大阪サミット(20ヵ国・地域首脳会議)」の貿易・デジタル経済大臣会合(8~9日)では、「デジタル・ガバメント」が主要課題の一つとされる。議長国を務める日本がリーダーシップをとる必要があることからも、「デジタルファースト法案」の早期成立が求められている。

●スマートバリューにインパクトか

 デジタルファースト法案に関連した銘柄としては、電子政府の関連銘柄が挙げられる。政府系システムの開発では日立製作所 <6501> 、NEC <6701> 、富士通 <6702> 、NTTデータ <9613> 、野村総合研究所 <4307> などの大手に実績が多く、こうした企業にメリットがあろう。なかでも官公庁や自治体の情報システム開発で実績が多くあるほか、銀行間の決済ネットワークやクレジットカードなどの国内最大級のキャッシュレス決済ネットワークを開発・運営しているNTTデータには注目が必要だ。

 このほか、スマートバリュー <9417> にもインパクトがありそうだ。同社は500以上の自治体へ地域情報クラウドプラットフォーム「SMART L-Gov」(スマート・エルガブ)を提供し、生活に役立つ情報や緊急情報の提供、特定検診の予約受付のサポートなどを行っている。18年3月からは石川県加賀市と連携し、地域内サービスの認証を一元化しながら、連携する各サービスのデータを連携する「ブロックチェーンを活用したKYC(本人認証基盤)認証基盤」を構築しているところだ。

●本人確認で強み持つガイアクス

 また政府は、21年3月から原則すべての病院でマイナンバー カードを健康保険証として使えるようにするなど、カードの普及を通じて北欧諸国などに遅れるデジタル社会の加速を目指している。同カードの利用喚起などでデジタル・ガバメント化を推進する方針で、これに関連する銘柄にも注目したい。

 ITbookホールディングス <1447> [東証M]傘下のITbookも自治体向けのITコンサルティングやシステム開発に強みを持っている。同社ではマイナンバー導入支援で実績が多いが、多くの自治体がマイナンバー及びマイナンバーカードの活用フェーズに移るなか、さまざまな「お知らせ」や「電子申請」などへの活用支援にも注力している。

 また、ガイアックス <3775> [名証C]は、本人確認のプラットフォームを展開しているが、サイバートラスト(東京都港区)の「オンライン本人確認プラットフォームサービス」と連携することで、マイナンバーカードに格納された公的個人認証の電子証明書を用いて本人確認をできるようにした。マイナンバーカードの活用拡大の動きは同社など関連企業にとって追い風になろう。

 このほか、クロスキャット <2307> は、国税庁の確定申告書等作成コーナーのシステムや法務省の登記情報関連のシステムをはじめ、電子政府対応システムを多く手掛けており、 デジタル・ガバメント実現に関連して恩恵を受けそうだ。

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