【市況】【植木靖男の相場展望】 ─ 鯨幕相場に期待、9月は月足陽線か?
株式評論家 植木靖男
「鯨幕相場に期待、9月は月足陽線か?」
●イエレン発言を前に嵐の前の静けさ
嵐の前の静けさ。いうまでもなく世界の投資家が注目する米FRBイエレン議長の発言を控えた市場の動静である。
その発言の内容がはっきりするまで投資家はひたすら待ちの姿勢を強いられている。
その結果は事前には誰もわからない。そういえば、先般の英国のEU離脱を巡る国民投票の時も、その結果は誰にもわからず、ただじーっと結果が出るのを待った。
誰も結果が事前に全くわからない、というのは極端にいえば丁半博打となんら変わらない。丁と出るか半と出るか、世界の投資家が注視する姿は異常である。
知的ゲームであるはずの市場にとって誠に寂しい限りだ。
ところで、米利上げの議論に振り回される我が国の株式市場をどう読めばよいのか。
ごく目先的には8月26日の下げで売り優勢の動きに転じた可能性は大きい。果たしてこのことがイエレン議長の発言を先見したものかどうかは定かでない。それほど日本株が賢いとも思えない。たぶん、持ち高を減らし中立スタンスにしたのであろう。
●物色に異変、もはや円高には限界?
イエレン議長は慎重?な性格のようだ。思い切った決断は出せないのではないか。
東に中国に問題あり、といえばそれを気にする。西に英国EU離脱の悪影響を考えると、またそれを気にする。
いつになっても決断はできない。おそらく8月の米雇用統計(9月2日発表)を案ずれば、それまでは結果を出さないのではないか。
かくして、株価は嵐の前の静けさが続くのである。
とはいえ、そうした中で相場は徐々に、ある方向に傾斜していくのが鉄則である。
例えば、物色の方向にひとつの異変が生じている。8月に入って一段と円高が進むなか、これまで円高を忌避して市場人気を集めていた医薬品などの内需株の一角が崩落し始めた。逆に年前半動きが鈍かった国際優良株が、まだ部分的にしろ台頭をみせている。言い過ぎかもしれないが、こうした物色方向の変化からみても、もはや円高には限界がある、と株価はみているのではないか。
ところで、一時「鯨幕相場」なる語が流行った。鯨幕は葬儀に使われる幕だが、これに似て本年2月から月足で陰陽線が交互に現れている。
8月はちょうど陰線になる月だ。現実は残りあと3日。このままでは陰線になるが、逆にいえば9月は期待してもよさそうだ。
2016年8月26日 記
株探ニュース