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【特集】“不妊治療”市場規模「1000億円超」へ、関連株を追う <株探トップ特集>

富士製薬工業の富山工場

―1億総活躍プラン、助成金積み増し、保険解禁など後押し―

 政府は18日、一億総活躍社会の実現に向けた国民会議を開き、中長期計画「ニッポン一億総活躍プラン」をまとめた。2021年度までに国内総生産(GDP)を600兆円に増やすとの目標に向け、根源的な課題である少子化克服などに力を入れる。そのひとつが不妊治療の支援拡充で、関連企業にとってはビジネス機会が広がることになる。

●不妊に悩む夫婦は6組に1組

 政府は「希望出生率1.8」を実現するため、19年度までに全都道府県・政令指定都市・中核市に不妊専門相談センターを配置する方針。結婚年齢や妊娠・出産年齢の上昇や、医療技術の進歩により不妊治療を希望する人が増えていることが背景にあり、不妊治療への不安解消を図ることで出生率を引き上げたい考えだ。いまや不妊に悩む夫婦は6組に1組ともいわれ、日本産科婦人科学会によれば13年に国内の医療機関で約36万8000回の体外受精が行われている。

 ただ、不妊治療は心身への負担が軽くないうえ、費用は数十万円から数百万円と高額になりがち。例えば、体外受精で採卵から体外受精胚移植までを行う場合、1回当たり30万~40万円の費用がかかるとされる。

●助成金引き上げで治療を後押し

 こうした状況を踏まえ、厚生労働省は今年1月から費用の助成を拡充。初回助成の上限を15万円から30万円に倍増するとともに、男性不妊治療への助成金制度(精子を採取する手術を受けた場合に15万円を助成)も新設した。加えて、金融庁は4月から不妊治療の費用を保障する保険商品の発売を解禁しており、これら施策を通じて不妊治療を受ける人はさらに増加することが予想される。体外受精や顕微授精などの特定不妊治療にかかる費用を1回40万円として計算すると、それだけで市場規模は1472億円(=36.8万回×40万円)。そのほか人工授精や診療費をあわせると不妊産業の規模はさらに膨らむことになる。

●各社の取り組み

 プリマハム <2281> のグループ会社であるプライムテックは、マイクロマニピュレーションおよび受精・発生のプロ集団として活動している。同社が手掛ける次世代ピエゾマイクロマニピュレータ「PIEZO pmm4G」は、主に男性側不妊治療法としてヒト顕微授精市場向けに販売されている。

 メディビックグループ <2369> [東証M]は、ゲノム創薬ベンチャーから再生医療に軸足を移しつつある企業。子会社のアニマルステムセルは15年7月に、「再生医療技術を用いた不妊・繁殖障害の改善」に関する特許を出願し、新たな不妊治療法の確立や新規の細胞製剤開発などが期待されている。なお、メディビックG株は継続企業の前提に重要な疑義の注記があり、投資には注意を要する。

 綿半ホールディングス <3199> は、10年に不妊治療薬の原薬製造などを手掛けるミツバ貿易を買収した。原薬製造は、性腺刺激ホルモン剤であるHMGの粗原料を中国から輸入し、横浜市の製薬研究所内で精製して製薬会社に販売している。

 あすか製薬 <4514> は、婦人科系と泌尿器系に強みを持つ製薬企業。同社は不妊治療に使われる女性ホルモンのひとつである黄体ホルモン製剤「ルテウム膣用坐剤」の製造販売承認を16年3月に取得し、4月に発売。同剤は日本産科婦人科学会などから早期承認の要望書が提出されていたもので、今後の業績に大きく寄与する可能性がある。また、同社はJCRファーマ <4552> と共同で不妊症治療剤「AKP-501」の開発を進めている。

 富士製薬工業 <4554> は、急性期医療分野とともに女性医療分野に注力している製薬会社。排卵障害や体外受精のための排卵誘発に使用される不妊治療ホルモン剤やホルモン診断キットなどを手掛けており、13年には塩野義製薬 <4507> から婦人系製剤の一部を譲り受けラインアップの拡充を図った。16年2月には天然型黄体ホルモン製剤「ウトロゲスタン」を発売し現在、不妊領域の主力製品となっている。

 ミズホメディー <4595> [JQ]は体外診断用医薬品などを手掛けるメーカーで、妊娠検査薬や排卵日予測検査薬を取り扱っている。16年3月には、武田薬品工業 <4502> と妊娠および排卵日予測検査薬に関して包括的提携契約を結んだ。

 メニコン <7780> はコンタクトレンズが主力だが、ライフサイエンス事業部で生殖補助医療分野の製品開発を行っている。具体的には、妊娠しやすい身体作りをサポートするサプリメントや、微小流体技術を応用した運動良好精子選別装置などを手掛けている。

 ニチモウ <8091> は、子会社のニチモウバイオティックスが08年4月に、武庫川女子大学との共同研究でイソフラボンの不妊治療への有効性を発表。特許製法で作られたアグリコン型大豆イソフラボンを主成分とし、子宮環境を整えることで妊娠しやすい身体作りを支援するサプリメントを14年10月から販売している。


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