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【特集】「豪華列車」ニッポンを行く、鉄道各社“新収益源”へ <株探トップ特集>

TRAIN SUITE 四季島 外観イメージ

―ブーム到来の恩恵受ける企業は?―

 5月10日にJR東日本 <9020> が豪華寝台列車(クルーズトレイン)「TRAIN SUITE 四季島」の運転開始日を17年5月1日にすると発表した。クルーズトレインについては鉄道各社が相次ぎ導入を発表しているが、鉄道最大手であるJR東日本がサービス開始に動きだすことで、今後、クルーズトレインの本格的なブームが到来しそうだ。

●クルーズトレインを新収益源に

 鉄道各社がクルーズトレインの導入を活発化させている背景には、人口減少で中長期的に通勤客の増加が見込めないことや、新幹線とLCC(格安航空会社)との競争が激化していることなどがある。一方この数年、高齢者を中心に豪華客船などで、ゆったりと旅を楽しむニーズが増えている。また、日本を訪れる外国人観光客も高水準の状況が継続。これら国内外の観光客のニーズを取り込むことでクルーズトレインを新たな収益源にしたいという思惑があるようだ。

 クルーズトレインブームの先駆けとなったのは、JR九州が13年10月15日から運行を開始した「ななつ星in九州」。九州各地を列車で巡り、自然や温泉地、歴史や食などを楽しむ観光寝台列車で、1泊2日コースのスイートで約15万円~21万円(2人1室)という高価な価格設定ながら、販売開始と同時に即完売という人気が現在も続いている。和洋・新旧融合の国内最上級の洗練された車内空間を実現するなど車両には、最先端かつ最高級の鉄道技術を導入、国内では、首都圏や関西、海外からもアジアの富裕層中心に利用者は後を絶たない。

●ななつ星きっかけに各社導入へ

 「ななつ星in九州」の成功を契機に他の鉄道各社もクルーズトレインの導入へ向けて動きだしている。JR東日本では13年6月に観光立国推進の一環として、「TRAIN SUITE 四季島」の構想を発表。当初、運行開始は16年春以降としていたが、その後17年5月1日から開始することが正式に発表された。上野駅から日光を通過して北海道の登別まで運行するルートで、3泊4日コースと1泊2日コースを設定。先頭車(展望エリア付き動力車)2両、ラウンジ車とダイニング車各1両、客室6両(デラックススイート1両、スイート5両)の計10両編成で豪華な車両も話題を集めており、17年5月と6月の予約状況に関しては「大きな反響を頂いており、抽選になることはほぼ確実な状況」(JR東日本広報部)としている。

 一方、JR西日本 <9021> も15年3月に運行を終了した臨時寝台特急「トワイライトエクスプレス」の伝統を受け継ぐクルーズトレイン「TWILIGHT EXPRESS 瑞風(みずかぜ)」を17年春の運行開始で準備を進めている。豪華車両に加えてトワイライトエクスプレスの車内調理の伝統を受け継ぎつつ、食の権威として活躍する一流料理人が結集し、列車コンセプトである「美しい日本をホテルが走る~上質さの中に懐かしさを~」にふさわしいおもてなしも話題を集めている。

 また、JR系以外では近鉄グループホールディングス <9041> が13年3月から大阪難波駅、近鉄名古屋駅それぞれと三重県志摩市の賢島駅の間を結ぶ新型観光特急「しまかぜ」を運行している。水曜日を除く1日1往復は高い人気を維持しており、伊勢志摩サミット開催後は、一段と人気が高まることが予想される。

●車両各社にも注目

 クルーズトレインでは車両の開発を手掛ける企業も見逃せない。「ななつ星in九州」の開発では、日立製作所 <6501> が車両を、川崎重工業 <7012> が機関車部分の開発を、鉄道車両用アクティブサスペンションは新日鉄住金 <5401> が担当した。また、内装材は住江織物 <3501> が担当。ラウンジカーやダイニングカー、そしてDXスイート室などに織物・カーテン・カーペット・緞通などを納入し、近鉄の「しまかぜ」でも内装材が採用されている。同社は国会の赤じゅうたんも納入する名門繊維企業であることから、今後建造されるクルーズトレインでも受注する期待が高い。

 近鉄の「しまかぜ」を建造した近畿車両 <7122> は、北陸新幹線も担当するなどJR各社からの受注実績が豊富で、クルーズトレインでの活躍も期待される。


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