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2016年01月21日14時10分

【経済】「原油価格、オイルマネーの動向は?」 中東調査会・村上拓哉氏に聞きました! <直撃Q&A>

村上拓哉氏(中東調査会・研究員)

 原油価格の下落が止まらない。20日のNY原油先物市場で、指標油種のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)期近物の価格が、12年8ヵ月ぶりに1バレル=26ドル台へと下落した。原油価格の低下が世界同時株安の要因となっている。財政悪化を懸念した産油国による投資資金の引き上げが懸念されているためだ。そこで今回は、中東調査会・研究員の村上拓哉氏に、最近の中東情勢とあわせて、原油価格やオイルマネーの動向について聞いた。

●村上拓哉氏(中東調査会・研究員)

Q1 サウジアラビア、イランの国交断絶の背景と今後の見通しは?

 いわゆるサウジとイランの対立と今回の国交断絶は、分けて考えたい。国交断絶の直接の原因は、サウジ政府によるシーア派聖職者ニムル師の処刑と、それに反発したイラン市民によるサウジ大使館の襲撃にある。当然、イラン政府はサウジ大使館を守る義務があるにも拘わらずそれを怠り、サウジからの国交断絶に到ったものの、かなり偶発的だったといえる。

 サウジとイランの対立はスンニ派とシーア派の宗派対立とされているが、これは教義上の問題などではなく、それぞれが行っている外交や国内政策に反発を覚えて、シリア、イエメンなどでそれぞれ対立勢力を支援するような構図が数年続き、この1年間厳しさを増している背景がある。こうした対立の構図は、それぞれが原則論を主張するなかで、戦況も一進一退の状態にあり、解決の方向性は見いだせていない。

Q2 イランへの経済制裁が解除されたが、中東地域に対する米国、ロシアなど大国の仲介や支援のスタンスと今後の展望は?

 興味深いのは、今回の経済制裁解除に先立って行われた核協議では、一切他の要因は持ち込まないことが維持された点だ。例えば、2014年のウクライナ問題でクリミアを巡り対立が激化したときでも、米国、ロシアは核交渉では同じテーブルについたままだった。また、重要なのは長期間核交渉を続けてきたことで、米国がイランを十分交渉可能なパートナーとして認めていることだ。13年に穏健派のロウハニ大統領が誕生して以来、頻繁に外相会談を実施するなど、交渉しながら妥協点を見出せる相手になっている。

Q3 原油価格の下落が中東諸国に与える政治・経済面での影響は?

 現状、石油輸出国機構(OPEC)が全くまとまっていない。14年の夏までは原油価格は高止まりしていたため何の問題もなかったが。OPEC内でも、イランやベネズエラなどは減産調整して、原油価格を維持しようと主張している。一方、サウジをはじめクウェートなどの湾岸諸国は、そんなことをやっても意味がないとの主張する立場だ。サウジの言い分では、これまで生産割り当てや生産調整を本格的に実施してきたのはサウジだけだ。OPECの原油市場全体でのシェアは現状40%程度にまで縮小している上に、シェールオイルの開発が進んだことにより非OPEC諸国の余剰生産能力が高まっている。したがって、OPEC内で生産調整しても価格維持の効果が薄れてきている。

 例えば、OPECが減産で合意して価格が上昇すれば、採算が合うようになるシェールオイルの増産が始まりOPEC自体のシェアが縮小するだけというジレンマがある。こうした、価格下落のチキンレースのなかで、生き残れるのは、産油コストの低いサウジなどの湾岸諸国ということになる。供給過剰が続くなかで、世界レベルで備蓄量が増大しており、原油価格は当面上昇し難い状態にある。

Q4 原油価格低下や、国防費・テロ対策費の拡大がサウジアラビアなど湾岸諸国の経済(国家財政)に与える影響は?

 サウジの経済状況は、相当厳しいのではないか。これまで積み立ててきた国家の準備金が今後5年程度で底をつくのではとの見方も出ている。国内での燃料費への補助金削減や、消費に対する付加価値税の導入も検討されている。石油依存型経済から脱却し、財政の健全化を図るため、債券の発行や、世界最大の国営石油会社「サウジアラムコ」の株式上場を準備するなど資金調達の多角化を目指している。

Q5 サウジアラビア、アブダビ、クウェート、カタールなど中東の主なSWF(政府系ファンド)が世界の株式市場などから資金を引き上げているという見方があるが。

 まさに、原油価格の低迷によりサウジをはじめとした湾岸諸国の準備金は、程度の差こそあれ目減りを強いられていることは確か。財政悪化に対応するために、世界のさまざまな市場から投資資金を引き上げているのは事実で、今後も続くことになりそうだ。

(聞き手・冨田康夫)

<プロフィール>
公益財団法人中東調査会研究員。2009年9月、桜美林大学大学院国際研究科博士前期過程修了。クウェート大学留学、在オマーン日本国大使館勤務を経て、2014年4月より現職。専門は湾岸地域の安全保障・国際関係論、現代オマーン政治。著書に「湾岸地域における新たな安全保障秩序の模索――GCC諸国の安全保障政策の軍事化と機能的協力の進展――」『国際安全保障』第43巻第3号(2015年12月)など。

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