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【特集】宇徳 Research Memo(3):重量物輸送や大型プラントの輸送と建設に特色


■会社概要

(4)企業特徴

a)重量物輸送の一貫作業サービスに強み
宇徳<9358>の特色は、長期間にわたって培ってきた技術とノウハウによる重量物輸送や大型プラントの輸送と建設にある。港湾運送事業において広範囲に多様な形態のサービスを提供できる国内でも数少ない会社の1つだが、重量物取扱いの技術を生かした重量物・長尺物の荷役や特殊機材を駆使したRO/RO船のオペレーションについては国内外において他社に技術支援サービスを提供する水準を誇っている。港湾、物流、プラントの総合力により、重量貨物の搬出、陸上輸送、はしけ輸送、専門船への積込、現地での機器輸送・据付までをすべて行う「直営一貫作業サービス」に力を発揮する。

○保有機器
重量物の運送には、特殊車輌やリフトが欠かせない。同社は、1983年よりドイツ製の特殊車輌「スーパーキャリア」を導入しており、第6世代機を含め計26台を保有している。

○発電設備の輸送
スーパーキャリアなどの特殊車輌は、火力発電所の建設などに力を発揮する。同社は、30年以上にわたり京浜・京葉地区の湾岸火力発電所の新設・増設工事に携わってきており、環境にやさしい最新鋭の火力発電所の建設に当たっても輸送・据付能力が活かされる。

○橋梁の架替工事

特殊機材は、橋梁の架替などでも活躍する。あらかじめ組立てられた橋桁をスーパーキャリアにより所定位置まで運搬し、ミリ単位の調整を行いながら据付し、不要となった既設の橋桁をスーパーキャリアやスーパーテーブルリフトを用いて一体で撤去する。高速道路を夜間通行止めにし、数時間内に終了させなければならない工事では、事前に綿密な計画を立て、それを実現するためのオペレーション訓練を重ねて行う。2020年に開催される東京五輪に向け、交通インフラの工事における活躍の機会が期待されている。

○製鉄設備の直営一貫作業サービス
製鉄所の主要設備据付工事なども手掛けている。過去には、電炉メーカーの設備投資に関連して、連続鋳造設備など主要設備が海外から輸入されるため、輸入通関と国内輸送、構内の据付工事など直営一貫作業サービスを提供できる同社が元請企業となった。

日本の製造業の設備の平均使用期間が15年を超えており、企業業績の回復とともに、国際競争力維持のため、一部に省力化・自動化のための大幅な設備更新の機運が出てきている。

○風力発電プラント
風力発電プラントでも実績がある。三井造船<7003>が茨城県沖の外洋で国内初の本格的な風力発電設備を建設する際、杭をベトナムから、タワー部を中国から輸入した。同社は商船三井(プラント輸送)と連携して海上輸送やクレーン荷受作業を行った。風車の陸上輸送も行っている。輸送する機器は大きく分けてアンカー(基礎)/タワー(支柱)/ナセル(発電機)/ブレード(羽)となり、陸上輸送をスムーズに行うため、可能な限り建設サイトの近隣まで海上輸送を優先する計画を作成した。アンカーは中国から出荷された。

再生可能エネルギーによる売電の固定価格買取制度は、2012年7月になって風力発電にも適用された。長期的な収益性の確保が見通せることになったことから、大型の風力発電所の計画が動き始めた。大規模プロジェクトは、通常運転開始まで3年程度をかかることから、2016年頃に稼働が本格化すると見られている。また、2014年度に、洋上風力にも買取価格が導入された。2015年度の1kWh当たりの買取価格(税抜)は、太陽光の10kW以上(非住宅用)で29円(2015年7月以降は27円)に対し、風力は20kW以上が22円、洋上風力は36円と太陽光よりも高い水準にある。太陽光、風力とも買取価格の保証期間は20年間となっている。

○海外事業
同社のシンガポールにあるエンジリアリング子会社であるUTOC ENGINEERING PTE. LTD.(以下、UTOCエンジ)は、2010年4月にSHELL社 の世界最大規模の石油化学コンビナートの中核を担うエチレンプラントを完成させた。その年産能力は、80万トンになる。UTOCエンジは、 “心臓部” に当たる「分解炉」10基の組立と、その内部及び周辺配管を含む大型配管工事のほか、隣接する「ブタジエンプラント」の鉄骨組立と機器据付工事を直接受注し、3年弱の工期で完成させた。同子会社は、30社以上の主要業者が参加したプロジェクトにおいて、月間最優秀会社に3度(業者全体で2位)、最優秀品質保証会社に4度(同1位)に選ばれるなど、SHELL社より極めて高い評価を得た。

2013年8月にはシンガポールに統括会社を新設し、東南アジア地域での種プラント建設・定修工事の受注拡大を目指す。

b)商船三井のグループ会社
海運大手の商船三井は、同社株の31%強を所有していたが、2006年2月にTOB(株式公開買い付け)を実施することで持ち株比率を50%超に高めた。現在の持ち株比率は66%となっている。同社を子会社化した目的は、中核事業の外航海運を基軸とする強固な企業グループ経営の促進を図るため。同社がプラントなどの重量物輸送で実績があり、海上輸送後の陸運から機器の据付まで手掛けていることから、同社をグループ企業とすることで世界的に活発な資源開発事業へのプラント輸送需要などを開拓する。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

《HN》

 提供:フィスコ

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