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【市況】【鈴木一之の相場展望】 「原油安のプラス面」


●原油安にも二面性

 2015年相場が始まって早くも最初の1ヵ月間が経過しようとしている。大発会から大幅安に見舞われた今年の幕開けは、発会安の年のジンクスとして昨年来の難しい局面が続いている。今年も一点の曇りのない晴れやかな青空のような地合いの好転は、そう簡単には望めそうにないムードである。

 株式市場に影を落としているのは、言うまでもなく原油価格の下落である。資源大国・ロシアを中心に産油国経済へのダメージの大きさ、シェールガス開発業者や資源開発企業の収益悪化が今もくすぶり続ける。

 日本の総合商社を代表格として、掘削設備や鉱山権益の減損処理を通じた企業会計上の下押し圧力、それらの企業が発行する格付けの低い社債のクレジットリスクなど、心配のタネが尽きることはない。リーマン・ショックの直後に世界中で発生したデリバティブ市場の大混乱の記憶がまだ生々しいだけに、人々の疑心暗鬼は深まるばかりである。

 しかし、原油市況の価格反転はまだ先の話として、下げ止まり感が見えれば見方も変わってくる。コインの裏表のように何ごとにも二面性がある。「石油の海に浮かぶ繁栄」と言われる北半球の先進国経済圏はもちろんのこと、タイ、フィリピン、シンガポール、そして中国のようにアジアの新興国には原油価格の下落はプラスの効果をもたらすことになるはずだ。

 今週明らかになったカンファレンス・ボード調べによる米国の1月の消費者信頼感指数は、指数が102.9まで上昇し2007年8月以来の高水準となった。サブプライム・ローン問題の発端の時期にまで遡るほどの好調さである。

 クリスマス商戦が思いのほか不調に終わったとされる米国の消費動向は、ガソリン価格の下落によって想像以上の恩恵を受けていると推察される。

●動意づく原油安メリット株

 世界銀行に続いてIMFも今年の世界経済見通しを下方修正したばかりだが、日本と世界は現在の原油価格の大幅な下落というプラスの側面をもう少し前向きに、積極的に評価してよいのではないだろうか。

 株式市場では、すでに原油安のプラス効果は株価上にはっきりと現われている。日通 <9062> 、セイノーHD <9076> などトラック輸送を手掛ける物流各社の株価が大きく上昇しており、空輸ではフォワーダーの近鉄エクス <9375> 、ANAHD <9202> 、JAL <9201> の株価も堅調さを保持している。

 アスファルトを多量に消費する道路株では前田道 <1883> 、大林道 <1896> が物色され、石油化学でも製品価格の値下げ圧力をはね飛ばして東ソー <4042> 、旭化成 <3407> が動意づいている。

 企業サイドとしては、春の賃上げ交渉や株主総会での増配要求などを控えて、不用意に原油安のメリットを主張することは避けたいところであろうが、円安による原料調達価格の上昇は原油安によってかなり相殺することができるはずである。

 ここから本格化する3月期決算企業の収益動向を横目で見ながら、前述の銘柄群に加えて信越化 <4063> 、神戸鋼 <5406> 、ダイソー <4046> 、ニチレキ <5011> 、鴻池運輸 <9025> に注目している。

2015年1月28日 記

(「チャートブック週足集」No.2010より転載)
(「株探」編集部)

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