【市況】【杉村富生の短期相場観測】
「円安・株高の長期トレンドは不変!」
●年初以来、大荒れの展開だが…
年初以来、株式市場は大荒れ(波乱)の展開となっている。しかし、円安・株高の長期トレンドは不変である。
したがって、この局面においていたずらに、弱気になる必要はまったくない。むしろ、安いところは絶好の買い場となろう。
確かに、マーケットでは相変わらず、原油価格の下落(逆オイル・ショック)、ギリシャ問題(ユーロ不安の再燃)、投資資金がリスク回避の動き(円高圧力)、スイス・フラン騒動(1ユーロ=1.2スイスフランの介入目標の上限を撤廃)、テロの恐怖(イスラム国の台頭)などをイヤ気している。
だが、これらの外部要因に振り回されるのはいかがなものか。
原油価格の下落については逆に、78%の国・地域(GDPベース)がメリットを受ける。特に、資源少国の日本(鉱物性燃料の年間輸入額は28兆円)には大きな恩恵があろう。
●セーフティ・ネットは万全!
この結果、円安効果もあって、2014年度の企業業績は上ブレが確実な情勢となっている。
ギリシャ問題については「またか」といった感覚である。それに、この数年の間に、ESM(欧州安定メカニズム)、OMT(問題国の国債購入)などセーフティ・ネットが構築されている。ECBはあらゆる策を準備している。ギリシャ問題が他の南欧諸国に波及するリスクは乏しいと思う。
スイス・フラン騒動については説明を要するが、これは波乱の始まりではない。むしろ、収束を意味する出来事である。
2010年10月にさかのぼるが、スイスの金融当局はクレディ・スイス、UBSの2行に対し、通常の2倍の19%の自己資本比率の確保を求めた。リーマン・ショックのあとのこと。
恐らく、スイスのGDPを上回る総資産を持つこの2行が経営危機に陥った場合、スイスは救えないし、万一のケースではスイスが破綻する、と判断したのだろう。
●スイスの混乱は「始まり」ではなく「終わり」!
この判断は正しい。ただ、スイス・フランキャリートレードの猛烈な巻き戻しが起こった。国内300行に対するバーゼルⅢの適用もあった。資金の国内回帰→スイス・フランの急騰である。
このため、スイスの金融当局は徹底した為替介入(ユーロ買い、スイス・フラン売り)を行った。今回の措置はそれが終わったことを意味する。
1月16日に、日経平均株価が瞬間、516円安と急落したのはこれを悪材料と受け止めたためだが、ヘッジファンドの売り仕掛けがあったのだろう。
しかし、昨今のヘッジファンドは曲がり屋である。兜町には曲がり屋に向かえ!との教えがある。結局、彼らのショート・ポジションは踏み上げられるのではないか。
なにしろ、曲がり屋である。著名なPファンドは2014年のパフォーマンスが何と、マイナス36%だったという。どうすればこんな損失を計上できるのだろうか。
●日銀とGPIFが下値を買う!
まあ、彼らは地政学上のリスク(原油価格の上昇)、アメリカ(FRB)のQE3終了(金利上昇→債券価格の下落)の結果を読み違えたのだろう。
日本の株式市場は日銀のETF買いが継続しているし、GPIFの出動もある。いかに、資金力を有するヘッジファンドといえども売り崩すのは難しいと考える。
一方、物色面では元気なファナック <6954> 、日電産 <6594> 、JR東海 <9022> 、日東電 <6988> などを個別に攻める作戦が有効と判断する。
小物ではアクロディア <3823> [東証M]、デジデザイン <4764> [JQG]、ファーマF <2929> [東証M]、オプティム <3694> [東証M]などに妙味があろう。
2015年1月21日 記
(「チャートブック日足集」No.1555より転載)
(「株探」編集部)