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6461日本ピストンリング

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日ピストン Research Memo(3):世界の主要自動車メーカーに幅広く供給


■事業概要

1. 事業概要
セグメント区分は自動車関連製品事業、舶用・その他の製品事業、その他(商品販売など)としている。また、セグメント区分とは別に、長期ビジョン・中期経営計画の目標達成に向けて、自動車エンジン事業(既存事業)と非自動車エンジン事業(コア技術を応用した新製品事業)に区分し、自動車エンジン事業の収益力強化と非自動車エンジン事業の育成・確立を推進している。主要製品は、自動車エンジンの重要機能部品であるピストンリング、バルブシート、組立式焼結カムシャフトなどで、ピストンリングは世界シェアトップ5、バルブシートは日系自動車メーカー向けでトップシェアを誇る。

セグメント別売上高については、自動車関連製品事業が売上高の大半を占めている※。また、製品別売上高構成比については、おおむねピストンリングが5割、バルブシートが2割を占めており、過去6期間で大きな変動はない。また、2022年3月期の地域別売上高構成比は日本が38.7%、海外が61.3%(アジア27.4%、ヨーロッパ14.1%、北米10.4%、その他の地域9.5%)であった。

※ コロナ禍の影響により、特に2021年3月期の自動車生産台数が世界的に落ち込んだため、日本ピストンリング<6461>の売上高についても同様に落ち込んでいる。


2. 特徴・強み
主要製品であるピストンリングやバルブシートは自動車エンジン性能に関わる重要機能部品であり、その耐熱性や耐摩耗性の向上によってエンジン燃費効率向上にも貢献している。

ピストンリングの主な役割には、エンジン燃焼室で燃焼ガスの漏れを封じるシール機能、潤滑油(エンジンオイル)のコントロール機能、燃焼熱を逃がす伝熱機能、ピストンの摩耗を抑えるサポート機能などがある。300℃という過酷な条件の燃焼室内で使用され、エンジン性能に直接関わる重要機能部品である。このため、高品質のピストンリングを供給できるメーカーは、世界でも同社を含む5社(米国1社、独1社、日本3社)に実質的に限定されている。技術動向としては、低フリクション化や耐摩耗性向上、高性能・高品質の材料と表面処理などが求められ、同社は会社設立以来約90年の歴史のなかで培ってきた高度な精密加工・表面処理・材料・粉末冶金技術などに強みを持っている。

バルブシートは、吸気弁(バルブ)及び排気弁の着座として使用され、燃焼室の気密性を保つ役割を果たしている。高温で叩かれても劣化しない耐久性や、燃焼ガスを確実にシールする高い気密性が求められるため、耐熱・耐摩耗性の高い材料として焼結合金が使用される。同社は焼結合金の粉末配合のノウハウを強みとして、日系自動車メーカー向けでは約4割とトップシェアを誇っている。

3. 主要取引先
同社は、トヨタ自動車<7203>をはじめとする世界の主要な自動車メーカーに幅広く製品を供給しており、売上高の10%を超える特定の自動車メーカーに依存していないことが特徴だ。また、欧米の大手自動車メーカーや中国のローカル自動車メーカーへの供給も増加基調である。

4. 製造拠点
製造拠点は、同社の栃木工場(メディカルデバイスセンター、野木分工場を含む)のほか、国内製造子会社の(株)日ピス福島製造所、(株)日ピス岩手(一関、千厩)、海外製造子会社のNPR of America, Inc.(NOA、米国)、日環汽車零部件製造(儀征)有限公司(NAMY、中国)、儀征日環亜新科粉末冶金製造有限公司(NAPM、中国)、PT. NT Piston Ring Indonesia(NTRI、インドネシア)、PT. NPR Manufacturing Indonesia(NPMI、インドネシア)、SIAM NPR Co., Ltd.(SNPR、タイ)、NPR Auto Parts Manufacturing India Pvt. Ltd.(NPRI、インド)に展開している。

また海外の販売拠点としては、米国NOA、中国NAMY、タイSNPR、インドNPRIの営業所のほか、販売子会社のNPR of Europe GmbH.(NOE、ドイツ)、NPR Singapore Pte.Ltd.(NPRS、シンガポール)、E.A.Associates Sdn.Bhd(EAA、マレーシア)、及び韓国に事務所を展開している。

5. 新製品事業
同社では、非自動車エンジン分野の売上拡大に向けて、非自動車エンジン事業として産業機器分野や医療分野を中心に新製品事業を推進している。

産業機器分野では、自動車の電動パワーステアリングやスカラーロボットのボールねじ循環駒として、産業機器向けメタモールド(金属粉末射出成形部品)の拡販を推進している。さらに形状自由度や材料自由度の優位性を生かして、CASE※関連部品、ロボット、センサー、医療分野へ展開する方針である。

※ Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared&Services(シェアリングとサービス)、Electric(電気自動車)の頭文字をとった造語。


医療分野では、2014年10月に歯科インプラント事業を譲り受けて医療機器製造販売業許可を取得した。これを生かして2020年9月には放射線科医療機器の輸入販売を開始、2021年4月には口腔内スキャナーの販売開始のほか、「NiFreeT」の具体的案件に向けた技術検討も開始した。さらに2022年1月には、救急・災害用医療機器専門商社のノルメカエイシアを子会社化した(詳細は後述)。

6. リスク要因・収益特性
リスク要因としては、景気変動・感染症・災害・その他の影響による自動車生産台数の減少がある。ただしグローバル自動車市場は新興国における自動車普及の進展などで中期的に拡大基調であり、同社にとっては当面の自動車生産台数の増減よりも、世界的な脱炭素社会の流れを背景とする中長期的な環境規制の影響(エンジンの低燃費化、ガソリンエンジンの減少、新たなクリーン燃料エンジン、自動車のEV化など)がリスク要因となる。同社はEV化が一気に進む可能性は低いと想定し、ガソリンエンジンのさらなる低燃費化や新たなクリーン燃料エンジンへの対応など自動車エンジンの進化に向けた技術開発を推進するとともに、徐々に進むEV化の流れも踏まえて、新製品事業で非自動車エンジン向け売上の拡大も推進する方針だ。

なお競合リスクについては、ピストンリングやバルブシートはグローバルで高品質製品を供給できるメーカーが限られているため、自動車メーカーの統合やグループ化が進展するなかでもシェア変動が比較的小さい市場構造となっている。また、世界の主要自動車メーカーに幅広く供給しているため、特定の自動車メーカーに対する依存リスクも小さい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)

《YM》

 提供:フィスコ

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