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3762 テクマトリックス

東証P
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時価総額 871億円
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テクマト Research Memo(9):2024年3月期は増収増益を予想。情報基盤事業の収益拡大続く(1)


■今後の見通し

1. 2024年3月期の業績見通し
テクマトリックス<3762>の2024年3月期の連結業績は、売上収益で前期比7.7%増の49,500百万円、営業利益で同4.0%増の5,300百万円、税引前利益で同4.4%増の5,290百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益で同8.8%増の3,210百万円と増収増益が続く見通し。医療システム事業がクラウドシフトの進行により増収減益を見込んでいる。また、情報基盤事業の収益拡大が続くほか、アプリケーション・サービス事業も不採算事業がなくなり黒字転換する見通しとなっている。前期に計上した本社移転関連費用339百万円がなくなるものの、2024年3月期はPSPの退職給付制度改定及びリフレッシュ休暇制度の適用等(人事制度の統一)に伴う一時費用の計上や、EdTech事業、ネットワークセキュリティ事業「NEO」(クラウドネイティブ活用ソリューション)等の新規事業への投資を計画している。全体的には保守的な印象で、今後市場環境が大きく変化するようなことがなければ上振れ余地があると弊社では見ている。

(1) 情報基盤事業
情報基盤事業の売上収益は前期比10.1%増の32,260百万円、営業利益は同8.8%増の3,400百万円を見込んでいる。売上収益は豊富な受注残に加えて、新規受注についてもクラウド型セキュリティ対策製品を中心に好調が続いていることから計画を上回る可能性は十分あると弊社では見ている。営業利益は、円安による仕入原価高の影響が残存していることや、新規事業である「テクマトリックスNEO」への投資継続、社内経費の配賦ルール変更※などがマイナス要因となる。一方で、増収による売上総利益の増加、並びに2023年3月期に発生した移転関連費用の消滅が増益要因となる。営業利益率は前期の10.7%から10.5%に低下する見込みだが、為替の動向が不透明なことや、今後契約更新を迎える大型案件の価格交渉が流動的なこともあり、保守的な利益計画になっているものと見られる。前述したとおり2023年3月期第4四半期の営業利益率(四半期ベース)は前年同期を上回る水準に回復していることから、為替が急激に円安になるようなことがなければ2024年3月期の利益率は前期を上回る可能性も十分にある。

※従来は、家賃等の共通費用について従業員数で各事業部に比例按分していたが、使用面積等を厳密に計算して各事業セグメントに配分することにした。影響額については1億円程度と見られる。


2022年7月より提供を開始した新規事業の「テクマトリックスNEO」は、クラウドネイティブを活用してシステム構築やセキュリティ対策等を行いたい企業に対して、製品の導入から開発支援、運用保守、セキュリティ対策、担当者のトレーニングまでワンストップで提供するソリューションである。テストマーケティングを行ってきたが、2024年3月期から本格的に営業展開する予定だ。当面の業績への影響は軽微と見られるが、企業の情報システムがクラウドネイティブな時代になることを見据えて、長期的な視点で同事業を育成する考えで、500社への提供を目標にしている。投資額としては年間数千万円程度のペースが続く見通しだ。そのほか、海外有力ベンダーの先進的なサービスを発掘し、情報セキュリティ対策に対する多様かつ高度なニーズに応える方針だ。

(2) アプリケーション・サービス事業
アプリケーション・サービス事業の売上収益は前期比7.5%増の7,850百万円、営業利益は520百万円(前期は20百万円の損失)となる見通し。売上収益についてはCRM分野、ソフトウェア品質保証分野、教育分野におけるサブスクリプション課金の積み上がりにより増収を見込む。営業利益は増収効果に加えて前期に発生した移転関連の費用が消滅すること、ビジネスソリューション分野における不採算案件の収束による損益改善効果、教育分野の赤字縮小(前期に一部前倒しで投資を実施)、社内経費配賦ルールの変更が増益要因となる。四半期ベースの営業利益では2023年3月期第4四半期に144百万円と4四半期ぶりに黒字に転換しており、計画達成の蓋然性は高いと思われる。

a) CRM分野
CRM分野では国内でのサブスクリプション課金の積み上げに加えて、東南アジア市場での展開を加速する。同社は2018年にタイに駐在員事務所を開設し、ASEAN市場での事業拡大を進めてきたが、2023年4月にさらなる事業拡大を企図し、現地法人TechMatrix Asia Co.,Ltd.を設立した。同子会社の設立により、従来以上に積極的な販売・マーケティング活動を行い、業務提携先のWISESIGHT (THAILAND) CO.,LTD (ソーシャルメディア分析大手)やChoco Card Enterprise Co., Ltd.(Customer Data Platform大手)との協業を推進する。ASEAN市場での顧客は、日系企業と現地企業で半々程度となっており、大型商談も進行中だ。同子会社については設立4年目で黒字化を目標にしている。

b)ソフトウェア品質保証分野
組込みソフトウェア開発向けテストツールを中心にサブスクリプション課金が積み上がり、売上収益は堅調に推移する見通し。2023年5月に、新製品としてSecure Code Warrior Pty Ltd.(豪州)が提供するセキュアコーディング学習プラットフォーム「Secure Code Warrior」の国内総販売代理店契約を取得し、販売を開始した。サイバー攻撃の端緒となっているソフトウェアのセキュリティ脆弱性をソースコードから可能な限り排除するため、セキュアコーディングが注目されているが、そのスキルの習得と向上を目的とした様々なコンテンツを備えたラーニングプラットフォームである。「Secure Code Warrior」は高いセキュリティが求められるIT、金融、製造業、政府機関など世界で450以上の企業や組織で利用されており、日本においてもこれら関連企業や公的機関において導入が見込まれ、主力製品の1つに育つものと期待される。

c)ビジネスソリューション分野
ビジネスソリューション分野のうち、同社については不採算案件が前期で収束したことにより、順調な立ち上がりとなった。子会社のカサレアルは引き続き技術者向け新人研修が好調に推移する見通し。2023年3月期に苦戦したアレクシアフィンテックについては、金融機関向けリスク管理ソリューションの低迷により2024年3月期も計画を保守的に立てているが、システムソリューションの機能を細分化して販売(シンジケートローン管理やキャッシュフロー管理等)する新たな取り組みも開始しており、収益回復を目指す。

d) 教育分野
教育分野では先進的な教育理念を持つ私立学校を中心に導入提案を進めるほか、自治体ごとに入札によってベンダーが決定する公立学校への拡販にも注力する。公立学校は基本的には自治体がコストを負担するため、私立学校と比べてID当たり単価は低くなるが、落札すれば当該自治体の公立学校に一斉に導入されるため、ID数の増加により売上収益の拡大につながる。そのため同社は公立学校も重点市場と位置付けている。

新たな取り組みとして2023年1月に(株)教育と探究社と資本業務提携を締結し※、協業することを発表した。教育と探究社は、全国の中学校・高校向けに「主体的・対話的で深い学び」が得られる探求型のキャリア教育プログラムを提供しており、同プログラムと同社の教育機関向けクラウドサービス「ツムギノ」を合わせて提案していくことで差別化を図り、導入校数の拡大を図る。

※教育と探究社の株式を11.76%取得した(約2億円の出資)。教育と探究社は2005 年より、全国の中学・高校に「クエストエデュケーション」という探究型のキャリア教育プログラムを提供しており、2022年度は約 320 校に導入され、累計約 36 万人の生徒が受講している。実在する企業や社会課題、夢を成し遂げた先人たちなどを題材に、正規の授業の時間の中で正解のない問いに向き合うことで、生徒の主体性、創造性を育むことを目的としたプログラムとなっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《YI》

 提供:フィスコ

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