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2933 紀文食品

東証P
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前日比
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100株
PER PBR 利回り 信用倍率
9.7 1.47 1.65 10.74
時価総額 276億円
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紀文食品 Research Memo(1):価格改定と業務効率化で業績は回復傾向、海外市場への進出による事業成長を促進


■要約

紀文食品<2933>は水産練り製品、惣菜類、水産珍味類などの食品製造販売および食品の仕入れ販売を行う食品加工メーカーである。紀文グループとして、株式会社紀文食品、連結子会社14社(国内7社、海外7社)、非連結子会社(国内1社)、持分法適用関連会社3社(国内1社、海外2社)で構成され、事業規模は国内最大手である。事業セグメントは、「国内食品事業」「海外食品事業」「食品関連事業」で構成されている。「革新と挑戦と夢」を経営理念に「食を通じて美味しさと楽しさを提供し、お客様の明るく健康な生活に貢献する会社」をビジョンに、食に関する幅広い事業を展開している。同社は「はんぺん」「かまぼこ」「ちくわ」といった多数の既存商品に加え、「品質衛生管理」をベースに「タンパク加工技術」と「お客様志向のマーケティング」を融合させ、健康維持や多様化するライフスタイルに合った高付加価値製品を開発して、顧客満足度の高い新製品を提供している。創業85年目を迎え、一般消費者の商品認知度も高く、主力商品である水産練り製品の「はんぺん」「ちくわ」、惣菜の「餃子」「糖質0g麺」、お正月製品の「かまぼこ」など、家庭の食卓に馴染みの深い商品が多い。創業以来の商品変遷は水産練り製品を主として惣菜まで手掛けており、全国展開により商品にブランド価値がついている。また、マーケティングから商品開発、量産、製造、販売のサプライチェーンの構築を一気通貫で自社で行える体制のため、顧客との距離感が近く、顧客ニーズにあった商品を提供することが可能である。同時に海外展開を進めており、新市場でのマーケットシェア拡大、マーケットニーズに合った商品の開発、原材料の調達先の開拓を進めるなど、事業拡大に注力している。

1. 2023年3月期第2四半期累計の業績概要
2023年3月期第2四半期累計(2022年4月-9月)の連結業績は、売上高で前年同期比10.0%増の46,788百万円、営業利益で-786百万円、経常利益は-749百万円、親会社株主に帰属する純利益は-1,332百万円と増収減益となった。国内食品事業、海外食品事業、食品関連事業の3セグメント全てで売上を伸ばし、4,241百万円の増収となった。セグメント別にみると、国内食品事業の売上高は原材料価格の高騰とエネルギー価格上昇により2度の価格改定を行いながら、商事部門の業績が好調に進展したことで、前年同期比6.7%増の31,231百万円となった。また、海外食品事業の売上高が同46.3%増の6,898百万円と大幅に伸長し増収に貢献した。一方、利益は各段階損益で損失を計上した。主な要因として、想定された以上の電力・燃料などの上昇によるエネルギー価格上昇と原材料価格の高騰の影響を受けたためである。なかでも、ロシアのウクライナ侵攻などによる、原材料価格の高騰が1,345百万円の費用増となり最も大きな要因となった。第3四半期以降は、経済活動の正常化が進むと想定されることと、同社はコスト上昇分を見込んだ事業活動を行う方針である。また、業務の改善・効率化を進めるなどの対応をすることで、収益構造の強化に取り組んでいく。

2. 2023年3月期の業績見通し
2023年3月期の業績見通しは売上高104,052百万円、営業利益3,831百万円、経常利益3,319百万円、親会社に帰属する当期純利益は2,192百万円と増収増益を見込んでいる。同社は第3四半期から第4四半期にかけての売上の構成比が2022年3月期では57.1%、営業利益が95.2%を占める、下期に大半の利益が上がる季節性のあるビジネスモデルである。2023年3月期も前期の業績進捗を見ながら事業を展開し、国内食品事業で秋冬商戦を中心に季節性の高い商品カテゴリ、正月商戦でのおせち商品セットなどで拡販を図る方針となっている。海外食品事業では上期から売上好調である主力商品である「水産練り製品」「Healthy Noodle(糖質0g麺)」で小売店向けの既存チャネルへの着実な販売展開を行い、売上を積み上げる。また、農産物などの仕入れ商品を含め、新しいマーケットに向けたマーケティングを行い新規顧客の獲得を行うことで、売上高を拡大していく。食品関連事業では、回復基調である百貨店や駅ビル、外食産業向けの物流増加を見込み、売上の積上げを行い対応を進めていく。共同配送・専用センターの両事業とも配送効率と業務効率を両立させつつ改善を継続し収益の強化に努める。

3. 中長期の成長戦略
「中期経営計画2023」において2027年3月期に「持続的に成長できる強固な企業体質へ」を掲げ、海外売上比率15%、営業利益率5.0%、自己資本比率40%を目標としている。2024年3月期は「成長性と収益性の基盤づくり」と位置付けており、海外売上比率13%、営業利益率4.2%、自己資本比率30%を計画目標としている。基本戦略は収益性向上・財務体質改善による「持続的成長サイクルの確立」である。従来の経営方針である「おいしさと楽しさを「タンパク加工技術」と「品質衛生管理技術」の融合により実現し、お客様の満足度を向上し続けます」「食に関する幅広い事業展開により、社会の発展と豊かなライフスタイルの確立に貢献するグローバルな企業グループを目指します」を取り組みの方向性に据え、新商品の開発、既存事業の拡大、海外拠点の確立、新規商品の開発と収益化、および全社的な業務改善と効率化に取り組んでいく。また、同社はサステナビリティへの取り組みも経営の重要課題として認識しており、代表取締役社長の堤裕氏をトップに置いたサステナビリティ委員会を2021年9月に発足させ課題解決に取り組んでいる。グローバル企業がサステナビリティレポートを公表しているなかで、同社もその国際基準にかなった経営基盤の整備を進める。2022年8月に同社グループの国内食品事業セグメントを対象として、ガバナンス・戦略・リスク管理の3項目についてTCFD※提言に基づいた分析検討を行い、その内容を開示している。

※TCFDとは「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の略称で、2015年12月に金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示及び気候変動への金融機関の対応を検討するために設立された。気候変動に関する財務情報開示を積極的に進めていくという趣旨に賛同する機関等を公表している。日本では2022年4月から一部の上場企業で、主要国の金融当局が立ち上げた「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に基づく気候変動リスクの情報開示が実質的に義務づけられる。


■Key Points
・2023年3月期第2四半期は増収減益となり、通期では当初計画通り増収増益の見通し
・2024年3月期は成長性と収益性の基盤づくりを進め、財務体質の改善、収益性の向上への基礎作りに取り組む
・次期中期経営計画の最終年度2027年3月期に向けて、国内食品事業の収益改善、海外食品事業の拡大により事業拡大を続け、連結営業利益4,593百万円を目指す

(執筆:フィスコ客員アナリスト 石灰達夫)

《SI》

 提供:フィスコ

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