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【市況】モディ再選と対中関係【フィスコ・コラム】


有権者数9億7000万人という世界最大の国政選挙、インド総選挙は与党が優勢と伝えられています。モディ政権が「3期目」に突入した場合、領土問題やアジア地域での影響力をめぐり中国に対し強硬姿勢に傾き、両国の対立が激化する可能性が指摘されています。


インドで5年に1度の総選挙が4月から始まり、現時点では与党インド人民党(BJP)の勝利が織り込まれつつあります。結果が判明するのは6月4日。経済成長の加速で、モディ首相の支持基盤はさらに強固になる見通しです。国際通貨基金(IMF)は同国の2024年の経済成長率を+6.5%から+6.8%に上方修正。過去最高値圏で推移する株価指数SENSEXは当面、上昇基調を維持しそうです。


インド市場は外交に左右されやすく、再選を狙うモディ政権にとっての重要課題の1つ。特に、対中政策が注目されています。領土問題やアジア地域での影響力拡大をめぐり、両国は国境紛争を通じ緊張を高めてきた経緯があります。再選後のモディ氏は国内のタカ派勢力にアピールしようと、中国に対し強硬姿勢を取る可能性が高く、地域の安定や安全保障に打撃を与える可能性があります。


両国は未解決の領土問題を抱えており、国境付近に配備した兵士による紛争が度々起きています。2017年と2020年には、実際に武力衝突が発生し死傷者が出るなど深刻な事態となりました。国境問題については、なお警戒は和らいでいません。また、インドは中国の海洋進出にも神経をとがらせています。インドは日米豪印4カ国で構成する日米豪印戦略対話(QUAD)を通じ、中国の海洋進出を抑止したい意向です。


昨年10月にはインドとつながりが強いモルディブで、野党連合の統一候補ムイズ氏がインドとの関係を重視してきた現職大統領のソリ氏を破りました。ムイズ氏は中国との関係強化を訴えて当選。その背景には、中国からの投資や支援が生活改善につながるとの期待感があります。親中路線の政権が発足したことはモディ政権にとっては痛手で、逆に中国にとっては影響力拡大の好機になります。


もっとも、実際にインドが中国との間で紛争にとどまらず大規模な軍事衝突に発展すれば、好調な生産や貿易を混乱させるほか、海外からの直接投資や外国企業の進出を減少させることになります。国内経済は一気に転落し、株価は低迷、通貨ルピーの大幅安も避けられないでしょう。中国に対して強硬姿勢を取りつつ、地域の安定にも寄与しなければならない点に、モディ「3期目」の難しさがあります。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《TY》

 提供:フィスコ

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