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【市況】明日の株式相場に向けて=「三菱重、トヨタ、日本製鉄」ザラ場の明暗

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
 きょう(10日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比120円安の2万9122円と反落した。日本時間今晩9時半に4月の米消費者物価指数(CPI)の発表が予定され、この結果次第で米株市場が荒れる可能性もあるだけに、ポジション調整の売りが優勢となった。もっとも、実態は様子見ムードとはかけ離れていた。売買代金は前日に続き3兆2000億円前後と高水準で、主力企業の明暗を分けた決算など見所の多い地合いだった。

 4月第2週以降に日経平均は見ての通りの強烈な上昇波動を描いているが、その背景には紛れもなく海外マネーの東京市場上陸がある。例年4月は外国人投資家が買い越す確率が非常に高い。実際統計を取ると、昨年4月からアベノミクス相場の初動となった2013年4月まで過去10年間遡って、売り越したのは新型コロナウイルスで投資マインドがフリーズした2020年のみである。特に今年の4月は外国人が記録的な買い攻勢に出た。現物株ベースで2兆1500億円あまりに達し、4月としては10年ぶり、全月間ベースでも5年半ぶりの高水準となったことが伝えられている。

 しかし、5月はその反動が出る可能性がある。ウォール街の格言である「セル・イン・メイ」は東京市場にも当てはまり、過去10年で外国人投資家は月間ベースで7回も売り越している。日経平均2万9000円台は一つの大きなフシ目だが、皮肉にも5月初日にこのライン突破を果たした途端、上値の重さが露呈した。現状で海外勢が売りに転じている感触はないが、一部では3万円大台を前に瀬踏みを強いられる需給的背景も語られている。

 その一つとして、2万9000円台は再び日経平均リンク債に絡む思惑が市場で取り沙汰されている。今年3月初旬の株価急伸時にも話題となっていたが、市場関係者によると「2万9100円から3万円までのゾーンに5000億円以上のリンク債(ノックアウトオプション)が存在しているもようで、5月に入って遂に2万9100円の最初の感電ゾーンに触れた。タッチすると機械的な外資系のヘッジ売りが先物経由で発生し、全体指数に下げ圧力を与える」(ネット証券マーケットアナリスト)という。目先は米CPIが関門となるが、ここを無事通過しても断続的な売り注文が五月雨的に出てくる可能性はある。海外マネーの記録的流入という宴(うたげ)の後、機械的な売りをこなして向こう岸(3万円)にたどり着けるのかどうか、本当の正念場はこれからである。

 きょうは後場取引時間中に主力企業の決算で3つの山場があった。まず、午後1時半に三菱重工業<7011>が決算を発表した。24年3月期は最終利益が前期比46%増の1900億円見通しである。前場はインデックス売りでマイナス圏での推移を強いられていたが、間髪入れずにAIアルゴリズムの買いプログラムが作動、一気に300円以上の上昇に転じ年初来高値更新となった。これはホルダーにとっては大勝利といってよい。

 その次がトヨタ自動車<7203>で、午後1時55分に開示。今3月期最終利益は前期比5%増の2兆5800億円予想で2年ぶりの増益を見込み、加えて1500億円規模の自社株買いを発表、これでいったんは1900円台後半に上値を伸ばし新高値圏に浮上した。ただ、その後は買いが続かず上ヒゲ形成を余儀なくされた。市場では「1%未満の自社株買いでは“小手先”感が強く評価できない」(ネット証券アナリスト)という声が聞かれた。トヨタの決算は痛み分けというところ。そして、それから5分後の午後2時に日本製鉄<5401>の決算が発表された。8日のJFEホールディングス<5411>の今期好決算予想の残像が残っているだけに期待も大きかったが、残念ながらこちらは最終47%減益予想でネガティブサプライズとなった。投資家サイドとしては在庫評価損という流れ弾に当たってしまった形だが、それでもPERは7倍に過ぎず、0.6倍台のPBRと合わせ、26週移動平均線とのカイ離解消場面は押し目買いチャンスとなっている可能性がある。

 あすのスケジュールでは、日銀金融政策決定会合の主な意見(4月27~28日開催分)、3月及び2022年度の国際収支のほか、30年国債の入札も予定。海外では4月の中国消費者物価指数(CPI)、4月の中国生産者物価指数(PPI)、フィリピンの1~3月期GDP、英中銀の政策金利発表と議事録開示、週間の米新規失業保険申請件数、4月の米PPI、米30年国債の入札など。国内主要企業の決算発表では、武田薬品工業<4502>、ホンダ<7267>、ソフトバンクグループ<9984>、東京エレクトロン<8035>など。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2023年05月10日 17時27分

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