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【特集】“最後の巨大市場”誕生と需要シフト、「紙おむつ関連」飛躍のシナリオ <株探トップ特集>

1人あたりGDPが3000ドルを突破すると普及局面に入るとされる紙おむつ市場。アジアでは続々とこのラインを突破する国が生まれ、巨大市場が誕生しようとしている。

―1人あたりGDP3000ドル突破で生まれるマーケット捉える有望株は―

 東京株式市場はアルゴリズム売買などの影響もあってか、一方通行の値動きが目立つ。日経平均株価は8月下旬に8日続伸とスルスルと上値追いを続け因縁の2万3000円ラインに片足を乗せたものの、またしても押し返され、8月末から9月初旬は6日続落と下値模索の時間帯に入った。しかし、それも週明け9月10日にようやくプラス圏で着地し、下げトレンド終了。11日は目の前の霧が晴れたかのように続急騰となった。振り子は再び強気マインドに振れており、ここからの仕切り直し相場に期待が募るところだ。

●ハイクオリティーの「紙おむつ」で新興国需要開拓

 とはいえ、物色対象はなかなか中軸が決まらない状況で投資家泣かせの地合いともいえるが、実態面で業績好調な化学セクターを改めて注目したい。業種別にみると東証1部33業種のなかで日経平均との連動性の高さが際立つのが「化学」であり、全体相場に底入れ感が台頭すれば、そこはイコール「化学株の仕込み好機」という方程式も成り立つ。

 化学株といっても範疇は広いが、今回マークしたいのは「紙おむつ材料」に展開する銘柄群だ。いうまでもなく少子高齢化で日本国内の紙おむつ市場は縮小傾向にあるが、グローバル的見地に立った場合、180度視界は変わってくる。クオリティーの高い日本製の紙おむつは中国などをはじめ新興国でシェアを伸ばしており、その急速な市場拡大と相まって、関連銘柄に高水準の利益をもたらしている。

●人口14億の“巨大市場”中国で花王が急浮上

 現在、世界最大の紙おむつ市場といえば人口14億人規模を誇る中国だ。「パンパース」で知られる世界最大手の米P&Gがトップメーカーとして君臨していたが、最近は肌触りなどに優位性を持つ日本製商品への需要シフトが顕著となっている。その代表格の花王 <4452> は「メリーズ」で攻勢をかけている。数年前に中国EC最大手のアリババ集団と提携したことが功を奏し、越境ECでシェアを急拡大させている。

 このほか、ユニ・チャーム <8113> やピジョン <7956> なども有力メーカーとしてマーケットの注目度は高い。さらに、同市場への参入は比較的遅かったものの、高級品への特化でニーズを取り込むことに成功した大王製紙 <3880> の存在感も大きい。中国では富裕層などが育児に最高級品を求める傾向が日本よりも強い。そこに目をつけた同社の戦略がツボにはまり、売り上げシェアを急速に伸ばしている。

 1979年から始まった中国の「一人っ子政策」は2016年1月から廃止されており、今はその一人っ子世代が育てる側に回っている。GDP成長が著しい中国でも出生数はそれほど伸びておらず、その世代の消費を捉えているのが、アマゾン効果というべきネット通販市場の急拡大と高級品志向だ。

●中国に続く将来の有望市場がひしめくアジア

 高級品志向で化粧品メーカーの業績を押し上げる中国人観光客のインバウンド需要は証明済みだが、紙おむつ市場でも同様に日本製の“高品質”を求める動きが年々強まっており、日本メーカーに強力なフォローの風となっている。そして、中国でのノウハウを横展開して、今後はインドやインドネシア、ベトナムなどの新興国で需要を取り込んでいくことが想定される。ビッグウェーブともいえる膨大な需要が、紙おむつメーカーや紙おむつ素材を手掛ける化学メーカーに収益恩恵をもたらしていく。

 紙おむつは1人当たりGDPが3000ドルを超過してくると普及局面入りするといわれている。中国の1人当たりGDPは17年現在のデータで約8640ドルに達しており、紙おむつの普及率は既に70%を超える水準にある。ちなみに日本の1人当たりGDPは3万8400ドルだが、金額ベースの市場規模は日本と中国の人口の違いがそのまま反映される形で、日本の約10倍強の1兆7000億円にも及ぶ。言うまでもなく中国は世界でも最大の紙おむつ消費国となっている。

 これに続くアジア新興国では、タイの1人当たりGDPが6590ドル、インドネシアが3870ドルといずれも3000ドルラインを上回っており、今後加速的に紙おむつの普及が早まる地域として日本企業も虎視眈々とビジネスチャンス確保を狙っている。両国とも普及率は40%を下回っている状況で開拓余地は大きい。なお、インドは2000ドルにわずかに届かない水準ながら、中国に次ぐ人口規模を誇るだけに最後の巨大マーケットとして商機が巡ることは必至だ。

●SAPで世界首位の日本触媒に成長余地

 紙おむつ市場の拡大は、その材料を手掛ける化学メーカーの収益チャンスも広げている。まず、素材としては高吸水性樹脂(SAP)が使われている。SAPはその需要先がほぼ紙おむつや衛生材料向けで占められており、構造的に市場は縮小することがなく、成長が約束された市場といってよい。化学セクターにおいて、SAPの世界最大手は日本触媒 <4114> であり、同社はSAPの原料であるアクリル酸でもトップシェアを誇る。このほか、住友精化 <4008> や三洋化成工業 <4471> もSAPを手掛けており、収益に安定的な押し上げ効果をもたらしている。なお、日本触媒と住友精化は16年からSAPの特許侵害を巡る訴訟で争っていたが、直近、8月29日に和解が成立している。

●不織布で断トツの三井化、荒川化学に穴株妙味

 また、紙おむつを構成する素材としてポリエステル不織布も必須だ。不織布は石油化学由来の商品で三井化学 <4183> や東レ <3402> 、クラレ <3405> 、旭化成 <3407> 、堺化学工業 <4078> などが製造している。このなかで、三井化学は高機能不織布で世界シェアの約半分を掌握しており、中国での生産能力増強や営業展開強化で一段のシェア拡大を目指す構えにある。東レは韓国で不織布の生産ラインを増強、今後も漸次稼働能力を高めていく方針。さらに、旭化成はアクリル繊維の原料となるアクリロ・ニトリルでも世界屈指だ。

 このほか、不織布と衛生用紙を製造するハビックス <3895> [JQ]やSAP製造工程で使用する苛性ソーダの大手であるトクヤマ <4043> なども関連株の一角。松ヤニ化学大手で製紙薬品を主力とする荒川化学工業 <4968> は、世界的に需要増勢が顕著となっている紙おむつ向け接着剤を手掛けており、こちらもテーマ買い対象として有力となる。

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