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【特集】エノモト Research Memo(2):リードフレームなどの大手電子部品メーカー


■事業概要

1. 会社概要
エノモト<6928>は大手電子部品メーカーで、家電や自動車、IT機器の内部で使用される半導体パッケージ及びコネクタ等電子部品のメーカー向けに、リードフレームやコネクタ用部品、インサートモールドと呼ばれる精密部品を製造販売している。顧客のコスト削減や耐久性向上などの要求に応じ、高機能なカスタマイズ品の開発にも積極的に取り組んでいる。そのほか、各種精密金型や自動機械装置などの開発や設計、製作なども行っており、特に微細加工の精密プレス金型に強みがある。同社は、日本、中国、フィリピンの3極体制で事業を展開しており、どの生産拠点でもほぼ同様の製品を同様の高品質で一貫生産することができ、こうした「最適地一貫生産」も大きな特徴になっている。

同社は1967年に神奈川県相模湖町で、精密金型の製作と金型による電子部品のプレス加工を目的に、株式会社榎本製作所という社名で設立された。1969年に山梨県に上野原工場を設立、1973年に本社を上野原に移転、その後はコネクタ用部品やLED用リードフレームなどへと製造の幅を広げるとともに、国内で営業・生産拠点を拡充していった。1990年に社名を株式会社エノモトに改めるとともに、日本証券業協会に店頭登録(現東京証券取引所JASDAQ市場)、1995年にフィリピン、2000年には中国に進出し、3極体制の基盤を構築した。2017年には東京証券取引所市場第2部に上場し、現在、更なる飛躍を目指し事業を推進しているところである。


金型技術と樹脂成形技術、一体成形に強み
2. 事業内容
同社は主にリードフレーム※1やコネクタ用部品※2、インサートモールド※3、及びそれらの製造に使われる精密金型や周辺装置の製造販売を行っている。同社グループは、同社と子会社4社(連結子会社3社、非連結子会社1社)で構成され、国内4工場、海外2工場(フィリピン1工場、中国1工場)という生産体制になっている。同社の製品はIC・トランジスタ用リードフレーム、オプト用※4リードフレーム、コネクタ用部品、その他という4つの製品群に分けられ、売上高構成比はそれぞれ35.6%、13.8%、47.4%、3.2%となっている(2018年3月期)。ちなみに、IC・トランジスタ用リードフレームは自動車や民生用機器向け、オプト用リードフレームは自動車や照明向け、コネクタ用部品は自動車やスマートフォンやデジタル家電向けの部品製造が多く、その他はリレー用部品などで、用途別では車載向け32.7%、モバイル向け30.8%、民生向け24.8%、その他11.6%となっている(2018年3月期)。

※1 リードフレーム:半導体パッケージに使われ、半導体チップを支持固定し外部配線と接続をする部品。
※2 コネクタ用部品:電子回路や光通信で機器や部品を接続するための部品。
※3 インサートモールド:金属部品の周りに樹脂を注入し一体化させた複合部品。
※4 オプト:光電子工学(オプトエレクトロニクス)の略称


(1) IC・トランジスタ用リードフレーム
ICトランジスタ用リードフレーム製品群では、ICトランジスタ用リードフレームとその製造に使用する精密金型や周辺機器を製造、各種部品メーカーに販売している。IC・トランジスタは民生用機器や産業用機器、自動車部品など広範に使用される電子部品で、同社は金属材を精密加工し、IC・トランジスタの部品となるリードフレームを製造している。パワー半導体向けリードフレームや小信号デバイス向けリードフレーム、ヒートシンクなど、金属プレスやカシメ※などの各工程を一貫して大量にかつ安定して製造することができるため、様々な用途や要求に対応することができる。なかでも、種々の異形条材料への対応力、パワー系デバイスに使用される放熱効果の高いカシメ部品などに強みがある。

※カシメ:金属の塑性変形(変形が増すにつれてより硬くなること)を利用した接合方法。


リードフレームは、従来金属単体の製品だったが、樹脂成形を含めた一貫生産の要求もあり、金型と樹脂成形を融合した同社の技術が不可欠になっている。また、金型技術も、基本の「抜く・曲げる」に「つぶす(コイニング)・絞る」など多彩で高度な技術を複合させることにより、あらゆる分野において高度な要求に応えることができ、同社の強みとなっている。こうした技術を駆使することで、これまで医療機器や機械部品、太陽電池関連、モーターコアなど多数の製品を開発してきた。また、様々な加工技術を有する同社は、その総合力により高度な顧客ニーズに対応するだけでなく、鉛フリーを始め環境に配慮した製品づくりも進めており、新たな付加価値を提供している。

(2) オプト用リードフレーム
オプト用リードフレーム製品群では、LED用リードフレームとその製造に使用する精密金型や周辺機器の製造販売を行っている。同社はLED用リードフレームについて、金型の設計・製作から試作品開発、大量生産まで一貫対応しているが、LED製品の形状を決定する重要な部品であることから、自動車部品メーカーや照明機器メーカーとコラボレーションして生産している。主要製品はLEDディスプレイ、液晶ディスプレイのバックライト、自動車の各種ランプ、その他の産業用や民生用、照明用のLEDに使用されるリードフレームである。なかでも大型ディスプレイ用LED向けに特徴があり、タテ型(砲弾型)LED用リードフレームは国内トップシェアを誇る。また、輝度や耐久性といった面で難易度の高いデザインなどへの要求も多く、長年の経験とノウハウによってカスタマイズした最適な提案で応えている。一方、開発期間の短縮やコスト削減、試作用途など様々な目的に対応するため、自社製オープンフレームも各種用意しており、気軽に利用できる利便性が好評で、ラインナップを順時拡大する予定になっている。

(3) コネクタ用部品
コネクタ用部品製品群では、コネクタ用部品とその製造に使用する精密金型や周辺機器の製造販売を行っている。コネクタ用部品は電子回路や光通信において配線を接続するために用いられる部品・器具のことで、同社は携帯電話などに利用されるコネクタやFPC(Flexible Printed Circuits)コネクタ、細線同軸コネクタなどを製造している。なかでも、スマートフォンやウェアラブル端末の普及や高精度化とともに、コネクタやコンタクトピンの極小化が求められ、狭ピッチ品へのニーズが非常に高まっている。これに対して同社は、金属プレス加工の複雑な曲げ形状の技術と樹脂成形加工の技術を融合することで、0.4mm以下の狭ピッチコネクタを供給している。このように、長年培ってきたプレス技術とモールド技術により、同社は難易度の高い様々な要求に対して、最適なソリューションを提供することができるのである。このため近年、精密性と堅牢性が厳しく求められる自動車向けに、同社のコネクタ用部品の販売量が増加している。なお、同社の国内外の工場では、金属端子部のプレス加工やメッキ加工、樹脂成形加工から設計、製造までの一貫生産を行っているほか、OEM(Original Equipment Manufacturer)による供給にも対応している。

(4) モールド
モールド(鋳造・射出成形)は同社の製品群に横軸を通した技術で、超精密な金属打ち抜き部品と樹脂成形を一体化した高精度なインサートモールド(一体成形)部品を生産している。平状フープ及び縦フープでのインサート成形や、単品部品をロボットでモールド金型に供給して成形する複合成形など、長年培ってきた高度な技術を駆使し、あらゆるパターンのインサートモールドに対応している。金型の設計や製造、部品生産のみならず、開発から試作、量産に至るまでのライン構想の提案など、モールドに対するあらゆるニーズに対応することができる。主な製品はLEDやコネクタ、通信用リレー、センサー、レーザー用の部品などで、省電力や多機能小型化といったニーズにも応えている。また、インサートモールドは、金型とフレームなどを一体に成形するため厳しい寸法精度が要求されるが、同社はフレームとモールドのマッチングを、社内で一括管理し一貫生産することができるため、高精度のモールド部品を生産することができるのである。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《TN》

 提供:フィスコ

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