市場ニュース

戻る
 

【特集】植木靖男氏【2万円目前“足踏み”は好機か? 見通しを聞く】(1) <相場観特集>

植木靖男氏(株式評論家)

―地政学リスク再びも収益環境は良好、強弱感対立で向かう先は―

 東京株式市場は好調な決算発表などを受け買い意欲の強さは意識されるものの、戻り売り圧力も強く、日経平均株価は2万円大台を目前に瀬踏みを繰り返す展開。為替は企業の今期想定レートより足もと円安水準で推移しており、収益環境は追い風。しかし、一方で北朝鮮問題などの地政学リスクが引き続き重荷となっている。目先は強弱感が対立し、今後の相場をどうみるかについては意見の分かれやすいところ。先読みに定評のあるベテラン市場関係者2人に意見を求めた。

●「近くて遠い2万円、米株軟化なら下方圧力高まる」

植木靖男氏(株式評論家)

 日経平均2万円大台回復は目前だが、見ての通り意外に難航している。マーケット関係者の声を聞く限り、先行き相場見通しにそれほど強気なスタンスではなくとも、2万円大台回復までは既定路線でその後どうなるか、というイメージで語っている人が多いように思う。

 しかし、テクニカル指標面などから実際には利益確定売りの誘惑もかなり強い(東証1部の騰落レシオは前週末時点で131%に達している)。ここで日経平均がすんなりと大台替えできない背景には、疑心暗鬼の投資家心理が反映されている部分も大きい。

 やはりポイントとなるのは米国株市場の動向であろう。NYダウは前週末まで4日続落しておりチャートは再び嫌な形になってきた。幸いナスダック指数は上値追い基調をキープしているが、早晩NYダウに追随して不安定さを増すケースも十分考えられる。トランプ米大統領は軍需産業やCIA、FBIなどとの相性が良いとはいえず、議会との折り合いもつきにくくなっている印象を受ける。FBI長官の解任劇で“ロシアゲート”問題がトランプ政権のアキレス腱となる可能性が以前より高まった。また、これまでは好調な米国経済が売り方の思惑を粉砕してきたが、足もとはコンセンサスを下回る小売売上高やCPIの伸び鈍化が相場にボディーブローのように作用する懸念も捨て切れない。

 東京市場も指呼の間に捉えていた2万円大台から距離を広げるケースも考えられる。下値は北朝鮮問題が突発的に悪化しない限り1万9500円程度までの調整にとどまろうが、仮にNYダウだけでなく、ナスダック指数も下値を探る展開となった場合は、リスクオフの円高と合わせて1万9000円攻防を視野に入れるような下げに見舞われる可能性もある。VIX指数などを見れば、少なくとも弱気筋は少数派だが、用心するに越したことはない。

 個別銘柄としては中長期で三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> 、ソフトバンクグループ <9984> 、ソニー <6758> の3銘柄に注目している。ただし、三菱UFJとソフトバンクについてはトランプ相場の象徴株で、米国株が崩れた場合には押し目狙いに徹したい。また、このほか中小型株では日用雑貨を手掛けるレック <7874> や工業用資材をネット販売するMonotaRO <3064> など内需の業績高成長銘柄に照準を絞りたい。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(うえき・やすお)
慶応義塾大学経済学部卒。日興証券(現SMBC日興証券)入社。情報部を経て株式本部スポークスマン。独立後、株式評論家としてテレビ、ラジオ、週刊誌さらに講演会などで活躍。的確な相場見通しと独自の銘柄観に定評がある。

株探ニュース

株探からのお知らせ

    日経平均