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【経済】【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆消費税撤廃論は浮上するか◆


〇混乱展開、新たに消費税撤廃論は浮上するか〇

トランプ大統領が週末に出したイスラム7カ国からの入国禁止で、大混乱に陥っている。既に14の大統領令(パイプライン建設は2件)を出し、10か国の首脳と電話協議(米英首脳会談を含む)を行った。そのスピードは目を瞠るものがあるが、ピースの断片を並べても、「米国第一」のジグソーパズルなのか、「米国分裂」なのか分からない。株式市場の基調は変わらないと思われるが、混沌とした状況が頭を抑える格好にはなろう。

入国規制の大混乱であまり取り上げられていないが、対メキシコ、対中国の貿易政策に不透明感がある。「対中国45%関税」は言及していないが、対メキシコ35%は20%に引き下げられ、「壁建設原資」と意味合いも変わっている。米墨首脳会談が先送りになったので、NAFTA見直し策も進展していない。国内世論調査で、「日米関係が不安」とする回答が7割(読売新聞など)。大半は貿易関係の不透明さ、日本企業を槍玉に挙げる手法に疑問を感じてのものであろう。

日本経済を抜本的に揺るがす可能性があるものに、「消費税撤廃論」がある。消費税(海外では付加価値税。消費税と呼ぶのは日本だけ)は実質的に関税だと喝破したのは昨年ブームになった仏人口問題・経済学者のトマ・ピケティ教授。どういう訳か、日本では議論が盛り上がらなかったが、「欧州の付加価値税が高いのは福祉財源のためでなく、関税だから」と主張した。

付加価値税は1954年、仏が初めて導入した。当時は戦禍で生産力が疲弊し、その立て直しのため輸出補助金を出していたが、GATT(関税と貿易協定)で規制され、そのために考案されたとされる。脱税対策にもなり、間接税の安定財源として、今や世界140カ国に広がっている。米国は付加価値税を導入していない(売上税は州税で、輸出援助の仕組みはない)。1969年に出された米企業課税特別委員会報告書以来、「輸出課税がなく還付金制度がある付加価値税は輸出品にリベートが渡され、輸入品に課税するもの」と認定して以来、その姿勢を崩していない。ただし、各国の付加価値税に言及することは内政干渉になるため行っていない。14年10月に米財務省が発表した「為替報告書」で、日本の消費税率引き上げで日本経済の不確実性が増したと指摘したぐらいだ。

メキシコの付加価値税率(標準税率)は16%。トランプ大統領が関税20%に引き下げたのは偶然だろうか。両者の落とし処で、「付加価値税撤廃論」が浮上してもおかしくない。引き下げの先例はカナダ。1991年に物品サービス税を7%で導入したが、06年に6%、08年に5%に引き下げた。カナダとの貿易摩擦が小さいのは、実質的な関税が低いことも影響している可能性がある。

具体策はまだないが、トランプ政権は減税スタンスだ。日本経済底上げ=米国製品輸入増のためにも、日本に減税策を求めて来る可能性がある(内政干渉かどうかは、ほとんど意に介さないと見られる)。日本は消費税導入以来25年間、減税らしい減税は行っていない。社会保障負担増が消費を大きく圧迫する構図にある。その大転換の可能性も視野に入れて置く必要があろう。


以上


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/1/30号)

《WA》

 提供:フィスコ

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