市場ニュース

戻る
 

【特集】窪田朋一郎氏【好調推移の年末相場、上値のメドは?】(1) <相場観特集>

窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)

―日経平均10ヵ月半ぶり1万8000円台、高まる先高期待の行く末は―

 21日の日経平均株価は終値ベースで約10ヵ月半ぶりに1万8000円台を回復した。足もとは外国人投資家の買いにも厚みが加わっており、全般相場は先高期待が高まっている。しかし、地合いに過熱感があることも事実だ。年末相場でさらなる上昇が見込めるのか、あるいは反動安の洗礼を浴びることになるのか、ここからの東京株式市場の見通しについて第一線で活躍する市場関係者に聞いた。

●「米長期金利上昇がプラス作用も用心肝要」

窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)

 東京株式市場は、目先的には上値指向の強い展開にあるといってよい。日米ともにトランプ次期米大統領が掲げる政策に対する期待感が反映された上昇相場ではあるが、足もとの日本株高は「米長期金利の上昇」がポジティブに働いた結果が反映されたものだ。

 大規模な減税やインフラ投資を行う政策姿勢をトランプ氏は示しているが、これが長期金利を約1年ぶりの高みまでに上昇させる背景となった。日本ではイールドカーブ・コントロールに伴い金利は低位安定していることから、日米金利差の広がりがクローズアップされることになり、為替の急速な円安をもたらしている。円安が日本企業の業績に改善効果を与えるとの思惑が、ヘッジファンドなどを中心とする海外機関投資家の買いを引き込む根拠となっているようだ。また、米長期金利上昇に伴い運用環境が改善するとの思惑が保険株など金融株高も後押ししている。海外投資家の視点では、ドル建ての日経平均がそれほど上昇していないという点も過熱感が意識されない理由にあると思われる。

 当面は日経平均株価で上値1万8500円前後を目指す展開が予想されるが、反動安のリスクについても意識しておく必要はあろう。米長期金利の上昇がもたらす負の部分についても今後顕在化してくる可能性があるからだ。米国では住宅金利やオートローンの上昇などにより個人消費が圧迫されるケースも生じるほか、ドル高がレパトリエーション(資金の本国回帰)を誘発し、新興国通貨安を引き起こす懸念もある。ともすれば、ふとしたタイミングでリスクオンの歯車が逆回転することにもなりかねない。

 トランプ次期米大統領は、現状ではドル高を許容しているが、いつ円安牽制発言をみせるか分からない。仮にこれ以上のドル高を望まずというコメントが出てきた場合、円高方向へ押し戻される動きが予想される。その場合は、ドル円相場の水準にもよるが、日経平均は1万7000円台半ばくらいまで下押す可能性は十分にありそうだ。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウオッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。

株探ニュース

株探からのお知らせ

    日経平均