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【経済】【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆冬物語始まる◆


〇足元の材料重視へ〇

トランプ支持派も、「トランプ・リスク」を喧伝する人も、不思議なぐらい話題にしてこなかったことがある。トランプ氏の「中国からの輸入品に45%の関税を掛ける」との主張だ。米産業を復活させると言う保護貿易主義の象徴的な項目だが、これにより米中経済戦争が勃発するとか、中国株の暴落とかの動きにはならなかった(メキシコについては不法移民問題もあって、35%の関税主張が影響した可能性がある。クリントン氏優勢との見方で、メキシコの「コロナ・ビール」などを輸入するコンステレーション・ブランズ株が7日4%高と急伸)。結局、米大統領選ラリーは流動性の高い市場での攻防だったと言える。

なお、ピーターソン国際研究所は、トランプ保護主義が実施されれば「全米で480万人の失業者が出て、リセッションに陥る」との調査報告書を出している。対抗手段として中国が米国製航空機を買わなくなるため、シアトル、カンザス、コネチカットなどボーイング拠点を中心に劇的に悪化するとの見方。GDPの縮小は1兆ドル規模との見方もある。トランプもクリントンもTPP反対が話題だが、グローバル化を排することが困難であり不合理であることも、また確認する展開と言える。議論は、グローバル化の弊害を如何に緩和・縮小させるかの方向性となろう。

大きなイベントが通過すると足元の情勢に基づいた動きに戻る。今のところ、目に付く動きは、北半球の寒波襲来。シベリアでは早くも氷点下30度超の地点が現れ、寒気団が南下する気配だ。比較的温暖な欧州寄りでも、モスクワは今冬初の大雪と報じられている。中国科学院大気物質研究所はラニーニャ現象により、平年より温度が低くなると警告を出した。10月31日には北京から雲南省まで、広範囲に氷点下になり、雪が舞った。中国の直近の記録的寒波は12年から13年の冬季。交通機関と電力供給に障害をもたらし、18万頭の牛が死亡した。その前は08年1月。中国政府は強制減産していた石炭の増産を認める方針と伝えられる(石炭燃焼によるセントラルヒーティングが多く、11月15日から使用が認められる)。警告では異常寒波は来年1~2月が最も厳しくなると予想している。

冬の気候は強風とならないと大気汚染を生じ易い。6日、上海でPM2.5による濃霧により大規模交通事故が発生、インド・ニューデリーは非常事態宣言が出され、学校が3日間、建設工事を5日間休止する緊急対策を発表した。

7日、モロッコで「パリ協定」のルール作りを目指すCOP22が始まった。地球の異変がCO2が原因なのかどうかという根本的議論をしないまま世界190カ国超が参加する。果たして、何処まで有効性を高められるか、懐疑的な流れが想定される。経済格差問題や中国のような民主化抑制策によって国民多数の政治不満が溜まるないしは爆発しやすい状況にある。ここに大規模な自然災害が加わると、世界各地で混乱が一気に拡大する恐れがある。自然環境を含めた足元の経済情勢を重視する流れに向かうと考えられる。


以上



出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(16/11/8号)

《WA》

 提供:フィスコ

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