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【特集】最先端農業「開花期」へ、活発化する農業ビジネス <株探トップ特集>

小田急の「高糖度ミニトマト」(イメージ画像)

―「世界に打ち勝つ強い農業」構築への取り組み―

 企業主導による新たな農業ビジネスがさまざまな分野で活発化している。これまで農業は、その多くが個人経営中心で、高齢化による相次ぐ離農が深刻な問題となっていた。しかし、政府による規制緩和への取り組みの効果がここへきて表面化しており、ITなど最先端の技術を活用した農業ビジネスが本格的な開花期を迎えようとしている。

●最先端の農業が本格的な開花期

 2009年に農地法が改正され、戦後はじめて農地の利用権(賃借権)が原則自由化となった。農業生産法人や個人でなくとも、一般企業やNPO法人でも「農地を適正に利用」との形をとると、そこに居住していなくても原則自由に農地を借りることが可能になった。これにより、企業の農業参入が活発化する過程で植物工場やITなど最先端の技術を農業で活用する動きが高まり、さまざまな大手企業が農業分野への投資を拡充させている。この数年、地方創生が焦点となるなかで、農業分野の成長は重要課題になってきた。今後、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定が発効されれば、国内での農業育成はもとより、技術輸出を含めた「世界に打ち勝つ強い農業」を構築することが不可欠になる。以下、最先端の農業技術を有する企業をピックアップしてみた。

●双日は農業VBに出資、京野菜を手掛ける岩谷産業

◆双日 <2768>
 今年3月2日に農業ベンチャーのファーム・アライアンス・マネジメント(FAM社)の発行済み株式14.7%を取得し、資本・業務提携を行っている。FAM社は、農業生産における安全管理の主要な国際的認証規格であるグローバルGAPに適合した農産物の生産情報管理システムを手掛けている。FAM社の農業生産情報管理システムのさらなる普及を通じて、日本の農産物の安全管理レベルを世界基準に適応可能とすべく環境整備を進めている。

◆岩谷産業 <8088>
 農業生産法人こと京都との共同出資により、昨年12月1日に「こと京野菜」を設立している。こと京都、京都府内JAなどが生産した京野菜を、岩谷産業が有する独自の冷凍技術「フレッシュ・アイ製法」を用いて、16年12月から京都府亀岡市に新設予定のこと京野菜工場で冷凍加工を開始、冷凍加工した京野菜を2017年から製造出荷開始予定。

◆カゴメ <2811>
 年間を通じた生鮮トマトの栽培で先駆。高付加価値商品の高リコピントマトなど商品開発に意欲的で、栽培拠点の拡充にも取り組む。トマトに加えて健康価値が高いベビーリーフの事業展開も強化。今年11月をメドに、山梨県北杜市において、首都圏への供給拠点として、ベビーリーフ菜園を開設する予定で、既存の生鮮トマトに加えて、パックサラダ、ベビーリーフの2つのカテゴリーを成長につなげ、「トマトの会社」だけではなく、「野菜の会社」としても存在感を発揮していく。

◆富士通 <6702>
 イオン <8267> 傘下のイオンアグリ創造と共同で独立行政法人国際協力機構ベトナム事務所(JICAベトナム事務所)の支援を受け、ベトナムでICTを活用した農業実証事業を展開している。昨年1月から1年間、富士通がベトナムのフエ省で行った住民参加型防災システムの有効性評価での実績とノウハウを活用し、スマートフォンを利用した農作業履歴や市場価格などの情報を収集し、富士通のデータセンターで集約・可視化して提供。イオンアグリ創造は、収集したデータを活用し、農作業を指導していく。

◆小田急電鉄 <9007>
 神奈川中央交通 <9081> と共同で2月からアグリビジネスに参入している。神奈川中央交通が相模原市に保有する未利用地を活用し、小田急電鉄が施設整備のうえ2社共同で「高糖度ミニトマト」を生産。生産および収穫・出荷に関する業務は小田急電鉄が出資し資本業務提携契約を締結する銀座農園(東京都中央区)に委託。「11月中旬には出荷できる状態になる」(広報)とし、生産した高糖度ミニトマトは、沿線の小田急系スーパーで販売し、順次小田急ならびに神奈中グループの百貨店、ホテル、レストランなどへも展開していく。

◆日本トリム <6788>
 農業分野では農作物の収穫量の増加や抗酸化成分の増加を目的として、整水器技術を応用し、電解水を使った農作物「還元野菜」の育成に取り組んでいる。昨年7月に電解水素水の農業分野への応用を推進することを目的に、南国市やJA南国市、高知県、高知大学と「還元野菜プロジェクト」推進連携協定を締結、今後さらに多くの品目での実証データの取得や使用地域の拡大に注力していく方針で、「次世代型施設の建設も検討している」(経営企画部)と意欲を見せている。


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