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【特集】「有機EL関連株」浮上の兆し、テーマ物色“新主役”へ <株探トップ特集>

アルバック <日足> 「株探」多機能チャートより

―突き抜ける日本の技術力、業績飛躍シナリオ描く―

 13日の東京株式市場では日経平均が急騰し、フシ目の1万6000円大台を大きく回復。円高の逆風で勢いを失っていた相場に、にわかに活力が戻ってきた。そのなか、新たな物色テーマ探しの動きも見え始めている。急浮上の兆しにあるのが有機EL関連だ。

 有機ELとは「有機エレクトロルミネッセンス」の略で、特定の有機物に電圧をかけると、有機物が光る現象を指すが、スマートフォン向けで活躍の機が熟してきた。有機ELを使ったディスプレーは自ら発光することにより、液晶では必須アイテムであったバックライトが不要になり、スペースに余裕が生まれることで一段の薄型化も可能となる。低消費電力でなおかつ動画の応答速度も液晶と比べてケタ違いに速いほか、残像がなく鮮明な画質も特長となっている。

●iPhone採用で景色が一変

「有機ELパネルの市場は現状の1兆6000億円規模でそのうちの8割強がスマートフォン向けと推測されている」(業界関係者)が、現時点では韓国サムスンが自社製品向けに独占的に生産している状況にある。そうしたなか、米アップルがiPhoneに有機ELパネルを採用する方針にあることが伝わり業界は色めき立った。

 来年にも有機ELディスプレーを使ったiPhoneが日の目を見る公算が大きく、同分野に経営資源を集める関連企業にとっては業績飛躍のシナリオが描ける局面にある。iPhoneは現在、スマートフォンの世界販売の20%近くを占めており、そのインパクトは絶大であることはいうまでもない。「スマホ用有機ELパネルは、枚数ベースで2018年には昨年比倍増の5億枚程度まで急増する」(同)との見方があり、新たな成長市場として脚光を浴びそうだ。

 また、有機ELの量産では韓国サムスンのほかテレビ向け中心の韓国LGが双璧となっているものの、有機EL材料の開発力という点で日本企業の技術力が世界の先頭を走るのは紛れもない事実。一頭地を抜く日本メーカーの実力が、今後のビジネスチャンスに生かされる可能性は高い。

●有機EL分野に軸足置く大手2社

 国内では鴻海精密工業傘下で経営再建を図るシャープ <6753> が、有機EL事業に積極的に経営資源を振り向ける計画にあるが、米アップルの有機ELパネル採用方針を受け、この需要に対応する構えをみせている。直近ではスマートフォンなどの画面向けに、折り曲げることができる有機ELパネルを開発したことが伝わり、市場の注目を集めた。

 また、ジャパンディスプレイ <6740> も同様に有機ELに軸足を置く構えだ。昨年、共同出資で有機ELディスプレー専業のJOLEDを発足させた。これは産業革新機構が主要出資会社となり、ソニー <6758> 、パナソニック <6752> との4社合弁によるもの。将来的にはJOLEDと経営統合し、フレキシブル型有機ELパネルの量産体制を確立する青写真がある。

 そして、国内液晶パネル大手2社の経営戦略は今後に大きな波紋を広げることにもなる。関連部材メーカーにとってこれは商機に違いなく、各社虎視眈々だ。

●韓国大手の巨額投資で保土谷化が動兆

 ここ株価が動意含みの保土谷化学工業 <4112> は同テーマの関連有力株として光が当たっている。同社は有機EL材料として正孔輸送材のほか、韓国子会社を通じて発光体を手掛けており、足もとは赤字採算ながら、米アップルの英断を受けた韓国サムスンやLGなどの巨額増産投資を背景に、先行き期待が広がっている。

 また、有機ELの発光体、正孔輸送材、正孔注入材、電子輸送材など一括供給する実力を備える出光興産 <5019> も要マークの存在。同社は石油元売り大手であり、全体売上高に占める有機EL材料の比率はわずかに過ぎないが、米アップルの動向を絡め、今後の一挙手一投足に目が離せない。

 同様に住友化学 <4005> も全体業績に与える影響は軽微ながら、ポリマー型有機ELを中核技術に優位性を発揮、個別にはスマートフォン向けタッチセンサーパネルや偏光板などで高水準の需要を取り込んでおり、動向が注目される。

●ケミプロ化成、倉元の値動きに注目

 紫外線吸収剤をはじめとする電子材料メーカーで、有機EL関連でも特許を多数出願しているケミプロ化成 <4960> [東証2]や、液晶事業のノウハウを生かして有機EL用ITO膜に展開する倉元製作所 <5216> [JQ]などは株価面でも材料株素地を内包し、投機資金攻勢の有力対象となる場面も想定される。

 昨年11月から今年3月にかけての株価変貌が記憶に新しい平田機工 <6258> [JQ]も再度人気化の機をうかがう。同社は有機EL製造装置向けで薄膜形成の際に必要な真空チャンバーを受託製造しており、米アップル関連特需を享受する公算が大きい。国内パネルメーカーの2社の注力姿勢を背景に今後の収益機会が広がりそうだ。

 アルバック <6728> は真空技術に強みを持つ薄型ディスプレー製造装置メーカー。同社は有機ELを含むフラットパネルディスプレー製造装置を展開しており、業界の設備投資特需を取り込む可能性が指摘されている。

●ハイボラで人気の高いVテクも狙い目

 ブイ・テクノロジー <7717> は製造・検査装置のファブレスメーカーだが、有機ELディスプレーでも実績豊富だ。ファインハイブリッドマスクと周辺装置を手掛け、現在は開発用途向けが主軸ながら、数年後の量産化を視野に同分野向け需要急増に対応した布石を打っている。値がさでボラティリティも高く、個人投資家にも人気度の高い銘柄だ。

 このほか、有機ELパネルの製造工程で需要があるイオン注入装置を手掛ける日新電機 <6641> や、医薬・電子材料などファインケミカル分野に強く、有機EL材料も製造するマナック <4364> [東証2]などに株価面で意外性がある。


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