【特集】宇徳 Research Memo(6):港湾事業は基幹航路の寄港数の変更などで取扱量が大きく減少
■業績動向
(1) 2016年3月期第2四半期業績
宇徳<9358>の2016年3月期第2四半期の業績は、営業収入が前年同期比2.9%減の24,529百万円、経常利益が同38.7%減の1,562百万円、四半期純利益が同43.8%減の946百万円の大幅減益となった。期初予想比では、営業収入で4.2%、経常利益で33.5%、四半期純利益で36.9%の未達になった。
2015年3月期は好材料が重なり、経常利益は期初予想の33億円(前期比9.6%増)が四半期ごとに上方修正され、実績は55.6億円と前期比82.7%増の高い伸びとなった。2016年3月期は、平常の状態に戻ることを前提に、期初から経常利益が第2四半期で前年同期比7.8%減、通期で22.7%減と予想していた。しかし、実績は想定以上に悪化した。
○コンテナ事業
安定的に収益を上げてきた港湾事業は、当第2四半期の営業収入が10,144百万円と前年同期比5.6%減少した。同事業の経常利益は642百万円と同43.6%落ち込んだ。とりわけコンテナ関連の収益が落ち込んだ。アジア域内での貨物数の減少、基幹航路となる北米欧州での寄港数の変更等が重なり、東京港、横浜港ともに取扱量が大きく減少した。車両・建機では、車両の取扱量は緩やかな回復基調にあるものの、建機の低迷が続いた。
東京関税貿易統計によると、2014年の年間輸出額は6兆1,374億円、前年比12.1%増、輸入額は11兆42億円、同9.6%増加した。円安の進行もあり、輸出額は月次ベースで2015年1月まで23ヵ月連続して前年同月比でプラスとなった。一方、輸出額よりも金額が大きい輸入額は、2014年11月にマイナスに転じた。2015年は、さらなる円安が続いているものの、輸出入とも前年同月比で伸び率がプラスになったりマイナスになったりと変調が出ている。同様の傾向が、横浜港の外貿易にも当てはまる。月間平均為替レートは、2015年3月移行1ドル当たり120円台が続いているものの、東京港の月間輸出額は8月に前年同月比3.0%減、9月に同3.9%減とさえない。10月は、輸出額が同0.6%増、輸入額が同4.2%減と低調だ。10月の円/ドルレートが前年同月比11.1%円安となっており、数量ベースでは輸出入のどちらも10%以上のマイナスになっていることが推測される。
同社の主要顧客である商船三井のコンテナ事業は、前期の赤字から脱却し、今期の期初予想では黒字転換を想定していた。コンテナ事業は、2016年3月期第2四半期の売上高を期初予想では前年同期比9.8%増加すると予想していた。実績は4,210億円と、期初予想を7.6%下回り、前年同期比1.5%増にとどまった。セグメント(経常)利益は、予想の20億円の利益に対し、実績は91億円の損失であった。当下期の売上高の修正後予想は、前年同期比10.6%減、期初予想比では12.4%減と状況の改善が見込まれていない。経常利益の予想は、30億円の予想から188億円の損失に改められた。通期の経常損失予想は、前期実績の△241億円から△280億円に拡大する。荷動きの減少と市況の悪化が、主要因となる。
同様に同社の2016年3月期の営業収入を半期毎に見ると、期初予想では上期が前年同期比1.4%増、下期が同13.1%減を見込んでいた。上期の実績が同2.9%減となったことから、下期の減少率を同14.6%に拡大した。
コンテナ関連事業は、基幹航路の変更も響いた。グローバル・コンテナ物流市場では、アジア諸国の躍進と日本のコンテナ取扱シェアの低下がみられる。海運業界では、コンテナ定期船のグローバル・ネットワークの維持と巨額の投資をシェアする海運アライアンスが進んでいる。同社の顧客である商船三井(MOL)が所属する定期コンテナ船共同運航組織は、「G6アライアンス」である。同アライアンスは、Hapag-Lloyd(独)、OOCL(香港)、日本郵船(NYK、日本)、American President Lines(APL、シンガポール)、現代商船(Hyundai、韓国)と商船三井の6社で編成されている。G6アライアンスは2012年3月よりサービスを開始しており、北欧州5、地中海2の合計7ループで共同配船している。そのうち、Loop1が日本に寄港するが、北米欧州での寄港数の変更等が重なり、同社が拠点とする京浜港への配船が減少した。
○プラント・物流事業
今期の業績悪化のもう一つの要因は、タイにおける石油化学プラントの収益悪化である。子会社が手掛け、今夏で終了したプロジェクトは、最終段階で追加工事が発生した。相手方がローカル企業であり、国際的な商慣習に沿って決済が行われず、予算よりも利益が約5億円ショートした。同プロジェクトの収益への影響は今期限りであり、来期はない。
国内物流は、春先まで荷動きが活発で、上期の営業収入は伸びた。橋梁の架替工事などは堅調に推移している。電力関連工事は、重量物輸送等の工事が順延したほか、各種工事において同社が保有する特殊機材を使用した案件が想定を下回った。
○貸借対照表
2016年3月期第2四半期の総資産は35,710百万円と前期末比2,249百万円減少した。関連会社への短期貸付金が増加したものの、受取手形及び営業未収入金の減少がそれを上回った。一方、負債では支払手形及び営業未払金が減少した。有利子負債は913百万円と、さらに減少した。自己資本比率は、71.5%と高い。
○キャッシュ・フローの状況
当第2四半期末の現金及び現金同等物の残高は、前期末比870百万円増加し、3,457百万円となった。営業活動によるキャッシュ・フローは、4,150百万円のプラスとなった。主な要因は、税金等調整前四半期純利益の増加と減価償却費の減少である。投資活動によるキャッシュ・フローは、貸付金の支出などにより、2,534百万円のマイナスであった。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済などにより742百万円のマイナスとなった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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提供:フィスコ