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【市況】中村潤一の相場スクランブル 「大化け株の探し方」

株式経済新聞 副編集長 中村潤一

株式経済新聞 副編集長 中村潤一

 年末年始は全体相場見通しについての記事が増えるため、今回はあえてマクロには触れず個別株の投資戦略について考えてみたいと思います。

●ダイヤの原石は有力テーマの中に眠る

 株式投資には本来、王道と呼ぶべきものはありません。投資もしくはトレードのスタンスに応じて考え方や手法は多岐にわたります。しかし、中長期保有を前提に大きなキャピタルゲインを狙うのであれば、それは入り口となる銘柄の選別段階で勝負は決まるといっても過言ではないでしょう。投資のタイミングや時間軸は二の次であり、最初に原石ありきで、間違った銘柄を手にしたら永久に輝きを手に入れることはできません。

 株価が大輪の花を咲かせるか否か、大化け株の発掘は何よりもその企業のビジネスモデルにどのくらいの人が成長性を感じ得るか、共感できるかどうかにかかってきます。大衆に理解され、大衆に普及する青写真が描けるものであることがポイントです。

 その際、個別銘柄の一本釣りではなく、今相場を熱くしているテーマは何か、急がば回れでそこから考えるのが近道となる場合が多いようです。また、期間限定的なものではなく、未来に向けてその可能性が綿々とつながっていく類のテーマが有力となります。

 例えば今なら「フィンテック関連」や「自動運転車関連」などはまさしくそれに該当するでしょう。直近、赤丸急上昇となっているのは「指紋認証関連」で来年相場にバトンを渡す形となりそうです。

●株価大変貌は基礎体温が高い銘柄に多い

 今回は相場テーマとして醸成が進んでいる「自動運転車」を題材に考えてみましょう。

 アイサンテクノロジー <4667> [JQ]は10月初旬に動意づき、以後わずか3ヵ月も満たない間に株価は7.2倍という大変貌を果たしました。自動運転の終着点はドライバーの操作を全く必要としない完全自動化された段階「レベル4」ですが、そこに到達するには高精度なデジタルマップ技術が必要不可欠、その中核銘柄としてのポジションを確立したことが大化けの背景となりました。16年のIPO予備軍の目玉であるZMP <7316> との関係が濃いことも株価の先高期待を増幅させています。

 また、株価の居どころを劇的に変える銘柄は“基礎体温が高い”ものが多い、つまり株価指標面で割安に放置されたバリュー株ではその要素に乏しいともいえるのです。よくバリュー株投資は成長株投資に勝つといわれますが、それは総論として正鵠(せいこく)を射ても、そこにスポットを当てて個別に大化け株を発掘することは逆に困難を伴います。

 アイサンテクノは今期予想EPSが40円で、大相場スタート時の1300円でもPERは32倍ありました。現在は200倍を超えており、これは期待先行が過ぎると見る向きもあって当然ですが、恒星(シンボルストック)としてはこのくらいの輝きがあってよいのです。恒星の輝きの強さはその相場テーマの大きさを裏付けるものでもあるわけです。

 高い株価指標に実態が追いついてくるプロセスこそが“変身銘柄”の真骨頂といってよく、それを肝に銘じて銘柄を探すのが株式投資の醍醐味ともいえるでしょう。

●ポスト・アイサンテクノを探す旅

 ポスト・アイサンテクノを探す旅にはロマンがあります。例えば、自動車のIT化進捗と歩調を合わせ独立系SIとして頭角を現してきたコア <2359> や、電子地図データで断トツの実力を有するゼンリン <9474> などは中期的に上値の可能性を感じさせます。

 目先的に反落リスクは拭えませんが、アイサンテクノ同様にZMPとの連携が株高原動力となっているアートスパークホールディングス <3663> [東証2]も市場の注目度が高いようです。

 一方、クラウド型のGISソフト開発で注目されるドーン <2303> [JQ]は14年に大相場を形成した反動もあり、足もとは株価面で出遅れ感がありますが、改めて見直されるタイミングが訪れるかもしれません。このほか、テクノスジャパン <3666> 、ハーツユナイテッドグループ <3676> なども一段の上昇余地を内包していると思われます。

 穴株的な魅力を携えているのはパスコ <9232> 。自動運転は既に国家的な取り組みとなっていますが、10月に内閣府から自動走行システムの実現に向けた調査検討事業を受託した7社のなかに、アイサンテクノやゼンリンなどと共に同社の名前があり、それ以降は漸次株価水準を切り上げる展開で、今後の動きに注目したいところです。

(12月30日 記)

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