【特集】レアジョブ Research Memo(4):4,000人規模の講師と継続しやすい体制を整備したオンライン英会話
■会社概要
(1)事業内容
レアジョブ<6096>は、オンライン英会話事業の運営を目的として2007年10月に設立された。「Chances for everyone, everywhere.」をグループビジョンに掲げ、「日本人1,000万人を英語が話せるようにする。」を事業ミッションに、マンツーマンオンライン英会話を主たる事業として展開する。2015年11月時点の、無料体験レッスン登録ユーザー数は累計で約40万人、法人導入社数は674社。
2008年10月に講師の安定確保を図るという観点で、フィリピンのマニラ市に連結子会社RareJob Philippines, Inc.を設立。2009年8月には法人向けサービスを開始したのに続き、2011年5月にはKDDI<9433>とAndroid搭載スマートフォン向けアプリケーション開発で業務提携した。2014年6月には認知度の向上を狙い東京証券取引所マザーズ市場へ上場。2015年7月に三井物産と資本・業務提携を行い、2015年10月にブラジル事業をスタートした。
具体的な事業の内容は、「レアジョブ英会話」の名称で米国、英国に次ぐ世界第3位の英語公用語国であるフィリピン国在住のフィリピン人講師とユーザーのマッチングを行い、スカイプ(Skype)※を利用してユーザー1名に対して講師1名のマンツーマンでの英会話レッスンを提供する。「レアジョブ英会話」は提供する顧客別に、個人ユーザー向けサービスと法人ユーザー向けサービス(スクール向け含む)の2種類に分けられる。
※米マイクロソフト社が提供するP2P(Peer to Peer:ネットワーク上で対等な関係にある端末間を相互に直接接続し、データを送受信する通信方式)技術を利用したインターネット電話サービス
●個人ユーザー向けサービス
年齢層を問わず英語力を向上させたい個人ユーザーを対象に、目的に応じたレッスン及びサポートをマンツーマンで行う。英会話の初級者向けの教材からビジネスの場で活用できる内容のものまで幅広い無料の教材を用意し、あらゆるユーザーニーズに対応できる体制を整えている。また、ユーザーの学習効率と意欲向上につながる「レッスンレポート」機能も提供する。
具体的な流れは、まず無料登録を行い、2回の体験レッスン受講後に有料登録(月単位でのレッスンの受講、休会が可能)を行うことで、継続してサービスを利用できる仕組み。なお、有料会員には4つの定額プラン※に加えて、15年4月からはビジネス英会話コース、スピーキングテスト、カウンセリングあんしんパッケージなどのコースやオプションも用意されている。レッスンの受講時間は午前6時から深夜1時までとなっており、ユーザーは同社グループのWebを通じてレッスンを予約する仕組みになっている。
※毎日25分プラン(月額5,800円、毎日1レッスン)、毎日50分プラン(月額9,700円、毎日2レッスン)、毎日100分プラン(月額16,000円、毎日4レッスン)、月8回プラン(月額4,200円、毎月8レッスン)。
●法人ユーザー向けサービス
法人ユーザー特有のニーズに対応したサービスを提供している。具体的には、ビジネス英語のニーズに対応した「RareJob For Business」コースや、英会話能力の測定のためのオリジナルテスト「RareJob Speaking Test」などのほか、ニーズに合わせてカスタマイズしたテキストも提供する。5年以内に3,000社へ導入し、英会話サービス法人導入業界No.1を目指している。2015年7月の三井物産との資本業務提携により法人導入数は増加傾向が鮮明になっており、2015年11月時点の法人の導入社数は674社。
また、スクール向けサービスとして、大学入試の4技能化や、企業のグローバル人材に対するニーズの増加に伴い、学校現場においてスピーキング能力の強化が求められてきている流れを受け、2015年4月よりスクール事業をスタートし、学校向けにサービス提供を開始した。スタート時の4月時点における導入実績は21校であったが10月には31校まで増加している。
(2)特徴・強みと事業リスク
同社の強みとして、1)4,000人規模の講師、2)継続しやすい体制を整備していることの2点を挙げることができる。
まず、講師についてはフィリピンの最上位に位置するフィリピン大学在学生、卒業生を中心に4,000人規模を確保(連結子会社RareJob Philippines, Inc.が選定、管理を行う)。これらの講師は自宅からレッスンを行うホーム型のシステムとなっている。オフィスへ出勤して教えるオフィス型に比べ場所による制約を受けないため、ニーズの増大に合わせてフィリピン全土から講師の調達が可能である。ユーザーは自分の関心や専門に合った講師を選ぶことが可能で、ユーザーの個別ニーズに細やかに対応したレッスンを行うことができるのが特徴。
さらに、ユーザーが英会話を継続しやすいように、ITシステムや管理体制を作り込んでいることに加えて、初級者から上級者までユーザーの英会話のレベルや目的に応じて整理されたほとんどが無料の教材2,200種類以上をそろえており、進捗管理機能を備えたカリキュラムで達成感を感じながら学習を継続できる仕組みとなっていることも強みである。
●市場規模及び競合
足元、英語ビジネスのニーズは拡大傾向にある。2014年度の語学ビジネス総市場規模(矢野経済研究所「語学ビジネス徹底調査レポート2015」)は8,131億円(前年度比100.5%)。同社のビジネスと関連が強い分野は、成人向け外国語教室市場2,080億円(同100.1%)、eラーニング市場75億円(同115.4%)、語学独習用機器・ソフト市場206億円(同98.1%)、書籍教材市場387億円(同100.3%)となっており、企業研修や個人のビジネス英語習得ニーズが根強く、外国語教室やeラーニングが好調である。同社との関連が強くない幼児・子供向け外国語教室市場(990億円、同104.0%)やプリスクール市場(310億円、同104.0%)などの子供向けビジネスも活況となっている。
オンライン英会話事業に限定すると、eラーニング市場は急成長を遂げているものの、市場規模はわずか65億円に過ぎず、様々な企業が参入しており、その数は170以上と競争は日増しに激化している。こうした状況下で、同社は強みを十二分に発揮し業界最大手のポジションを不動にしている。eラーニング市場での競合先はDMM英会話((株)DMM.com)や産経オンライン英会話(産経ヒューマンラーンング(株))などが挙げられる。ただ、同社ではオフラインである外国語教室市場の取り崩しを狙っており、その観点からはベルリッツ(ベルリッツ・ジャパン(株))やGaba((株)GABA)などの大手英会話スクールとも競合する。
●事業リスク
事業リスクは、同社のビジネスがインターネット接続でビジネスを行っているため、その変化に適時対応できない場合や、そのシステムを通じて個人情報が漏えいする可能性があることなどを挙げることができる。
さらに、フィリピンの経済環境の影響を受けるほか、急激な為替変動(円安)が起こった場合に対応ができず業績にマイナス影響が発生する可能性がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 森本 展正)
《HN》
提供:フィスコ