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【市況】【井上哲男のストラテジー・アイ】


「上昇トレンド入りの時期を予想」

 今週火曜日(3日)に日経平均は再度昨年の終値を割り込んで引けた。同時点での昨年末終値からの騰落率は、日経平均が▲0.7%、米国株全体の動きを表すS&P500が▲1.8%、WTI原油先物が▲6.9%とマイナスとなっている一方で、欧州株全体の値動きを表すストックス600は+7.2%、NYMEXの金先物は+7.8%とそれまでの相対的な弱さを取り戻す強い動きとなっている。

 ひとことで言えば、原油以外は昨年秋以降のリターン・リバーサル相場が行われたということである。

●「“不健全な相場”」

 年初来の騰落率は、前述のように日米ともに小幅なマイナスではあるが、変動率(ボラティリティ)の高さに戸惑っている投資家も多いと思う。この時点までで、ダウの終値が前営業日比終値から1%以上も上下したのは21営業日中11回を数える。つまり、半分以上である。昨年、同じく1%以上上下したのは252営業日中36回で、率にすると14.3%、約7日に1日の割合である。

 この数字を見ても、如何に今年になってからボラティリティが高いかが分かる。そして、日本株も同様の展開が続いている。

 しかし、このボラティリティが「需給要因上の“何か重さや軽さを示すもの”」によってもたらされているのかと言えば、それは違う。

 私が継続的に計測している数字に、相場に大きな影響を与えることから度々紹介してきた、外資系5社(クレディ・スイス、ニューエッジ、ゴールドマンサックス、モルガン・スタンレー、JPモルガン)の先物残高(金額換算ベース)がある。

 これをみると、昨年秋の日銀の再緩和発表後の11月28日に丁度3兆円の買い超と過去最高を記録した後に、12月5日の日経平均1万7920円を境に転売姿勢を強め、年末の買い超金額は1兆円程度にまで圧縮された。

 今年に入り、1月16日(日経平均:1万6864円)時点では買い超金額が5000億円割れと、アベノミクス相場が始まって以来の最低水準にほぼ並んだが、その後は緩やかに買い進み、先週末1月30日時点では9000億円程度の買い超とほぼ昨年末の水準に戻っている。

 今年に入ってから特に上昇・下落というトレンドを意識した動きは見られない。そして、そのことは、裁定取引についても同じである。

 証券の先物や裁定取引が方向性を示さない中、日計りディーラーが原油価格動向などを手掛かりに仕掛け的な動きを見せると、小さな金額なのに指数の値動きを高めてしまう相場が日米ともに続いている。あまり“健全”とは言えない相場だ。

●債務上限凍結解除後に買い出動

 このような時は、全日参加するのではなく、日米ともに25日移動平均乖離のプラス/マイナス3%に近づいてから参加するなど、テクニカルのルールを自分で定めることが大切だ。そして、この相場はまだ続くと思われる。

 昨年最後の寄稿で「国債買い入れを含めて3月までは最低でも続くであろうECBの量的緩和はプラス、3月に期限を迎える米国の債務上限問題はマイナス」と述べたが、その債務上限凍結解除は3月16日であり、寸前になって議会VS大統領の大きな混乱が市場を揺るがすことは可能性として捨て切れない。

 また、以前に中期的な米国株式の方向性を示唆するとして紹介した、ダウの「(25日移動平均値-50日移動平均値)/ダウ現値」も下方トレンド入りをしたことから一気に上昇トレンドを描く相場は想定しづらい。

 この“日柄”が底入れ・反転に向かうのは、現在のところ4月7日。つまり、債務上限凍結解除時からこの間の押し目を拾うことが次の上昇トレンドを取ることにつながると考えている。

2015年2月3日 記

スプリングキャピタル株式会社 代表
井上哲男

(「チャートブック週足集」No.2011より転載)

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