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【市況】【冨田康夫のマーケット・トレンド】


「シルバービジネスこそ次世代の輸出産業に」

日刊株式経済新聞 編集長
冨田康夫

●2015年の株式相場見通しは?

 師走の総選挙、原油価格の急落と、暮れも押し詰まってから波乱展開となっている2014年相場もあと1週間余りとなった。

 私が編集長を務める「日刊株式経済新聞」では、毎年年末に証券市場関係者を対象に「来年の相場見通しアンケート調査」を実施している。その詳細は来年1月5日付の「日刊株式経済新聞」に掲載予定だが、現在までに集計した中から先取りしていくつか紹介してみたい。

 2015年の日経平均株価の「年間高値・安値予想」では、高値2万2000円、安値1万6000円といった見方が多いようだ。ちなみに昨年末に実施した2014年の相場見通しでは、高値予想1万8000円、安値予想1万4000円が最も多かった。こうした予想は外れるケースも多いが、2014年に関して予想はほぼ的中したといえる。

 もうひとつ、「2015年に注目する相場テーマ」を問う質問に対しては、(1)燃料電池・水素、(2)ロボット、(3)再生医療、(4)ウエアラブル端末、(5)インバウンド(訪日外国人)需要、(6)円安メリット――などが人気を集めている。

●アジアは日本超えるスピードで

 円安メリットと言えば、師走に入って以降、数時間のうちに対ドルで1円幅以上も円相場が変動する波乱展開となっているが、大勢的には円安・ドル高方向に進行していることは確かだ。

 円安で恩恵を受ける業種と言えば、代表格の自動車をはじめ、電機、精密機器、機械といったところがすぐに頭に浮かぶ。ただ、こうした業種は、韓国、台湾、中国などの台頭で日本の地位が、脅かされていることも否定できない。

 そこで、今後中長期的に成長が見込める次世代の輸出業種としてシルバー産業を紹介してみたい。日本では、団塊世代の70歳代入り、団塊ジュニア世代の50歳代接近により、高齢化が一段と加速し、これから9年後の2023年には、「全人口の過半数が50歳以上になる」と予想されている。

 また、経済成長著しいアジア地域では、日本に比べてさらに急ピッチで高齢化が進展する可能性が高い。中国・国家統計局によると、2013年の中国の60歳以上の高齢者人口は、2億243万人(総人口比率14.9%)に達している。これが2050年には4億人を突破するものと試算されている。

 日本などの先進国とやや異なるのは、国民全体が豊かになる前に高齢化社会に突入していること。一人っ子政策の影響が顕著に出る今後は、高齢者の比率が急速に高まり、高齢者向けの産業が拡大する可能性が高い。

 さらに、高齢化が世界で最も早いスピードで進むといわれているのが韓国。韓国の高齢化率(65歳以上の人口比率)は2011年に11.1%だったものが、2020年には15.7%、2030年には23.3%と、高齢化が進む見通しだ。このほか、台湾やタイなどのアジア諸国もほぼ同様の課題を抱えている。

●「大高齢化社会」でビジネスチャンス

 こうしたアジアを中心とした「大高齢化社会」の到来をビジネスチャンスと捉えて、成長確実な輸出産業として日本企業の海外展開が本格化している。

 例えば、ユニチャーム <8113> は、30年以上も前からアジアを中心に海外展開を積極化させ実績を積み上げ、既に海外売上高比率は60%を超えている。アジアの高齢化加速に伴って、今後は大人用紙おむつ需要の大幅拡大が見込まれる。

 ニチイ学館 <9792> の100%子会社ニチイケアネットは、豊田通商 <8015> と資本提携するなどして、中国での介護事業を積極化しており、福祉分野で基盤を作った後に介護全般に展開、介護人材育成も目指す。

 ロングライフ <4355> [JQ]は、新華錦グループと合弁会社を設立し、中国・青島をはじめとして高級老人ホームを積極展開している。

2014年12月18日 記

情報提供:日刊株式経済新聞

(「株探」編集部)

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